架空の『ポケモン』を機械学習で生み出す技術者現る。ポケモンっぽいけど違う192匹
データサイエンティストのMax Woolf氏は12月15日、AI生成による多数の「架空のポケモン」画像をSNS上で公開した。細部におかしさは見えるものの、意外にも『ポケットモンスター』シリーズのスタイルを捉えた仕上がりとなっている。
今回公開されたのは、192匹にもおよぶ実在しないポケモンの画像だ。すべて、『ポケットモンスター』公式の画像を学習したAIによって生成されている。自動生成だけに、じっくりと眺めると目の位置がおかしかったり、どういう生物なのか検討もつかない謎の存在も散見される。また、どちらかといえば小物やアイテムに見えてしまう画像も。しかし、いずれの画像も同作のアートスタイルをよく捉えている印象で、違和感のないポケモンも生み出されている。緑色のポケモンには植物を感じさせるデザインが施されていたりと芸が細かい。ついつい個々のポケモンのタイプを推察してしまうようなデザインになっている。
今回の画像を制作したのは、Max Woolf氏。一般誌BuzzFeedにてデータサイエンティストを務めている人物だ。Woolf氏は制作プロセスについて「ポケモンの画像を眺めてから自分で作ってみて、とAIに命令したらこうなった」とコメント。冗談のように乱暴な説明ながら「冗談じゃなくて、本当にそうやって作った」と伝えている。つまり、準備や内部演算の複雑さなどは別にして、データを与えて命令するだけの簡単なプロセスで制作されたということだろう。
Woolf氏によれば、今回の架空ポケモン生成に用いられたのは「DALL·E」のロシア語対応版「ruDALL-E」だという。DALL·Eは、OpenAIが開発・公開したテキストから画像を自動生成するAIプログラムだ。このプログラムは、例として「チュチュを履いた大根が犬を散歩しているところ」などの突飛なリクエストにも対応し、参照元にあわせた画像を生成してくれる。また、実在しないものや「場所」「時間」「視覚的スタイル」などの概念さえも“理解”して画像に反映するのだ。また、今回生成に利用したruDALL-Eには、適切なチューニングが施されているという。
今回生成されたポケモンたちは、いずれも一貫した“ポケモンっぽい”アートスタイルで描かれている。そもそもAIに与えられたのがポケモンの画像データセットであるため、精度が高まった可能性はあるだろう。しかし、ポケモンのタイプも踏まえたかのような生成結果には、AIが「ポケモンっぽさを理解している」傾向さえ感じる。Woolf氏がもしも「くさタイプのポケモンを作って」「伝説のポケモンを作って」などと命令したら何が起こるのか、非常に興味深いところだ。
今回のWoolf氏による実験では、AIがゲーム作品のアートの雰囲気さえ再現できる可能性が示された。近い将来、こうした“AIアーティスト”が活躍するゲームが登場するのだろうか。
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