『No Man’s Sky』Steamストアレビューが、ついに「やや好評」へと変化。積み上げられた悪評に、開発元が見せた前代未聞の答え

Hello Gamesが手がけた『No Man's Sky』Steamストアのレビューステータスが「やや好評」へと変化した。苦節5年、ついに同作は借金ともいえる悪しき評判を、払拭することとなった。

Hello Gamesが手がけた『No Man’s Sky』Steamストアのレビューステータスが「やや好評」へと変化した。2016年8月のリリースから苦節5年、ついに同作は借金ともいえる悪しき評判を、払拭することとなった。


『No Man’s Sky』は、2016年8月にPC/PlayStation 4向けに発売されたオープンワールド型のアクションゲームだ。のちにXbox One向けにも発売されている。舞台となるのは広大な宇宙となっており、数々の惑星と宇宙がシームレスにつながっている。プレイヤーは謎の声に導かれ、宇宙の中心を目指して数々の惑星を渡っていく。惑星は1800京以上存在しており、それぞれの惑星にはまったく異なる生命体や気候が見られるなど、小規模のスタジオの開発作品とは思えないほどの野心がコンセプトには詰められている。惑星を探索したり、宇宙の住人たちと交流したり、新たな宇宙船を獲得したり、宇宙海賊と戦ったりと、自由に宇宙を冒険可能だ。

しかし、発売当初は、こうしたコンテンツは十分に実装されていなかった。野心的な宣伝文句を前面に押し出しプロモーションをおこなった結果、宣伝内容とコンテンツが見合っておらず批判が殺到。ゲームコンセプトは野心的であったが、自動生成された惑星を渡っていく冒険は極めて単調で、またゲーム内でできることもそう多くなかったため、内容の薄さが批判された。6080円というインディータイトルとしては高価な価格もまた期待を引き上げ、そして落胆を強めた。さらに発売前にほのめかされていたマルチプレイは、発売時には実装されておらず、誇大広告であると、厳しく批判されたのだ。その結果、Steamでは大量の低評価が投下され、発売当時のストアレビューステータスは「不評」だった。

※ のちに批判を集めることになったE3トレイラー


Hello Gamesはこうした評価を受け、無料アップデートを実施していくことを約束。建築要素を導入する「Foundation」、乗り物を導入し建築要素を拡張する「Pathfinder」、ミッションやストーリーを拡大する「Atlas Rises」、マルチプレイ導入を果たす「Next」、水中の世界を拡張する「The Abyss」、惑星に新環境をもたらす「Visions」、マルチプレイを拡大しVRを導入する「Beyond」、コミュニティから寄せられたQoL改善をはかる「Synthesis」、生ける宇宙船などを導入する「Living Ship」、二足メックなど新たな乗り物を導入する「Exo Mech」、フレンド機能を強化しクロスプレイに対応させる「Cross Play」、幽霊船などホラー要素を導入する「Desolation」、惑星生成メカニズムに変化をもたらす「Origins」、次世代機に対応させグラフィックを強化する「Next Generation」、本格的なペット要素を導入する「Companions」、コミュニティでのアクティビティを強化する「Expeditions」、コミュニティでのアクティビティをさらに拡張する「Expedition Two」、ライティングなどを中心にグラフィックをさらに強化する「Prisms」、そして先日発表された入植要素を導入する「Frontiers」。実に19回の大型アップデートを、無料で実施してきたのだ。以下、大型アップデートを改めてリスト化:

・Foundation(Version 1.1) 2016/12
・Pathfinder(Version 1.2) 2017/3
・Atlas Rises(Version 1.3) 2017/8
・Next(Version 1.5) 2018/7
・The Abyss(Version 1.7) 2018/10
・Visions(Version 1.75) 2018/11
・Beyond(Version 2.0) 2019/8
・Synthesis(Version 2.2) 2019/11
・Living Ship(Version 2.3) 2020/2
・Exo Mech(Version 2.4) 2020/4
・Cross Play(Version 2.5) 2020/6
・Desolation(Version 2.6) 2020/7
・Origins(Version 3.0) 2020/9
・Next Generation(Version 3.1) 2020/11
・Companions(Version 3.2) 2021/2
・Expeditions(Version 3.3) 2021/3
・Expedition Two(Version 3.4) 2021/5
・Prisms(Version 3.5) 2021/6
・Frontiers(Version 3.6)2021/9

もちろん、すべてのアップデートが好評だったわけではない。NextやBeyondなど、節目の巨大アップデート時は、実装時にバグが多く、幾度もマイナーアップデート改善が続けられた例もあった。しかしながら、Hello Gamesはコミュニティの声を聞きながら、本作に必要なコンテンツを見極め、着実にゲームをブラッシュアップしていった。建築要素やメインストーリーを拡張し、探索要素を深化。マルチプレイを正式実装したほか、惑星バリエーションを増やしたり、宇宙でのイベントを増やしたり、グラフィックを改善するなど、適切にコンテンツ強化がはかられてきたのだ。

発売時には21万を記録した同時接続ユーザーも、発売3か月で落ち込みを見せていた。しかしアップデートをするたびにユーザーベースは拡大されていき、マルチプレイを導入するNextアップデートでユーザー数は再爆発。今でも5000人から1万人のユーザーがコンスタントにプレイする人気ゲームとなった。


ユーザーからの反応も、そうした動きに呼応するように変化。もともと「不評」だったSteamストアのレビューステータスは、発売から1年2か月後の2017年10月には「やや不評(ほぼ不評)」へと変わり、発売から約2年後となる2018年7月には「賛否両論」へと変化。そして、発売から5年1か月後となる2021年9月に、「やや好評」となった。やや好評になったということは、好評率が70%を超えたことを意味する。つまり、好評率19%以下(不評)から、好評率70%(やや好評)となったのだ。前代未聞の盛り返しである。

『No Man’s Sky』のSteamレビューステータスの変化を報告したのは、パブリッシャーNew Blood Interactiveの設立者でもあるEl Oshcuro氏。「やや好評」になったことを誇りに思うと、Hello Games設立者のSean Murray氏に伝えている。Murray氏は発売時に誇大宣伝をした張本人として、殺害予告をされるほどユーザーからバッシングされていた。しかし今ではゲーム内のキャラを同氏の顔に差し替えるModなども出ており、愛されるキャラクターとなった。こうした点にも、ユーザーからの評価の変化が感じ取れるだろう。


Hello Gamesも『No Man’s Sky』アップデートにより、利益を得ているようだ。無料アップデートに際しては、ユーザー数も増えており、並行して新ハードでの展開もされている。発売当時に数多く売れたことにより巨額の利益を得たと見られるほか、アップデート時にはセールとあわせて売上が伸びているようだ。調査会社の報道によると、同作の2018年7月の推定収益は26億円(関連記事)。マルチプレイ実装によりユーザー数がもっとも伸びたNextアップデート月の推定収益であることは把握しておくべきだが、開発会社もまたアップデートによる恩恵を受けているのだろう。とはいえ、一度も有料コンテンツを販売していないスタンスを考慮すれば、Hello Gamesなりのある種のこだわりが見て取れる。

野心的なコンセプトをぶち上げ、誇大宣伝と批判されたのち、異例の無料アップデートにより、前代未聞の評価の覆しを成し遂げた問題作『No Man’s Sky』。Sean Murray氏も、謙虚にその評価の変化を喜んでいる。Hello Gamesは、『No Man’s Sky』の開発のほか、新作として『The Last Campfire』を手がけている。極めて困難な状況から脱したイギリスの小さなスタジオには、明るい未来が待っていることだろう。


『No Man’s Sky』は、PS4/Xbox One/PC(Steam)向けに発売中。9月中頃までは各プラットフォームで半額セール実施中である。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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