『月姫』リメイクは、9月8日のネタバレ自粛期間終了後もプレイ動画/生放送は禁止。ADVはネタが命

『月姫 -A piece of blue glass moon-』において、9月8日以降もプレイ動画/生放送の公開が禁止である旨が、改めて告知された。ノベル/ADVゲームは、ネタが命。

月姫 -A piece of blue glass moon-』において、9月8日以降もプレイ動画/生放送の公開が禁止である旨が、改めて告知された。同作においては、発売から2週間後となる9月8日23時59分までの期間、不特定多数が目にする可能性のあるSNSや動画配信などでのネタバレが禁止となっている。またプレイ動画/生放送についても、シェア/配信可能区間を除く全編に渡って禁止となっているが、ネタバレ解禁後も変わらずプレイ動画/生放送の公開が禁止であると強調されたかたちだ。ガイドラインに反する投稿については、投稿の削除を含む請求がおこなわれる可能性があり、協力が呼びかけられている。


ゲーム実況やプレイ動画は、動画配信サイトの興隆やインターネットの普及に伴い発展してきた、インターネット上の文化の一つである。一口にゲーム実況やプレイ動画といっても、単にプレイしている様子を見せるだけのシンプルなスタイルから、プレイの様子を凝った編集で加工した動画、ゲーム実況者の個性が前面に出たものまで、幅広く存在している。共通しているのは、ゲーム会社やクリエイターの著作物であるゲームの内容が、動画内に含まれている点だ。インターネット上では、2000年代より広くプレイ動画や実況動画が公開されてきた。しかし、その多くは権利者の許可を得ておらず、さまざまな理由から権利者が黙認する形で、文化として発展してきたわけだ。

近年では、グレーゾーンだったプレイ動画や生放送について、明確にガイドラインを提示するケースが増えている。任天堂やカプコン、セガやスクウェア・エニックスなど多数のゲーム関連企業がガイドラインを公開。個別のタイトルについてガイドラインが設けられているケースもあり、グレーゾーンだったゲーム実況が、許可を得ておこなうものへと変化しつつある。

ゲーム業界がガイドラインを提示する裏側には、ゲーム実況者やYouTuberたちのもつ影響力も一因としてあるのだろう。彼らの配信をきっかけに、ゲームタイトルが国内のTwitterトレンドへランクインするケースは多くあり、反響の大きさを物語っている。今日では、ゲーム実況者やVTuberがゲーム会社から案件を請け負うケースも多く、大勢の視聴者に触れてもらうことで一定の宣伝効果が見込まれているのは間違いない。ただし、ゲームのプレイ動画や生放送には、当然ながらゲームのネタバレなどが含まれている。ゲーム実況の効果についても諸説あり、ゲーム業界としてはゲーム実況との向き合い方を模索している段階なのだと推察される。


一方で、『月姫 -A piece of blue glass moon-』も含め、物語がゲームプレイの主軸となるノベル/ADVゲームにおいては少々事情が異なる。プレイ動画/生放送を見ることで、ゲームを実際にプレイする場合に近い体験が得られてしまうためだ。たとえばアクションゲームでは、ゲーム実況者のプレイを事前に見ていても、実際のプレイ時には操作技術や攻略、装備の選択などによって視聴時とは異なる体験が展開される。一方アドベンチャーゲームでは、選択に伴い展開が変化する要素などはあるものの、ストーリーそのものがプレイヤーごとに変わるわけではない。タイトルによってはプレイ動画を見ることで、実際にゲームを購入する必要がなくなってしまいかねない。

ただし、ノベル/ADVジャンルの作品においても、プレイ動画/放送の可否はタイトルや会社によってさまざまだ。スパイク・チュンソフトは、『ダンガンロンパ』シリーズの配信を1章までに限定しているが、『AI:ソムニウム ファイル』と『428 封鎖された渋谷で』については全編プレイ動画の利用を許諾している。『レイジングループ』など、KEMCOから配信されているADVタイトルについては、それぞれ明確に配信可能な範囲が定められている。PC用美少女ノベル作品の移植を中心に扱うプロトタイプは、プレイヤーに対してプレイ動画の投稿および配信について遠慮してもらうようにお願いしている。『Detroit: Become Human』や『逆転裁判』シリーズなど、個別のガイドラインが公開されていない作品も多くある。ノベル/ADVにおいても、権利元の会社やクリエイターによって、プレイ動画/放送に対する向き合い方は異なるのだろう。


『月姫 -A piece of blue glass moon-』については、プレイ動画/生放送について直接言及しているわけではないものの、竹箒日記内にて奈須きのこ氏が関連するコメントを残していた。同氏は「『月姫』はノベルゲームなのでアクションゲームのように、“動かす事が気持ちいい”ものではありません。ネタが命なのです。なので今回、2週間のネタバレ自重期間をお願いした次第です」と語っている。同氏のコメントは、2週間のネタバレ自粛に関するものであるが、プレイ動画/生放送に関する指針とも関連していることだろう。


『月姫 -A piece of blue glass moon-』は、PlayStation 4/Nintendo Switch向けに、通常版が7700円で発売中。9月8日23時59分まではSNSなどでのネタバレが禁止となっているほか、一部を除いたプレイ動画/生放送については以降も禁止されている。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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