Apple、iOSアプリ開発者の外部決済誘導の制限を緩和。ユーザーへの外部決済の案内に、アプリ内で得た情報の使用を認める

 

Appleは10月22日、「App Store Reviewガイドライン」が更新されたと、App Storeを利用するアプリ開発者向けに案内した。更新内容は3点あり、そのうちのひとつで、App内課金以外の利用についての規定を変更している。


Appleは、iPhoneやMacなどのApp Storeで配信される特定の種類のアプリについて、ユーザーはアプリ内課金以外の購入方法を利用可能だとしており、アプリ開発者向けガイドラインでは、開発者がどのようにしてユーザーにアプリ外での決済手段の存在を案内できるかを規定している。今回更新されたのは、App Storeでの収益化に関する項目の中の「その他の購入方法」について。具体的には、以下の太字部分が削除された。

3.1.3 その他の購入方法:次に挙げるAppでは、App内課金以外の購入方法を利用することができます。ただし、このセクションで挙げるAppでは、App内課金以外の購入方法の利用をApp内でユーザーに促すことは許可されません。またデベロッパは、Appを通じて入手した情報を使用して、App内課金以外の購入方法を利用するようAppの外部で個々のユーザーに呼びかけることはできません(App内でアカウントに登録した個人に、ほかの購入方法について知らせるEメールを送信するなど)。ただし、Appとは無関係の手段で、デベロッパがユーザーベースに対してApp内課金以外の購入方法に関するコミュニケーションを送信することは許可されます。

つまり、アプリ内でのユーザー登録などを通じて得たメールアドレスなどの情報をもとに、ユーザーに対してアプリ外決済を促すことが可能になったということだ。後段部分にあるように、これまでもアプリ外決済についてユーザーに案内すること自体は認められていたが、アプリ以外の場にて開発者独自にユーザーの連絡先を得る必要があった。今回のガイドライン更新によって、開発者・ユーザー双方にとって、アプリ外決済をより利用しやすくなったといえそうだ。


今回のガイドライン更新は、米国での集団訴訟を受けておこなわれたものとみられる。その集団訴訟は、米国在住のアプリ開発者が、App Storeに限定されたアプリ配布や最大30%の手数料について反競争的であると、2019年6月に提起。Appleは原告と和解し、裁判所の承認が得られ次第、上述したようなかたちにガイドラインを更新すると、今年8月に発表していた(関連記事)。米国内での訴訟への対応ではあったが、日本向けのガイドラインも同時に更新されることとなった。

もっとも、アプリ内に外部の決済手段を実装することは依然として認められておらず、ここはApple独自の決済手段に限定されたままである。ユーザーが外部決済を利用した場合はAppleに手数料が一切入らないため、同社としてはそう簡単に認めるわけにはいかないのだろう。

なおこのアプリ外の決済をめぐって、Epic Gamesがモバイル版『フォートナイト』を巡ってAppleと係争中。一審判決では、Appleとの契約違反について損害賠償金を支払うようEpic Gamesに命じる一方で、Appleに対しては開発者による外部決済手段への誘導について、より踏み込んだかたちで譲歩を迫った。一審判決について、Epic Gamesは賠償金を支払った上で控訴。Appleは、裁判所命令の発効の保留を求めており、判決が確定するまではまだまだ時間がかかりそうな様相となっている(関連記事)。