『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』始まりの台地からハイラル城にいる敵の“超ロング狙撃”に成功した人現る。なぜ2.6キロ先を狙撃できたのか?

 

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にて、始まりの台地から2.6キロ先にいるハイラル城のガーディアンを狙撃したプレイヤーが現れたようだ。成し遂げたのは、やりこみユーザーのゆきのさん。かつて始まりの台地から魔獣ガノンの狙撃を成功させたプレイヤーだ。今回の挑戦も類似チャレンジにも聞こえるが、その実、さまざまなプレイヤーの知識やゲームの研究により、実現された奇跡だったようだ。

ゆきのさんが成功させたのは、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』での長距離射撃だ。ゲーム序盤の始まりの台地から、最終決戦の場であるハイラル城にいる、飛行型ガーディアンを狙撃するというもの。2.6キロにわたる長距離射撃を成功させたのである。ゆきのさんのリンクが放った矢は星のように瞬きながら遠方へ飛び続け、最後には飛行型ガーディアンに直撃。弱点にヒットしており、ゆきのさんはこれをホールインワンと称している。見事な狙撃だ。

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本作における狙撃チャレンジは熾烈を極めており、かつてはTwitterユーザーゼルダねこ氏が1.4キロ先のガーディアンを狙撃し、直撃の瞬間を撮影することに成功した(関連記事)。ゆきのさんは同チャレンジからも影響を受けて、今回の挑戦に挑んだという。しかしながら、これまでは2.6キロレベルの長距離射撃のミッションは難しかったのである。なぜこの挑戦が成功したのか、そこにはコミュニティの研究の成果があった。ゆきのさんにうかがった話をまじえて、背景を解説したい。

本作はオープンエアーゲームということもあり、遠くの敵にも判定がある。それはこれまでの狙撃の成功例からお察しいただけるだろう。しかしながら、矢の描写距離はそれほど長くない。さらに、実際に直撃したことをはっきり確認するには現場にいる必要がある。つまり、一定以上の距離の遠距離射撃をするには、矢を放った後リンクが“その矢を追いかけなければならない”のである。1.4キロの狙撃を成功した当時のゼルダねこ氏は、矢を追いかけるためにBullet time Bounce (以下、BtB)なるバグを利用した。

BtBの手順はこうだ。リンクを操作しいずれかの敵キャラの頭上から盾サーフィン。空中で弓を構えてスローモーション状態になりつつ、そのまま敵の背中に落ちるというものだ。うまく盾に乗りながら敵に直撃すれば、リンクがものすごい速度で“ぶっ飛んで”いく。このぶっとび技術を使って、ゼルダねこ氏は矢を追いかけ直撃の瞬間を捉えたわけだ。


しかしBtBを用いての矢の追いかけは極めて難しい。そもそも、BtBはハンドリングが困難なバグだからだ。敵がいる環境にて、その敵を適切な角度で踏み、一定以上の速度で飛び続けなければ、矢を追いかけることができない。遠距離の敵に矢を的中させることと、BtBを正確に決めること。難易度の高いふたつの行動を奇跡的に成功させることで、ゼルダねこ氏の1.4キロ狙撃は実現していたのである。しかしながら、新たな技術であるBLSSが編み出されたことによって、遠距離チャレンジ事情にも変化が生まれていた。

BLSSとは、Bow Lift Smuggling Slideと呼ばれるテクニック。弊誌ではぶっ飛び空中浮遊バグとして報じたバグだ(関連記事)。ぴりかんてん氏が発見した、リンクの手に武器を保存するという片手持ちバグ(Bow Lift Smuggling)を、LegendofLinkk氏が応用したテクニック。数ある空中浮遊バグの中でも、場所や敵などの条件が問われない点や浮遊中の方向転換や速度変更が可能な点など、扱いやすいテクニックとして注目を集めている。このBLSSが編み出されたことにより、長距離狙撃シーンにも変化が生まれている。


そう、ゆきのさんはこのBLSSを用いることで、2.6キロの射撃を成功させたのである。BLSSは準備こそ、コツをつかむ必要があるが、飛空後は速度や方向の調整がしやすいこともあり、矢を追いかけることができたという。BLSSはつかむ物によって飛行の特性が変化するが、壺を用いることで、より安定した飛行が可能なのだ。ゆきのさんによると、飛行ガーディアンはロードのタイミングで位置が変わるため、狙っても矢が当たりづらいという。それでも成功させることができたのは、BLSSがあったからであると、語っている。もともと2.6キロもの狙撃は可能であったが、BLSSが出てきたおかげで、矢が追いやすくなり、その難易度が低くなったというわけだ。それでもゆきのさんによれば、今回のチャレンジには5時間もの時間を要したとのこと。


BLSSは、数多くのハイラルの猛者たちの研究によって生み出され、日々応用されているバグテクニック。挙動でいえば、単にリンクが空中浮遊をする現象であるが、その挙動によって長距離狙撃がしやすくなったというのが興味深い。ひとつひとつの細かい現象が、ほかの要素に作用する『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』らしい事例といえそうだ。

なおゆきのさんによると、狙撃の最大射程としては、高さを加味すれば4キロまで可能ではないかと推察している。高速移動をあわせれば、さらに遥か彼方の敵も狙撃できるのかもしれない。発売から4年以上が経ってもなお、新たな発見や研究が進められている『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。プレイヤー達の冷め止まぬ情熱を考えれば、まだまだ驚くべき現象が生まれていきそうである。