『Apex Legends』開発者、Facebookのサーバー障害に不満を呈するも「お前が言うな」と総ツッコミ食らう。そして明かされるブーメランの意図
『Apex Legends』開発者によるTwitter上の発言が、ちょっとした話題となっているようだ。そこには、日々サーバートラブルと戦う開発者による苦悩と哀愁が込められていた。
日本時間で10月5日、Facebookにて大規模なサーバーダウンが発生した。同社が所有するMessenger、Instagram、WhatsAppなどのサービスで障害が発生し、アクセスしようとするとサーバーエラーが表示される事態となっていた。また、Facebookアカウントと紐づけて利用するサービスなどもログインできなくなり、『ポケモンGO』などを遊んでいた一部プレイヤーもプレイ不可能な状態に陥っていたようだ。サーバー障害は5日未明から6時間程度継続し、全世界に影響がおよぶ事態となった。
Facebookほどのサービスが6時間も利用困難な状態に陥ったとして、本件には多くのユーザーが言及。当然、同社を批判する意見も噴出した。そして、同じく苦言を呈する人物がRespawn Entertainmentにも存在。それがコミュニティ&コミュニケーションディレクターを務めるRyan K. Rigney氏である。同氏は、自身のTwitterにてFacebookのサーバーダウンに言及。「Facebookがサーバーのティックレートを増やして、ヘルスパッチさえ配信すれば、きっと解決するよね、みんな?」。一見、“単なる”サーバーダウンに容易に対処できないFacebookに対する皮肉にも見える言動である。
この発言に注目するスレッドが、海外掲示板Redditにて注目を集めている。そのスレッドタイトルは、「『Apexコミュニティは暴言ばかりだ、我々はできるだけ努力しているのに』と言っていたRespawn Entertainmentの開発者が、こんなことを言っているぞ」というニュアンスだ。『Apex Legends』においては昨年、開発者がユーザーから攻撃される苦しみを語り、ユーザー全体がコミュニティの攻撃性を反省するといった動きがあった。これを受けて、ユーザーの攻撃性を批判していた開発者がFacebookへの暴言を吐いている点は、たしかに一つのツッコミどころだろう。
しかし、もっともユーザーのツッコミを集めたのは、ほかならぬ『Apex Legends』の開発者が他社のサーバー問題をイジっていることである。同作では9月中旬から、長期間にわたるサーバー障害が発生。ランクマッチに正常に参加できない問題が相次いで報告され、今シーズンのスプリット1が延長される事態となった。また直近の出来事に限らず、新シーズン開幕直後など、『Apex Legends』と「サーバーダウン」は切っても切れない関係にある。
もちろん『Apex Legends』ほどのユーザーベースを抱えるゲームで安定性を維持するのは困難ではあるものの、プレイヤーからはたびたびサーバーの問題を指摘されてきた。その『Apex Legends』の開発者が他社のサーバー批判ともとれる発言をしたことで、多くのユーザーから「お前が言うな」との指摘を受けているのである。
スレッドが大きく注目を集めると、やがてツイートをした張本人であるRigney氏が降臨し反応した。同氏いわく、サーバー問題はプレイヤーにとっても開発者にとっても非常な苦痛の源である。そうしたなか、“ジョーク”をとばすことは苦痛に対処するための一つの方法だと述べている。同氏はユーザーへの愛情を述べつつ、ユーザーの一部がツイートに込められた「意図的な自虐ネタ」に気づいてくれたらと語った。つまり先述の「Facebookイジり」は、『Apex Legends』がサーバートラブルに悩まされていることを自覚したうえで意図的に投げられたブーメランだったのである。
それを踏まえてRigney氏のTwitterでのリプライを確認すると、なかなか切れ味鋭いユーモアがとばされている。あるユーザーから、「現状の全般についてどうお考えですか」と尋ねられると、「お金のある大企業がサーバー問題を抱えている件ですか? こんなの見たことありませんね」と回答。暗に、自社の資金力を踏まえ『Apex Legends』のサーバートラブルが多すぎることを皮肉った。
また別のユーザーは、「当たり前に動くはずのものをちゃんと直すよう、もっとみんなPR担当者に当たり散らすべきだ」とコメント。ユーザーからの苦言を一手に引き受けるRigney氏をイジったリプライが送られた。これに対し、同氏は「暴言の投稿が多いほどエンジニアがやる気を出すなんて、誰しも知っていることですからね」と返信。ときに攻撃的なユーザーの声を背負って開発するチームの悲哀をにじませる返しを見せた。
このほか、eスポーツ団体100 Thievesに所属するストリーマーNiceWiggことJack Martin氏が「めっちゃウケた」と返信している。Rigney氏は「コントローラープレイヤーがFacebookを使えるなんて知りませんでした」と毒舌の反応。これに対してMartin氏は中指を立てる写真を送りつけており、思わずヒヤリとさせられるじゃれ合いが周囲の笑いを誘った。
ちなみにRedditにてユーザーから「どうしてサーバーをアップデートできないんですか?」と問われると、Rigney氏は「最近の問題はサーバーハードウェアではなくソフトウェアに起因している」と回答。アップデートはつねにおこなっているとしつつ、パッチ10.1などで見られたトラブルは、パッチそのものが原因となった予期しない問題であり、ライブサービスゆえに難しい問題であると語った。そのうえで開発チームとしては、経験から学び、改善策を模索したい姿勢を示している。
『Apex Legends』ほどのユーザーベースを抱えるゲームでは、安定した環境を提供し続けることは至難の業だ。利用者も多いだけに、サーバートラブルに寄せられる苦情の嵐も大変な規模である。あえて自社の状況を差し置いて他社をイジったRigney氏の発言には、人気ゲームならではの苦労と哀愁がにじんでいるようだ。『Apex Legends』の安定した環境を望みつつ、ときには背後の開発者の奮闘にも思いを馳せたいものである。