PlayStationプラットフォーム販売サポート体制の悪さに、インディー開発者たちの不満が爆発。対応とPRの両方で
インディーゲーム開発者の間で、PlayStationプラットフォームでゲームを販売する際のサポート体制について批判が集まっているようだ。ソニーからのコミュニケーションの不足や煩雑な手続き、プロモーションの柔軟性の欠如などが議論に上がっている。まず口火を切ったのは、パブリッシャーNeon Doctrineの共同設立者であるIain Garner氏。同氏は「プラットフォームX」と名前をぼかしつつ、“Game Passがない方”として、そのほか諸々の情報によりソニーを示唆しながらその体制を批判している。
Garner氏はまず、ローンチまでに必要な手続きを説明。PlayStationプラットフォーム用にゲームを開発したら、3世代のバックエンドソフトウェアにまたがる“信じられないくらい厳しい”ロットチェックを通過。その後PlayStationプラットフォーム用のトレイラーをソニーに提出し、PlayStationブログを執筆する。トレイラーとブログ記事については、ソニーから割り当てられるアカウントマネージャーを経由して登録する必要があるという。しかし自身にどのアカウントマネージャーが割り当てられているのかソニー側が教えてくれないため、実際には非常に困難がともなうようだ。
また実際にPlayStationストアにゲームが並ぶ際、プロモーションの機会を獲得することも至難の業であるという。実際にプロモーションを得られるかは、ソニーによるゲームの評価次第。ただし、ここではウィッシュリスト数などが見られるわけではなく、パーソナルマーケティングは意味をなさないとGarner氏は語る。ではどういった点が評価の基準になるのかというと、皆目見当がつかないのだという。ソニーからプロモーションを得るにはどういった条件を満たす必要があるのか、あるいは自身のゲームがどのような評価を下されているのか、開発者側に共有されることはないとのことだ。
ただしGarner氏によれば、確実にソニーからフィーチャー枠を獲得する方法はあるという。それは、2万5000ドル(約278万円)を支払うこと。広告枠の購入を指しているのだろう。この金額については、海外メディアKotakuが独自ソースにて信憑性を確認。最低金額が2万5000ドルであるほか、同費用は最大で20万ドル(約2229万円)にもおよぶという。
このほか、開発者が任意のタイミングでセールをおこなうことができないことも、問題点として挙がっている。PlayStationストアにおけるセールは“招待制”であり、限られたゲームしかセールをおこなうことはできない。たとえローンチ時に成功を収め、ほかプラットフォームでも好調な売れ行きを示していたとしても、セール対象として選ばれるとは限らないという。周囲のインディーデベロッパーに聞いたところでも同様の状況だったとのことだ。Garner氏は自身が英語話者であり、世界中でショーケースに出て有力な人物と会うことができるという優位な立場であることも補足。それだけ強みのあるGarner氏でさえ苦戦している状況であれば、もっと知名度の低いインディー開発者にとってPlayStationプラットフォームでの展開は非常に厳しいものであろうと批判している。
Garner氏の声には、業界からさまざまな開発者が同調している。ノルウェーのインディースタジオRed Thread GamesのCEOであるRagnar Tørnquist氏は、「私たちが経験したこととまったく同じ」と語る。同スタジオは、海外PlayStationストアでアドベンチャーゲーム『Draugen』をリリース済み。同作は発売から1年以上経つものの、久しくセールで取り上げられていない。スタジオがそうしたキャンペーンを試みなかったわけではないとして、ソニーの対応の質を批判している。
またSteamにてユーザーレビュー「圧倒的に好評」を獲得するポイント&クリックADV『Hypnospace Outlaw』の開発者Jay Tholen氏もコメント。同作もPlayStation 4版リリースを果たしているものの、「PlayStationはインディー開発者にとってはひどいものだ」と断言。ほかコンソールと比べ「売り上げはごみのようだ」と歯に衣着せず語っている。
またパブリッシャーWhitethorn GamesのCEOであるMatthew White氏は、明確なプラットフォーム名を伏せて「完全に仮説の、全然本当じゃない収入内訳」を開示。売り上げの大部分を占めるNintendo Switch/Xboxと思しきプラットフォームに比べ、PlayStationプラットフォームにおける売り上げは全体の3%に満たないとしている。続くツイートでは、PlayStationはもっともパフォーマンスが悪いプラットフォームであると批判。メール問い合わせが1か月以上待たされるレスポンスの遅さや、開発用キットを入手するまでに8か月かかった経験などを挙げ、ソニー側と開発者側のコミュニケーションが成立していないことを厳しく指摘している。このほか手動での請求が必要なExcelを使った請求書の処理で時間をとられることなど、効率性の低さも批判している。こうした対応の問題により、マルチプラットフォーム展開をするもPS版のみ延期するといったケースも見られるようだ。
複数のインディーデベロッパーから挙げられた、ソニーによるサポート体制の問題点。とくに少人数でゲームをリリースしようとしている開発者にとって、煩雑な手続きや費用の重さは大きな負担となるようだ。デベロッパー間での不満は根強く、今後もプラットフォーム進出の苦労が数多く明かされていきそうだ。