Xbox部門責任者として活躍するPhil Spencer氏。同氏は、マイクロソフトゲーム部門のバイスプレジデントも務めている。当然、多忙極まるはずの同氏が、ただならぬプレイ時間と情熱を注いでるゲームがある。それは、オンラインFPSゲーム『Destiny 2』だ。
『Destiny 2』はBungieが手がける基本プレイ無料オンラインFPSゲームだ。同作はPCやPlayStation 4、PlayStation 5など多機種に展開されており、Xbox OneおよびXbox Series X|S向けにも配信されている。サブスクリプションサービスXbox Game Passに加入すれば同作の有料DLCも利用できる。
同作の魅力のひとつが、RPG要素を含んだオンラインプレイだ。プレイヤーは多様な協力・対人アクティビティを通じて装備や通貨などを収集し、キャラクターを強化してさらなる戦いに挑んでいく。ランダムに特徴が付与される武器の収集選別や、経験値を稼いでシーズンランクを上げ報酬をアンロックするシーズンパスシステムなどの要素もある。プレイヤーにとっては思わず没頭してしまう魅力を持つ作品。そしてSpencer氏も、そうした同作の魅力に取り憑かれたプレイヤーのひとりのようだ。
同氏が『Destiny』シリーズに魅了されたのはここ最近のことではない。Spencer氏のTwitterアカウントにおける『Destiny』シリーズへの言及を見ると、2014年にリリースされた前作から同シリーズを楽しんでいる様子がうかがえる。同氏は『Destiny 2』リリースの際には「僕の人生から自由時間が消えていくのを感じる」と述べつつ、リリースを祝うツイートを投稿していた。つまり、同氏が『Destiny』シリーズプレイヤーであることは一部ファンにとっては周知の事実なのだ。
Spencer氏の『Destiny 2』への没頭ぶりが脚光を浴びるきっかけとなったのが、現地時間8月3日にTwitchのXbox公式チャンネルにおいて配信されたプログラム、「Destiny 2-sday」だ。同プログラムには、ストリーマーのMs5000Watts氏とともにSpencer氏がゲスト出演していた。まず注目したいのは、Spencer氏の『Destiny 2』アカウントが配信開始時点でシーズンランク194に到達している点だ。現在、『Destiny 2』の現行シーズンは開催期間終盤へ突入しているため、ランク190前後に到達しているプレイヤーは少なくはない。しかし、このランク194という数字は「時間のある日だけちょっと遊ぶ」といったプレイスタイルでは到達するのが難しいと思われる領域なのだ。
また、キャラクターの強さの基準となる「パワーレベル」も1337と、エンドコンテンツの領域に手がかかる数値に達している。Spencer氏がTwitterプロフィールで公開している自身のゲーマータグ「P3」で『Destiny 2』プレイ歴を調べてみると、ほぼ毎日のように同作をプレイしていることがわかる。筆者も同作プレイヤーであるものの、到底Spencer氏のステータスに追いつけていない状況だ。何をどう考えても筆者より遥かに忙しいはずの同氏が、なぜここまでプレイ時間を確保できるのか。その秘訣は自社サービスの活用にあるようだ。
Spencer氏は『Destiny 2』を、文字通りどこでもプレイしているようだ。というのも、同作はXbox Cloud Gaming(旧称Project xCloud)を通してのクラウドゲーミングにも対応しているのだ。このサービスを利用すれば、Windows10/Android/iOS上でXbox Game Passの対応タイトルをプレイできる。国内ではまだテスト段階にあるものの、海外22か国においてはXbox Game Pass Ultimateメンバー向けに正式提供が開始されている。Spencer氏は、このサービスを縦横無尽に用いて『Destiny 2』のプレイに勤しんでいるのだ。
Xboxゲームマーケティング部門のゼネラルマネージャーであるAaron Greenberg氏のツイートでは、Spencer氏が飛行機の待ち時間に、Xbox Cloud Gamingを通じてラップトップPCで同作をプレイする様子が紹介されている。画面にはバウンティ(サイドミッション)をくれるNPCである「バンシー44」が映し出されており、同作プレイヤーからすると「これから日課のバウンティをこなすのだな」と親近感の湧く光景だ。
Spencer氏が『Destiny 2』に興じるのは空き時間に留まらない。ゲーミングデバイスメーカーRazerのモバイル用ゲームコントローラーRazer Kishi(発売前の早期アクセス版)を手にした同氏は、このデバイスを利用してゲームに夢中になったようだ。同氏は自身のTwitterのなかでRazer側への感謝とクラウドゲーミングとの相性の良さを述べつつ、クラウドを通じた『Destiny 2』モバイル環境のタイトル画面写真を投稿。「今日の会議で発揮できたはずの生産性がほぼ消し飛んだよ、ごめんね」とマイクロソフト社クラウドゲーミング部門重役であるKareem Choudhry氏に謝っている。
もちろん、Spencer氏が実際に完全に会議を放棄して『Destiny 2』に没頭していたとは考えづらく、冗談まじりにデバイスとクラウドの機能性を伝える投稿だとも思われる。しかし、同氏の夢中ぶりを鑑みるに、あながち完全に冗談だと断言できないのが恐ろしいところだ。いずれにせよ、要職につくSpencer氏がかなりのプレイ時間を捻出できるのは、Xbox Cloud Gamingの活用と、『Destiny 2』への愛着ゆえだろう。
Xboxという大ブランドを背負う重役でも、好きなゲームへの欲求は変わらない。暇あらば好きなゲームをしようとする姿には、多くの人が親近感を覚えるのではないだろうか。Xboxブランドのボス自身が自社サービスをフル活用してゲームを楽しむ姿を見せることには、マーケティングとしての効果もあるかもしれない。