PC版『PUBG』のBotを弱体化するパッチ配信開始。初心者救済のはずのBotが無慈悲な殺人マシーンに
PUBG Corp.は現地時間6月9日、バトルロイヤルゲーム『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(以下、PUBG)』PC版向けにアップデートパッチを配信した。目玉は「Bot(自動のAIプレイヤー)の弱体化」だ。『PUBG』は先日アップデート12.1を配信し、コミュニティから「Botが強すぎる」という声があがっていた。今回のパッチはBotの猛威を緩和する目的があるようだ。
『PUBG』にBotが導入されたのは、約1年前のアップデート7.2でのことだ。このBot導入については、パッチノート上で「新規プレイヤーが一方的にやられることへの救済措置」とされていた。しかしながら、このBotが最近のアップデートで異常な強さを誇る状態になっていたのだ。
前述のアップデート12.1には「BOTシステムの全体的なアップグレード」が含まれていた。どうやら、このアップグレードがあまりにも強烈過ぎたようなのだ。同アップデート配信後には、海外掲示板Redditの『PUBG』コミュニティ/r/PUBATTLEGROUNDSにて「Bot強すぎ」という旨の投稿が多数なされている。投稿者の検証によれば、Botがチーターに近いような挙動をしていたという。
あるRedditの投稿には、Botの冷酷な挙動を伝える動画が添えられている。こちらは投稿者と仲間、そしてBotの視点を映したものだ。動画を見るかぎりでは、Botが障害物に遮られた相手プレイヤーを完全に照準に捉えてしまっている。言わば壁越しに他プレイヤーを可視化するチート、「ウォールハック」を利用している人間プレイヤーを彷彿とさせる挙動だ。
なぜ、このようなことが起こってしまうのだろうか。その原因は、Botが「ゲーム内の情報を直接受け取って自動で動く」という動作原理にある。一般的なシューターのBotは、円滑に動作するためにゲーム内のさまざまな情報を数値というかたちで受け取っている。人間の視覚や聴覚、「慌てる」などの挙動までもAIで自然に再現するのは非常に難易度が高く、計算コストが高く付き、好ましい結果が得られるとも限らないからだ。そのため、『PUBG』のBotも一般的な例に漏れず、他のプレイヤーの位置情報などを受け取りながら動作していると見られる。その中で開発者は「Botが撃ち始めるまでの時間」「射撃の精度」などを調整して、人間プレイヤーが対等に感じるバランスを目指すことになる。
そうすると、些細なバランス調整によってBotが想定以上に強くなり過ぎてしまうこともあり得る。Botはゲーム内情報をほとんど把握しており、人為的にプログラムされなければ慌てることもない。Botは人間が使えばチートといわれるような機能に頼り動作しているため、調整が少しでもいき過ぎればまさしく“殺人マシーン”と化してしまうのだ。また、『PUBG』のように草木などのきめ細かい遮蔽物が多いゲームでは、Botが“見えていないはずの敵”を撃ってしまうケースがある。
他のユーザーが投稿した動画では、Botが明らかに木の葉に隠れていて視認できない敵を射撃している様子が確認できる。これもBotの“弱点”が明白になっている瞬間だ。前述の通り、Botが人間の視覚と反応を正確にシミュレートするのは非常に難しい。特に葉っぱや煙のように、部分的に敵が見える可能性がある遮蔽物については、「見える」という判定にして他の部分で調整するのが、現実的な実装だ。
しかし、Botの仕組み上仕方ないとしても、実際に見透かされた人間プレイヤーにとっては強い理不尽感を与えてしまう挙動だろう。今回の『PUBG』アップデートには、Botの「全体的な射撃精度の低下」、「フルオート射撃について、敵がより近距離に近づくまでおこないづらくなる」、「敵を捉えた後の反射速度の低下」といった弱体化が盛り込まれている。アップデート内容から見るかぎり、遮蔽物越しに撃ってくるといった挙動はまだ残っている可能性がある。その部分を根本的に解決するには時間がかかり、取り急ぎ他の部分で調整せざるを得ないという事情もあるのだろう。
今回のケースでは、“初心者救済”として導入されたはずのBotが理不尽な強さを感じる調整と化してしまった。全ランク帯で同じBot調整となっていたのかは定かではないものの、多くのプレイヤーからの批判が集まっており、急ぎの緩和策が適応されたかたちだ。
『PUBG』のBotについては、実装当時から「Botは不要」「オプションからBot入りのマッチに入るかどうか選択させて欲しい」などさまざまな意見がReddit上で投稿されていた。今回の一件を受けて、同掲示板にはBotの存在価値への疑問を含む批判的意見がふたたび寄せられており、問題の根深さを表している。『PUBG』が今後どうBotを調整し、いかにしてコミュニティとの折り合いをつけていくのかを見守りたい。