「日本メタバース協会」が設立されるも、ユーザーからの反感集まる。暗号資産業者が音頭とる構図に疑問の声

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暗号資産交換事業者のFXcoin株式会社・株式会社Ginco・CoinBest株式会社・インテリジェンスユニット合同会社の4社は12月7日、一般社団法人日本メタバース協会を設立した。代表理事は、FXcoinの大西知生氏が務める。同協会は、メタバース技術および関連サービスの普及、メタバース技術に関する健全なビジネス環境などの整備を進めていくという。 

メタバースとは、オンライン上に構築される仮想空間のことだ。ユーザーは自分の分身であるアバターを通してアクセスし、ほかの人々と交流することが可能。さらに人や企業によって経済活動がおこなわれ、仮想空間上で土地の売買や貸し借りが発生したり、ライブやオークションなどのイベントが開催されたりすることもある。古くは2000年代にブームとなった『セカンドライフ』がよく知られる。また近年ではVR/AR技術と結びつくことで注目度が上がり、「VRChat」などがメタバースの例としてよく知られる。 

日本メタバース協会は、「メタバースについておおまかなイメージがつく人は多いものの、メタバースで何ができるかを理解している人は少ない」ことを問題視。メタバース技術および関連サービスの普及に向けて動いていきたい意思を表明している。 
 

Image Credit : fabio

 
ところが、日本メタバース協会は一部のユーザーから反発を集めているようだ。その理由の一つは、設立理念に記載されている文言にある。日本メタバース協会は、国内でのメタバースへの理解度が低い原因の一つとして、「メタバースを支えるブロックチェーンやNFT(Non Fungible Token)の技術を理解している人が少ない」ことを挙げている。 

ブロックチェーンとは、仮想通貨に価値を付与するために使われている仕組みのことだ。本来ただのデータに過ぎない仮想通貨に、どうやって物理的な貨幣のように価値が与えられているのか。それは、ある仮想通貨に対して、「この人が1ビットコインを受け取った」という取引の履歴を記録。そうした記録をチェーンのようにつなげていくことで、仮想通貨の所有権を破壊・改ざんできないようにしているためである。ただのデータと違って、所有権の移り変わりが正確に記録され、ユーザー間に分散することで台帳の正確性が保証されている。そのため、仮想通貨は価値をもつことができるのだ。 

そしてNFTは、ブロックチェーンの仕組みを仮想通貨だけでなく、画像や3Dデータなどに応用した仕組みである。本来、デジタルなアート作品はいくらでもコピーが可能なため、物理的な絵画や彫刻のように所有権を主張することはできない。しかし、そこでブロックチェーンの仕組みをデジタルアート作品に適用。正当な所有権を主張できるようにすることで、デジタルな芸術作品にも物理的な芸術作品と同じ価値を与えることができるようになるのだ。 
 

Image Credit : Executium

 
ここまでの説明を聞いて、はてと思った方もいるかもしれない。「仮想空間上でアバターを介して交流する」のがメタバース。「デジタルな通貨やデータに価値を付与する」のがブロックチェーンとNFT。そう、どちらも同じデジタル空間上の話ではあるものの、メタバースにブロックチェーンやNFTが必要かというと、微妙なところなのだ。 

もちろんメタバース上でビジネスを展開しようとする場合は、ブロックチェーンやNFTは親和性が高い。とはいえ、メタバースで売買をする場合に暗号資産が必須かといえばそういうわけでもなく、BOOTHなどを通じ、現実の通貨をもってVRアバターのアクセサリーが取引される光景もよく見られる。くわえて仮想空間上のコミュニケーションを楽しみたいだけの場合には、まして暗号資産などの技術は必要とは言いがたいのである。
  

 

 
日本メタバース協会を立ち上げたのは、暗号資産交換事業者4社だ。よって、メタバースをビジネスの機会として捉えるのは自然な姿勢といえるだろう。一方、メタバースの側面はそれだけではない。「仮想空間で交流できる」という側面に注目し、草の根的に活動してきた層も少なからず存在するのだ。そのため今回、暗号資産交換事業者が参入し「日本メタバース協会」を立ち上げた動きに対しては、「利益追求の側面しか見ていない企業が、新技術を牛耳ろうとしている」と感じるユーザーが少なくないようだ。とりわけ「VRChat」を中心とするユーザー層は、企業主導ではなくユーザーベースでコンテンツを発展させてきた土壌があるだけに、今回の動きには強い反発が生じている。  

ユーザーのなかには、すでに対抗して「新日本メタバース協会」「全日本メタバース協会」設立を唱える声も存在。プロレス然とした混沌の様相が生まれようとしている。はたして、日本のメタバースは誰が先導していくのか。日本メタバース協会が唱える「メタバース先進国」は実現するのか。今後の先行きは不透明だ。




※ The English version of this article is available here

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