『Skyrim』OPの“荒ぶる馬車”は開発者泣かせだった。虫への衝突でも大事故に

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オープンワールドRPG『The Elder Scrolls V: Skyrim(以下、Skyrim)』冒頭において発生するバグについて、同作に携わった開発者が開発当時の裏話を語っている。俗に「荒ぶる馬車」などと呼ばれた奇妙な不具合の原因のひとつには、バグ修正がバグを呼ぶゲーム開発の苦労があったようだ。


『Skyrim』はBethesda Softworksが手がけた人気オープンワールドRPG作品だ。同スタジオは『The Elder Scrolls』シリーズのほかにも『Fallout 3』以降の同シリーズ作品制作でも知られており、広大なオープンワールドと自由度の高いゲーム設計で人気を集めている。一方で同スタジオの作品は、ファンのあいだでは「ゲーム中の物体がほかの物体にめり込む」「NPCが人間としては奇妙な動きをする」などの挙動はほぼ日常茶飯事と認識されている面があり、大小の不具合が話題にのぼることもしばしばだ。

今回取り沙汰された、通称「荒ぶる馬車」バグは、不具合のなかでも比較的知名度の高いものだ。具体的にどういうバグかというと、『Skyrim』および『Skyrim: Special Edition』の冒頭シーンにおいて、ある環境下において主人公の乗る馬車が型破りな動きをするというもの。馬車が異常に揺れて視点がガクガクするのはまだマシな方であり、馬がドリルのように回転したり、馬車がロケットのごとく空中に打ち上げられたり、主人公を車輪に巻き込む凄惨な人身事故に発展することもある。実際にバグが発生している様子は、下記の動画を参照されたい。


場合によっては冒頭からゲーム進行不可能にもなりえる「荒ぶる馬車」現象のもっとも大きな原因は、物理演算の不具合だ。同作における馬車の動きはゲーム内物理演算エンジンによりリアルタイムに計算されているため、ちょっとした起伏や小石などのオブジェクトでも、コリジョン(物理的干渉)の具合で予想外の挙動を馬車にもたらすことがある。

また、ゲームの動作環境が物理演算に影響を及ぼす可能性もある。『Skyrim: Special Edition』PC版では「高すぎるフレームレート(描画頻度)」が原因で馬車が荒ぶることが確認され、解決策として描画頻度を60fpsに制限してオープニングシーンをやりすごすという手法が取られた。物理演算による演出は、リアルな挙動と引き替えに安定しない動作をもたらす可能性があるのだ。『Skyrim』にてシニアワールド/ライティングアーティストを務めたNathan Purkeypile氏によれば、予想だにしない小さなオブジェクトが原因で馬車の進行を妨げたこともあったそうだ。

Purkeypile氏は8月18日、自身のTwitterアカウントにて『Skyrim』の馬車に関する開発裏話を投稿した。開発当時、特に開発者たちを悩ませたのが前述の馬車に乗るシーンだったという。同氏は「何度あの馬車シーンを見たかわからない、優に数百回は見ているはず」と述べて一連のツイートで当時を振り返った。


まず、開発が困難だった理由としては、前述の通り馬車が物理演算にのっとって動作していたという点が大きかったようだ。道のデコボコから物理エンジン自体のバグまで、あらゆる原因で馬車が吹っ飛ぶ可能性があり、同氏は「馬車を進めたい道が、馬車が進める道だと限らない」と調整の難しさを語っている。ある時、馬車がロケットのように空へと打ち上げられる現象に遭遇したものの、馬車が必ず荒ぶるわけでもなく再現性はまちまちで、当時は開発チームの誰にも原因がわからなかったそうだ。

ところが、“犯人”は意外なところに潜んでいた。空中を飛び回る小さな「ハチ」である。まず、ハチは本作において錬金術によってポーションを作るための素材になる、一種のアイテム扱いの存在だ。しかし、このハチについては当時、正常に捕獲できないというバグが発生しており、解決策としてハチに対してあるタイプのコリジョンが適応されたそうだ。つまり、ハチが別の物体に対して干渉するようになったわけだ。

察しのよい読者はお気づきかもしれないが、この小さなハチは結果として大きな悲劇を生んだ。現実においては、小さなハチに馬車がぶつかればハチの方が押されるのが道理だ。しかし、ゲーム内においては、適切な設定をしないかぎり「馬車がハチに引っかかる」という挙動になりえる。コリジョン設定を得て「確固たる自然の力の化身」となったハチと馬車が正面衝突した結果、馬車が敗北してロケットのごとく打ち上がるといった現象が発生していたのだ。


Purkeypile氏は「ゲーム開発は非常に難しく、特にオープンワールドゲームでは何かを直せば何かが壊れることもよくあります。しかし、そうしたシステムの相互作用は同時に、オープンワールドゲームをとても興味深いものにしています」と述べて一連のツイートを締めくくっている。ゲーム開発において、喜びと苦労は表裏一体なのだろう。同氏は『Skyrim』のほかにも『Fallout』シリーズや開発中の新作『Starfield』などにも携わっていたベテラン開発者であり、言葉の重みもひとしおだ。

同氏は現在、Bethesda Softworksを離れて新スタジオJust Purkey Gamesを立ち上げ、新作の開発にあたっている。ジャンルは「オープンワールドホラーメタルゲーム」とのことで、「Just Purkey(Purkeyだけ)」というスタジオ名の通り、現在単独で開発しているようだ。同氏の開発の道のりにバグが少なからんことを祈るばかりである。

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