人気海外ゲームフォーラムResetEraが約5億円で買収される。背景には「ひとりオーナー」の苦悩


スウェーデンの事業者M.O.B.A. Networkは10月14日、海外ゲームフォーラムResetEraを455万米ドル(約5億1500万円)で買収したと発表した。海外でも有数の規模を誇るコミュニティの売却の陰には、ただひとりのオーナーが背負った重責と苦悩があった。

ResetEraは2017年に設立された海外ゲーム関連フォーラム。同サイトは、独立したフォーラムサイトとしては英語圏で有数の規模を誇っている。Insomniac GamesなどデベロッパーへのQ&Aセッションを開催した実績をもつほか、雑談フォーラムなども提供している。記事執筆現在で登録メンバーは5万4000人を突破し、月に約6000万のページビューを集める人気サイトだ。

そして、ResetEraを買収したM.O.B.A. Networkはスウェーデンを拠点とするサイト運営事業者。同社はその名のとおり、MOBA系ゲームにまつわるサイト運営を事業の中心としている。例として、『League of Legends』のビルド・戦略共有サイトMOBAFireや、同様の機能をもつ『Dota 2』向けサイトDOTAFireなど、多数のコミュニティ主導サイトを運営している。


今回買収されたResetEraの背景について詳しく説明したい。同サイトはもともと、別の大規模海外掲示板NeoGAFから“離反”した運営メンバーおよびユーザーにより設立された。ResetEra創設の発端となったのは、NeoGAF創設者であるTyler “Evilore” Malka氏がセクシャルハラスメント加害者として告発された問題だ。詳細は割愛するものの、一連の騒動を受けて当時の運営メンバーの約半数がNeoGAFから離脱。離れたメンバーたちによって新しいコミュニティとして立ち上げられたのがResetEraなのだ。当時の同サイト創設メンバーには、Nibel氏やZhugeEX氏など英語圏ゲームコミュニティにおける著名人や、現在ResetEraのオーナーを務めるCerium氏などが名を連ねている。


Cerium氏は10月14日、今回の売却の背景と今後についてResetEraに投稿した。今回の売却の主な理由は、同氏の負担が大きすぎた点にあるようだ。前述の通り、Cerium氏は現在唯一のResetEraオーナーだ。創設当時は複数名でオーナーシップを分割していたものの、メンバーが管理者を辞していくとともに権利はCerium氏に集中してしまった。同氏も2年前に同サイトのゼネラルマネージャー役職を離れ、可能なかぎりスタッフにResetEraの運営を委ねる方針を模索していた。しかし、“最後のオーナー”としてサイト運営への支援を続けざるを得ない状況が続いていたそうだ。

また同氏は、唯一のResetEraオーナーであるというプレッシャーや健康上の問題から、オーナーとしての責任を担い続けることは難しいと感じていたそうだ。そうした経緯もあり、信頼できる買い手であるM.O.B.A. NetworkにResetEraを売り渡す決断に至ったとのこと。同氏はM.O.B.A. Networkについて、これまでもサイトを買収しながらも運営方針に干渉することなく成功に導いていると高く評価。現在のResetEraスタッフは、今後もモデレーションや運営について完全な独立性を保ち続けると述べている。

Cerium氏による投稿には、多数のResetEra利用者による反響が寄せられている。内容としては、概ね今回の買収に受容的な声が中心のようだ。「サイトのためには良い判断だった」と述べるユーザーや、Cerium氏の健康を祈るコメントが投稿されている。一方で、企業による買収について懸念を示すユーザーも少なくない。「長期目線では良いことにはならないだろう」と予想を述べるや、反意を示してアカウントを削除したと思しきユーザーも存在する。

ユーザー主体のコミュニティが突然企業所有となったことで、ユーザーが不安を感じるのは理解できる反応だ。しかし、今回Cerium氏が述べた、大規模コミュニティオーナーとしての苦悩もまた理解に難くない。今後もResetEraは、コミュニティとして変わらぬ魅力を保っていけるのだろうか。