Twitchが「VTuber」「トランスジェンダー」など、350個を超える新タグ追加の意向を発表。“配信者自身”の属性を表現できるように

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Twitchは今月5月21日、公式ブログ上で、350個以上のタグを今週中に追加する意向を発表した。Twitchにおけるタグは、配信内容の趣旨を詳しく設定するシステムだ。これはゲームタイトルや「雑談」などの大枠を決めていたカテゴリーとは別のもの。「スピードラン」など、具体的な配信内容を記述することが可能となっている。

Twitchがタグ機能を実装したのは2018年のこと。たとえば、配信に「ノーダメージ」などのタグをつけることで、配信者がゲームをどうプレイするのか、より具体的に視聴者に示すことができる。視聴者側は、自分の好みに合う配信を絞り込んで探すことが可能になる。

タグは現時点でも多岐にわたるものが存在している。しかしながら、そのほとんどがコンテンツの内容についてあらわすものだ。一方で、配信者本人の属性を示すタグは、実質「LGBTQIA+」のみという状況だった。「LGBTQIA+」は、配信者が広範なセクシャルマイノリティ、またはその支持者であるAlly(アライ)であることを示すタグだ。


Twitchによれば、「LGBTQIA+」タグはコミュニティから圧倒的に好意的なフィードバックを受けているとのこと。Twitchには同タグをつけている配信者も多く存在しており、配信者の属性をあらわすタグの需要を示している。また、トランスジェンダーコミュニティからは、Twitchへの「トランスジェンダー」タグの追加を求める声が多くあがっていたそうだ。

今回Twitchが大量追加するタグには、上述の「トランスジェンダー」のようにジェンダーに関わるものも含まれる。それだけに留まらず、性指向・人種・国籍や、障害に関するものなど、配信者自身の属性をあらわす多くのタグが追加されるとのこと。また、目を引くのは「VTuber」というタグが追加されることだ。VTuberの主戦場といえばYouTubeのイメージが強いかもしれない。しかしながら、最近ではTwitchでもバーチャルキャラクターを用いた配信を散見する印象だ。「VTuber」タグの追加は、人気が高まり続ける同ジャンルの隆盛に応じたものだと思われる。

Twitchはタグ機能の実装当時から、配信者の属性に関するタグの追加を求められていたようだ。にもかかわらず、配信者の属性タグの追加に時間を要したことについて、Twitchは「タグ機能は当初、配信者が何者で、誰を支援するかではなく、何を配信するかという内容を示せるようにデザインされていました。現在に至るまでこの区分を保ち続けてきましたが、私たちは間違っていました」とコメント。また、実験的に導入した「LGBTQIA+」タグが、配信者によるコミュニティの醸成に役立ったことや、同じ属性の仲間を見つける助けになったことに触れ、嬉しく思うと述べている。


なお、追加するタグの制定については、多くの第三者機関の協力を仰ぎおこなわれたとのこと。例としては、セクシャルマイノリティに関するメディアモニタリング組織であるGLAADや、ゲームを通じて障害者の社会的孤立を防ぐ目的の組織AbleGamersなど。ほかにも多数の組織とともに追加するタグを決定していったそうだ。Twitchは、追加してほしいタグの要望についても、フォーラムで継続して耳を傾けていくとのこと。

Twitchは、今回のタグ追加により配信者の属性がわかりやすくなった反面、嫌がらせなどに利用される可能性についても言及している。「特定のタグを付けた配信者に対する嫌がらせ」をおこなったユーザーは、ガイドラインに則って処罰されるとのことだ。また、Twitch運営は嫌がらせの被害を回避するため、チャットモデレーションツールの利用を呼びかけている。

ライブ配信プラットフォームとして、多様性尊重に力を注ぐTwitch。今回のタグ追加もその点で大きな一歩と言えるのではないだろうか。以前からTwitchは、TwitchUnityなどの催しや、Twitter上での投稿などを通じて、多様性と参加性(Inclusion)向上に力を注いでいる。

一方で、最近ではTwitchの取り組みが裏目に出てしまった例もあった。今年3月の女性史月間(Women’s History Month)での出来事だ。この習慣は、女性の社会貢献について焦点をあてたもの。Twitchはこの月間に合わせて、祝いのツイートをおこなっていた。

ツイート上でTwitchは、“Women(女性)”という単語を“Womxn”とつづっていた。近年散見される、トランスジェンダー女性も含む「女性」という意味が込められた造語だ。しかしながら、この単語が使われることで「区別されている」と感じるトランスジェンダー女性も存在する。結果、Twitchはこの“Womxn”という表現をめぐって批判を受け、後にツイートを取り下げた(Game Rant)。こちらはTwitchの配慮が至らなかった事例だ。しかしながら、好意的に受け取れば、Twitchがセンシティブな課題に臆することなく取り組んでいる証拠ではないだろうか。

Twitchは日本時間5月27日午前1時半より、今回のタグ追加についての詳細に関するストリーミングおよび質疑応答をTwitch公式チャンネル上でおこなうとのことだ。

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