先日Steamおよびitch.ioにてリリースされた『ElecHead』が、注目を集めているようだ。『ElecHead』は、個人開発者の生高橋氏が開発したパズルアクションゲーム。丁寧かつ洗練されたゲームデザインに、数々の著名人が賛辞を贈っている。
『ElecHead』は、流れる電気を活かしてギミックを解く、2Dパズルアクションゲームである。本作の舞台は、街から電気が消え闇に覆われた世界。プレイヤーは漏電中のロボットElecとして、謎めいた施設内を進み世界に光を取り戻すことを目指す。
Elecは漏電しているため、常に体から電気が流れている。それゆえに、立っている足場や触れている壁など、Elecが接触している場所へ自動的に電流が走るわけだ。施設内には、電気によって作動するさまざまな装置が存在。プレイヤーは、Elecを地面や壁に接触させることで足場を出現させたり、台座を動かしたりなど、電気を利用し施設を進んでいく。またElecの頭は着脱式になっており、頭部を投げて離れたところへ電気を流すギミックも用意されている。自動的に電気が流れてしまうロボットと、電気によって動作する装置を活用した、解き応えのあるステージが展開されていくのだ。
『ElecHead』は、Steamにて115件のレビューが寄せられ、さっそく「非常に好評」の評価を獲得している。というのも、本作は非常に丁寧に作られているのだ。本作のパズルは、絶妙な難易度に設定されており、難しいながらも頭をひねることで解ける謎が多い。電流や頭の投擲、ステージ間でのつながりなど、さまざまなアイデアでの謎解きが楽しめる。またプレイ中の心地よさも本作の評価点だろう。Elecはクセなく素直に動くほか、着地時に響く効果音も気持ちよい。背景で流れるアンビエントな音楽も含めて、本作の独特の心地よさが謎解きの試行時間をリラックスさせてくれる。なお本作のBGMとSEは、インディーゲーム作曲家つよみー氏が手がけたそうだ。
リリース直後から高い評価を獲得している本作は、著名人からの称賛も目立つ。『Spelunky』シリーズを手がけるDerek Yu氏は、多くのアハ体験が楽しめる独自のメカニックをもつ傑作パズルであると太鼓判。『Celeste』開発者のMaddy Thorson氏も、高難度の部屋のスクリーンショットを投稿し、楽しいパズルプラットフォーマーであると褒めている。またかねてから同作に注目していた『Downwell』開発者のもっぴん氏も称賛。SIEの吉田修平氏も、本作は今年のベストゲームのひとつで、また記憶をリセットしてやり直したいと大絶賛した。
ヨコオタロウ氏も、『ElecHead』を同氏らしい言葉で褒めている。さらには、Terry Cavanagh氏も、デザインや楽しさをあげつつ本作をオススメしている。生高橋氏はかねてから本作がCavanagh氏の『VVVVVV』から影響を受けていると語っており、リスペクト元のクリエイターから称賛されたことについて、喜びを表した。このように、アクションゲームや謎解きゲームを手がける著名人から極めて高い評価を獲得している。
ドット絵の表現やアイデアの多彩さ、そしてストレスを生まない配慮など、さまざまなこだわりをもってもたらされた完成度を、著名人は絶賛しているわけだ。生高橋氏は、パズルアクションゲーム『Battlloon』にも携わった開発者で、『食い太陽』など小粒ながら遊びがいのある作品を手がけてきたクリエイター。本作は、昨年のTGSで開催された「センス・オブ・ワンダー ナイト」でBest Game Design Awardを獲得。プロトタイプ版が「日本ゲーム大賞 2016 アマチュア部門」の優秀賞を獲得しているなど、リリース前からギミックやコンセプトがすでに評価されてきた。その高い前評判を上回るほどの称賛が寄せられている。
生高橋氏は高評価に喜びながらも、さまざまな人の協力や助言に感謝を述べている。同作のテストプレイにはクリエイターのニカイドウレンジ氏など、さまざまな人物が関わっていたようだ。本作の絶妙な難易度設定と快適さには、そうしたテストプレイによるフィードバックの貢献が感じられるかもしれない。本作はクリアまでは2~3時間程度とされているが、クリア後を含めたやりこみ要素も奥深い。価格も980円と安価なので、まずプレイしてみるといいだろう。
※ 生高橋氏が自身のルーツや本作の開発経緯を語るasobuによるインタビュー
『ElecHead』は、PC(Steam/itch.io)向けに配信中。生高橋氏は、本作のNintendo Switchへの移植や続編開発の示唆をしているものの、それらはまだ正式な表明ではない。今は同作を遊びながら、今後の展開発表を楽しみにしておこう。
【UPDATE 2021/10/21 19:57】Cavanagh氏の名称を修正。
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