国内個人開発者npckc氏は9月29日、ノベルゲーム『A YEAR OF SPRINGS(ア・イヤー・オブ・スプリングズ)』をPC(Steam)向けに配信開始した。また、東京ゲームショウ2021への本作出展に伴い、同ストアページにて体験版も配信中だ。
『A YEAR OF SPRINGS』は、2018年にitch.ioにて配信されたノベルゲーム『one night, hot springs』と、続く『last day of spring』および『spring leaves no flowers』の3部作を収録した作品だ。記事執筆現在、上記3作はそれぞれitch.ioユーザーレーティングを約300件から800件集めており、いずれも5段階評価で4.8と高い評価を得ている。本作は、これらの作品ひとつにまとめた上で、エピローグの追加やミュージックプレイヤー、CGギャラリーなどの要素を追加したコレクションだ。
『A YEAR OF SPRINGS』の軸をなすのは、3人の女性だ。まず、最初のエピソード『one night, hot springs』にて主人公となるハルは、性自認と異なる男性の肉体に生まれついた女性、すなわちトランスジェンダーだ。ハルはおっとりした箱入り娘の親友マナミと、マナミの友人であるエリカとの交流を通じて、春の思い出を作っていく。プレイヤーは、3名の女性が織りなす物語を、エピソードごとにそれぞれのキャラに視点を移して紐解いていくのだ。
本作には、トランスジェンダーや性的少数者および、その周辺の人々の直面するさまざまな“問題”が盛り込まれている。彼女たちが本作で直面するのは、社会制度との軋轢であったり、あるいはごく個人的・内面的な問題であったりとさまざまだ。本作は各エピソード手軽に遊べるボリュームながら、マルチエンディング形式となっており、悲しい結末に終わることもある。異なる視座を持つ女性たちが、思いやりを交わし時に傷つけ合ってしまう繊細な物語が、可愛く優しいビジュアルとBGMに乗せて語られる。
本作を開発したnpckc氏は、日本を拠点に活躍する個人開発者・翻訳者だ。同氏は、PC(itch.io)およびモバイル向けに、ノベルゲームを中心とした複数作品をリリースしている。また、同氏はウェブメディアKAI-YOUにおけるインタビューにて、本作の開発経緯を伝えている。npckc氏は同記事にて、自身が性自認が男性・女性いずれにもあてはまらないノンバイナリーであり、他者に恋愛感情を抱かないアロマンティック、性的感情を抱かないアセクシュアルであると語った。同氏はいろいろなゲームに携わるうちに、自身のような性的少数者のキャラクターが登場するゲームが少ないと感じていたそうだ。そのため、『A YEAR OF SPRINGS』収録作については、「ないのなら自分で作る」という思いで開発したとのことだ。
『A YEAR OF SPRINGS』はPC(Steam/itch.io)向けに配信中。Steamでの価格は520円で、10月6日までは10%オフの468円で購入可能。また、Steamストアページでは体験版も公開中だ。