米国児童に大人気の『Roblox』が「子供を搾取している」と告発される。子供たちには早すぎる資本主義的システム

People Make Gamesは12月13日、人気ゲームプラットフォーム『Roblox』について「運営元が子供を搾取し、危険に晒している」と訴えるYouTube動画を公開した。同動画は各海外メディアで報じられたほか、海外のゲームコミュニティにも波及している。

ゲームジャーナリスト集団のPeople Make Gamesは12月13日、人気ゲームプラットフォーム『Roblox』について「運営元が子供を搾取し、危険に晒している」と訴えるYouTube動画を公開した。同動画は各海外メディアで報じられたほか、海外のゲームコミュニティにも波及している。


『Roblox』は2006年にリリースされたゲーミングプラットフォームだ。本プラットフォームは、ユーザー制作ゲームをサービスの軸としている。ユーザーは『Roblox』のなかでゲームやキャラクタースキンを作り、ほかのユーザーと共有できるのだ。ユーザーたちは、おもちゃ風のキャラクターを好みにカスタマイズ。多彩なジャンルのゲームを遊んだり、ほかプレイヤーと交流を深めることができる。また、有償ゲーム内通貨Robuxを通じての少額課金やアイテム売買もサポート。ユーザーがコンテンツを作るだけでなく、開発者としてリアルマネーでの報酬を得られる仕組みを築いている。

本作は特に英語圏において、若年層を中心に近年著しく利用者数を伸ばしている。本作開発・運営元Roblox Corporationの資料によれば、2021年Q3期間の日間アクティブユーザー数は、実に平均4700万人を誇る。しかも、そのうち約半数の2310万人が13歳以下の子供たちだ。また、2021年Q3期間の売上高は5億ドル(約578億円)を突破。『Roblox』は英語圏において、子供たちの“遊び場”として確固たる地位と市場を築いているのだ。


破竹の勢いを見せる『Roblox』は、多くの懸念も抱えている。同作内での、子供を狙う性犯罪者の出没などが報じられるケースもあり、米国では警察が注意を促すほどだ。しかし、こうした問題は『Roblox』に限らず、未成年者の多いSNSなどに共通する。今回ジャーナリスト集団のPeople Make Games(以下、PMG)がYouTube動画にて伝えたのは、「『Roblox』そのものが、子供を保護せず食い物にしている」とする指摘だ。

PMGは今年8月19日にも『Roblox』を糾弾する動画をYouTubeにて公開している。こちらでは、『Roblox』が「大金(Serious Cash)が手に入る」と宣伝しながらも、巧妙にゲーム内クリエイターを“タダ働き”させる仕組みを築いていると指摘。11歳の『Roblox』ゲーム開発者などのインタビューを織り交ぜ、子供含むクリエイターの努力を、売上のために搾取していると主張した。

そして12月13日に続報として公開されたのが、今回の動画だ。同動画でPMGは『Roblox』のスキン販売システムやプラットフォーム内のゲームデベロッパーにまつわる問題を指摘。『Roblox』は子供に有害なプラットフォームであると主張している。同動画は記事執筆時点で再生数25万回を突破し、Kotakuなどの海外メディアにも報じられた。また、海外掲示板Redditなどコミュニティにも波及し、『Roblox』へ批難の声があがっている。動画で指摘されている問題点を以下に紹介する。

まずPMGが指摘したのは、『Roblox』における子供含むクリエイター/ユーザーの保護が不十分と見られる点だ。本作では前述のとおり、プラットフォーム内でゲームを制作し、有償ゲーム内通貨Robuxを通じて開発者が売上を得ることができる。そのため、『Roblox』内で大規模なゲームデベロッパーが組織される場合も多い。多人数が集まってゲーム開発で収益を上げるのは立派な事業だ。しかしその一方で、『Roblox』内デベロッパーは企業でもなんでもない。PMGは、そうした集団には法的な縛りもないため、“従業員”への不当な扱いも野放しだと伝えている。また、社会常識や倫理観が未発達な子供が“雇用者”になりえる点も問題だろう。

PGMは、『Roblox』コミュニティが外部プラットフォームに依存している点も問題視している。動画では、『Roblox』の人気二次創作ゲーム『Sonic Simulator』クリエイターが、当時12歳の少女に性的メッセージや「実際に会おう」との誘いを送信した事件を紹介。被害者本人のインタビューを交えて事件の顛末を語っている。PGMによれば、該当のクリエイターは現在も『Sonic Simulator』の開発に携わっており、同作は依然として公開中だ。また、PGMは『Roblox』が2017年に公式フォーラムを閉鎖した点を指摘。「『Roblox』運営元は、コミュニティを外部に締め出すことによって、意図的に閉じた場所にしている。同作についての問題を“知らぬ存ぜぬ”で済ませようとしている」と主張している。


そして、キャラクター(アバター)スキンのマーケットにも懸念がある。『Roblox』では、有償ゲーム内通貨「Robux」をサポートしている。最小購入単位は400Robuxで、価格は約567円(4.99)米ドル。定額購入による割引などもあるものの、1Robuxあたり約1.4円ほど。そして、本作のアバターショップでは、限定スキンの極めて高額な売買もおこなわれている。例として、公式スキン「レッドタンゴ」は2009年『Roblox』公式により100個限定で販売された。こちらは今年8月9日、所有者により275万Robuxで転売された記録がある。すなわち、385万円相当である。なお、販売当時の価格は500Robuxであり、異常なほど付加価値がついている。ほかにも、値動きやユーザー間取引の激しいスキンは複数存在するようだ。

アバターショップでは、ユーザー同士での取引履歴があるスキンについては、値動きがチャートで表示されている。つまり、スキンを一種の資産としたマネーゲームを促進するようなシステムなのだ。。PGMはこうした仕組みについて「株による投機のようなギャンブルを、金銭感覚の未発達な子供に提供している」と指摘。さらには、『Roblox』ブラックマーケットの氾濫を例にあげ、安全性の不明なサードパーティーサイトに子供が踏み込む危険性を伝えた。また、『Roblox』がユーザー間のあらゆるRobux取引から手数料を引いていることや、Robuxを現金化する際のレートの低さも問題点として挙げている。


今回のPGMによる動画では、ほかにも多数の問題点が指摘されている。一貫しているのは「『Roblox』は子供を守らず、そればかりか搾取している」との主張。少なくとも現状では、『Roblox』は保護者として安心できる“遊び場”とは言い難いようだ。右肩上がりの成長を続け、日本国内展開もする同プラットフォームは、懸念を解消する答えを出せるのだろうか。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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