『ポケモンGO』のNianticが開発者向けプラットフォーム「Lightship」をリリース。開発キットでARアプリ発展を促進
Nianticは10月8日、開発者向けプラットフォーム「Lightship」をリリースした。あわせて、ARアプリ開発キット「Niantic Lightship AR Developer Kit(以下、ARDK)」も提供開始している。ARDKは今年5月よりベータ版を提供しており、今回正式リリースとなった。
Nianticは米国を拠点とするデベロッパーだ。『Ingress』や『ポケモンGO』など、人気位置情報ゲームを手がけた実績をもつ。今年11月1日には、任天堂と協同開発した『ピクミン ブルーム』をリリース。また、テクノロジー企業Qualcomm Technologiesと協同でARデバイスの開発にも携わっている。現実とバーチャルの世界を融合させる「Augmented Reality(拡張現実、AR)」の先駆者といえる企業だ。
ARは、平たくいえば現実世界にデジタル情報を付与する技術。『ポケモンGO』で現実の地図上にゲーム内拠点が出現したり、カメラを通じてポケモンが見えたりするのもAR技術の一種だ。ARの実現には、周辺の地形や環境をデバイスに認識させる技術が必要となる。そうした技術の実装を助けるのが、今回リリースされたLightshipおよびARDKだ。
ARDKの具体的な機能として、Nianticは「Mapping (リアルタイムでの現実世界の再現)、Understanding (環境の理解)、Sharing (体験の共有)」を挙げている。まず、Mappingはモバイル端末のカメラセンサーを利用し、現実を端末内にバーチャルに再現する機能。現実の風景をリアルタイムにゲーム内マップとして取り込むイメージだ。同社が公開したテクニカルデモでは、端末の中で投げたボールが現実の障害物に“衝突”する様子が見られる。
続いて、Understandingは周辺環境を分析する機能。現実に存在する地面や空、水場、そして建物などの人工物も自動的に判別してくれる。応用としては、「水場から出てこないモンスター」などの実装が想定できる。そして、 SharingはマルチプレイのAR体験を提供する機能。最大5人までのプレイヤーをサポートしている。同機能を使えば、複数のプレイヤーがバーチャルな対象に作用できる。たとえば、現実世界に重なった仮想モンスターと、複数人で戦う体験が実現できるわけだ。
Nianticは今回公開したARDKを第一弾としている。今後、Lightshipプラットフォームのもとに、さらなる機能の提供がおこなわれる見込みだ。また、同社は集英社やソフトバンク、Universal Picturesなどの企業とのパートナーシップも発表している。「ワンピース」など集英社の漫画キャラクターが登場するARアプリが、ARDKを利用して開発中とのことだ。開発元はご当地ARゲーム『進撃の巨人 in HITA』を手がけたT&Sで、リリースは2022年予定。ARDKの有用性を見せてくれることだろう。
Nianticは「現実世界のメタバース」なるキーワードを掲げている。現実全体をARで拡張するイメージを言葉にしたのだろう。今回のLightshipリリースにより、ARアプリの開発は今後さらに促進されそうだ。現実とリンクした新しいゲーム体験の出現に期待がかかる。