『レッド・デッド・リデンプション2』ゲーム内動物のリアルさは教育レベル。生物学教師が実験をし、学びになると主張

イギリスの生物学教師による、『レッド・デッド・リデンプション2』の動物に関する投稿がコミュニティの注目を集めている。同作が生物学に関する学習に役立つ可能性を示唆するものだ。

イギリスの生物学教師による、『レッド・デッド・リデンプション2』の動物に関する投稿が一部海外コミュニティの注目を集めている。海外掲示板Redditに投稿された談話および研究論文は、同作が生物学に関する学習に役立つ可能性を示唆するものだ。海外メディアGamingSymが報じている。


『レッド・デッド・リデンプション2(以下、RDR2)』はRockstar Gamesが2018年にリリースしたオープンワールドゲームだ。舞台は1899年、開拓時代は落日を迎え、工業化の一途をたどるアメリカだ。プレイヤーは放浪のギャングの一員、アーサー・モーガンとなり、アメリカの法と混沌のなかで厳しい選択を迫られていく。本作にはトレジャーハントやランドマークなど多数のコレクタブル要素が盛り込まれており、なかでも「動物」の存在はゲームプレイにも深く関わり、種類も多彩だ。

“伝説”と呼ばれる特別な個体や大小の違いなども含めれば、登場動物のバリエーションは約230種を超える。ゲーム内に登場する動物はワニやヘビなどの爬虫類や、装備が整うまでは油断ならない敵となる各種のクマ、そして犬やヒョウ、鳥類など、枚挙にいとまがない。一部はオスメスの区別があるほか、品種によって区分けされているほどの徹底ぶりだ。これらの動物種は、基本的には狩猟の対象となるものの、その見た目や生態に至るまで細かくゲーム内で再現されている。また、現実で絶滅しているとある鳥については、同種の鳥を一定数狩るサイドクエストが存在し、クエストを完了するとプレイヤーが絶滅の“犯人”になってしまう。


その徹底ぶりが生物学の学習に役立つレベルなのでは、という可能性を示す投稿をしたのが、海外掲示板Redditのユーザーである/u/SaiRookwood氏だ。イングランドのコーンウォールで生物学教師をしており、自身も『RDR2』のファンであるというSaiRookwood氏は、「同作でのプレイ経験が動物種の同定を助けるのではないか」という疑問を持ったそうだ。同氏および共同研究者は、444名の『RDR2』経験者と141名の未経験者を対象に実験をおこなった。その結果として、同作がプレイヤーの生物学の知識に有意な影響を与えたと解釈できる結果が出たそうだ。

実験の手順はこうだ。まずはプロングホーンやコサギなど、『RDR2』にも登場する15種類の動物の写真を被験者に見せ、テキストボックスへの入力で名前を同定してもらう。被験者がテキストボックスを空白で出した場合には、後に5択問題というかたちで、同じ動物の名前を同定するチャンスを与えられる。そうしたクイズ的手法で全585名のテストをおこなった結果、『RDR2』経験者は平均して15問中10問に正解、未経験者よりも平均で3問多く正答するという結果が出たそうだ。


SaiRookwood氏よれば、特に同作を最近、もしくはより長くプレイした被験者の方が良好な結果を出す傾向があり、また『レッド・デッド・オンライン』にて職業「自然探求家」をプレイしていた被験者も正答率が高かったそうだ。同氏は「当然、18歳以下が『RDR2』を遊ぶことは推奨しません」としつつも、「“ゲーム化”された学習、また没入型の学習経験は、動物のリストを単純に丸暗記するよりも効果的でありえます」と述べ、自然史の教育を促進しようと考える教育者や自然保護主義者にとって、参考になる点があるとの見解を伝えた。

また、論文中では『ポケットモンスター』シリーズについても触れられている。同シリーズには通算で約900種にせまる数の個性豊かなポケモンが登場しており、たしかに動物種の生態や名前を学習するのと似通った部分はある。論文では2002年に発表された、ケンブリッジ大学の保全生態学教授Andrew Balmfordによる「子供たちはイギリスに生息する動物よりポケモンの方に詳しいので、『ポケットモンスター』のような教育ゲームを作ってはどうか」という趣旨の論文が紹介されている。たしかに、教科書で暗記するよりもゲームで一匹一匹集めた方が憶えがよいというのは、感覚的には理解しやすい話だ。SaiRookwood氏が携わったとする論文は、British Ecological Society上で閲覧できる。


「ゲームの教育向け活用」は、かねてから議論が重ねられているトピックだ。近年では実際の活用例も多く、『マインクラフト』については教育版やバーチャル社会見学マップの提供をしており、115か国で3500万人以上の学生と教育者が同作のライセンスを取得しているとのこと(関連記事)。ほかにも、戦時下を舞台にしたサバイバルシム『This War of Mine』がポーランドの学生向け推薦図書入りし、18歳以上の高校生に無料提供されるなどの動きがあった(関連記事)。

教育用途の作品ではないものの、プレイヤーに自然に関する知識を与える可能性が示唆された『RDR2』。こうした注目が集まるのも、動物の生態系や見た目の再現にこだわり抜いた結果だろう。しかし、動物の同定を促すほどの高度な再現は、どんな開発元でも実装できるものではない。

前述のReddit投稿のなかでSaiRookwood氏は、「教育ゲームの開発元は、(『RDR2』開発元の)Rockstarのような予算や人員、開発期間を持っていません」として、同作のようなゲーム体験を教育ゲーム開発元が提供するのは難しいとコメント。「それでも、『RDR2』から得られるものはあると思います」と、同作が教育ゲーム開発の参考になる可能性を示唆し、投稿を締めくくっている。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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