美少女ノベル『おにあま -わたしに甘えて、お兄ちゃん -』は爆速クリア可能。「選択肢までスキップ」機能によって


文章を読み進めていくことが、ゲームプレイの中心となる「ノベルゲーム」というジャンルがある。そうしたゲームには、プレイを快適にする機能がしばしば実装される。たとえば、入力をせずともテキストが読み進められていくオートモードのほか、テキストやシーンを飛ばすスキップモードがあげられるだろう。そうした機能の一つである文章スキップ機能が、思いもよらぬ挙動を見せる様子を、あるユーザーが目撃してしまったようだ。


ノベルゲームにおいてよく見かけるのが、既読文章のスキップ機能だ。スキップ機能にも、単に文章を早送りするものから、次の選択肢まで文章を丸ごとスキップするものなどいくつかの種類がある。分岐ルートの多いゲームなどでは、枝分かれを視覚的にナビゲートできるフローチャートなどが用意されることもある。また、開発に用いる「スクリプトエンジン(ゲームエンジンの一種)」の種類によっても、機能の豊富さや挙動は変わってくる。

無料で利用可能なスクリプトエンジンでは、ごく基礎的な機能を備えるに留まり、スキップ機能のような発展的な要素などはプラグインや開発者の工夫で実装される場合も多い。一方で、大規模スタジオなどでは、機能が充実した自社開発のスクリプトエンジンを、複数タイトルの開発に利用するケースがよく見られる。ベースとなるエンジン次第で、有する機能が変わるということだ。では、「次の選択肢までスキップ」機能を搭載したエンジンで、「選択肢が存在しない」ゲームを開発すると、スキップ機能はいかなる挙動を見せるのだろうか?その答えのひとつを発見してしまったのが、ボンテリP氏だ。

https://twitter.com/CooRoot/status/1420357016711692296


ボンテリP氏は、自身のTwitterアカウントに衝撃的な動画を投稿した。動画の内容は、美少女ノベルゲーム『おにあま -わたしに甘えて、お兄ちゃん -(以下、おにあま)』Nintendo Switch版で新規ゲームを開始し、“クリア”するだけのものだ。しかし、そのクリア時間は約15秒ほど。肝心の可愛い女の子は約3秒ほどで消え去り、次の瞬間にはタイトル画面に戻っている。なんとも無情、なんとも味気ないノベルゲームスピードランである。

この“瞬間クリア”現象の原因は、「選択肢なし」というゲームの特色と、「次の選択肢までスキップ機能」という『おにあま』採用スクリプトエンジン元来の機能にあると考えられる。本作は、スクリプトエンジンとしてアダルトゲームレーベル「戯画」が開発した「NeXAS」を採用していると見られる。というのも、戯画そのものが、『おにあま』コンソール版を販売しているパブリッシャーエンターグラムの、アダルトゲームブランドである。スクリプトエンジンも共通している可能性が高いのだ。

また、NeXASエンジンはかな以前から、「選択肢までスキップ」機能を搭載している。筆者がいくつかの同エンジン採用作を確認したところ、いずれも「選択肢までスキップ」機能を搭載している。これらのゲームも、仮に選択肢がなければタイトルに戻っていたのかもしれない。しかし、冷静に考えてみるとこれは理にかなった挙動とも捉えられる。ゲームエンジンの機能として「次の選択肢」まで丸ごと文章を飛ばすのなら、選択肢がなければ最後まで駆け抜けてしまうのが道理とも言える。


留意したいのは、「選択肢なし」のシナリオで「選択肢までスキップ」を搭載したゲーム自体がやや稀であり、エンジンや実装によって挙動も分かれることが予想される点だ。『おにあま』のケースは、たまたまシナリオ設計とエンジンの機能が噛み合って(?)しまったがため、ゲーム全編を省くという少々凄まじい現象が起こったという可能性が高い。また、ユーザーとしては確かに予期しない挙動ではあるものの、実際に(タイトルの)選択肢まではスキップしているため、仕様といえば仕様ではある。ともあれ、なかなかどうして面白い挙動というのも確か。『おにあま』はPC向けにもオリジナル版が発売されており、PC版でも同様の挙動になっているだろう。気軽に動画を撮影し共有できるNintendo Switchにリリースされたことで、妹系美少女ゲームが、意外なかたちで脚光を浴びることとなった。

弊誌はエンターグラムに、今回の挙動が意図したものであるかどうかを確認している。返答があり次第、本稿に追記する予定だ。


貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。