『Apex Legends』ワットソンが強化されないのは、すでにかなり強いから。開発者が電気技師ガールの“見えない強さ”を語る

 

Apex Legends』において、ワットソンにまつわる調整が議論を呼んでいるようだ。Respawn Entertainmentは、海外掲示板RedditにてAMA(Ask Me Anything/何でも聞いてね)スレッドを開催。ユーザーから寄せられたさまざまな疑問に回答した。その中で投げかけられた質問のひとつが、ワットソンに関するもの。 

ワットソンといえば、「英雄の軌跡」にて不具合によって“サイレント弱体化”されたことが記憶に新しい(関連記事)。戦術アビリティによる電気フェンスからスロー効果のデバフが削除されており、ワットソン使いに衝撃を与えた。ピック率は最下位に落ちこむなど、影響は大きい。不安を募らせるユーザーからAMAにて「ワットソンのフェンスを直してほしい」との要望が述べられた。さらに、パッシブアビリティのシールド自然回復についてもスピードが遅すぎるとの意見が、ユーザーから述べられている。 
 

 
このとき回答を寄せたのが、リードゲームデザイナーのDaniel Zenon Klein氏。フェンスについては、まもなく修正が施されると答えている。しかし、波乱を呼んだのがそのあとに続く言動だ。Klein氏は、ワットソンのシールド自然回復については問題ないとの見方を示した。そして、ワットソンはすでに非常に強力であると言及。現状、彼女に強化を加える予定はない旨を伝えている。フェンスの修正はともかく、ワットソンの強化予定の否定はファンに大きな衝撃を与えた。前述のとおり、彼女のピック率はきわめて低迷する状態にあったからだ。Klein氏のレスは大きな反発を受け、300件以上のdownvoteを獲得してしまっている。 

本稿執筆時点で、ワットソンのピック率は1.5%と依然最下位(Apex Legends Status)。では、Klein氏がいう「ワットソンは強力」というデータは何を根拠にしているのだろうか。Klein氏は、Twitterにて彼女の勝率を示すグラフを提示している。アリーナモードにおける勝率を示しているというグラフでは、ワットソンの勝率は52.30%。たしかに、全レジェンド中トップレベルでの白星を誇っているようだ。Klein氏は、フェンスのスロー効果削除バグがあってもなお強力さを示すワットソンに対し、不具合修正後はどれほど勝率を伸ばしてしまうのか不安にも思っているという。ワットソンを選ぶ人は少数でありながら、その少数の人々は高い勝率を誇っているというわけだ。 
 

https://twitter.com/danielzklein/status/1394727177116028934

 
同グラフについては、ライブバランスデザイナーを務めるJohn Larson氏も見解を述べている。まず同氏はワットソンの高い勝率について、「英雄の軌跡」においてパッシブアビリティの「小柄」が削除された影響があると述べる。その証拠に、グラフで2番目に高い勝率を誇るのは、ワットソンと同じく小柄を削除されたライフラインであるという。手足への被弾がボディショットほど大きなダメージを与えなくなったことが、高い勝率の一因となっているわけだ。 

またRedditのあるユーザーは、ワットソンの高い勝率と低いピック率に関して、ハイレベルなプレイヤーばかりがワットソンを選んでいるという可能性があるのではないかと、Larson氏に尋ねている。これに対しLarson氏が回答。開発チームは全レジェンドのあらゆるスキル帯のデータを見ているが、ワットソンのグラフがハイレベル帯に偏っていることはないという。重要なのは、ワットソンの勝率がライフラインと並び、プレイヤーの下位90%で大幅に高いという事実だそうだ。一方、上位5%のプレイヤーの間でもワットソンの勝率はトップに位置するが、外れ値というほどではない。これは、プレイヤーの射撃精度が高い高スキル帯において、彼女の各種アビリティはあまり多くの恩恵を与えていないことを意味するのではないかと指摘。そして、ほとんどのスキル帯におけるワットソンの高勝率の要因は、小さなヒットボックス&小柄なしという目に見えない力によるものかもしれない、と語った。 
 

 
またKlein氏は自身のTwitterで、ワットソンの調整の難しさについて語っている。同氏は、キャラクターの勝率を50%に保つことも重要ながら、より大切なのはプレイヤーの体験であると語る。ワットソンは非常に強力なレジェンドだが、そのパワーはほとんど目に見えないものだ。ワットソンはヒットボックスが小さいうえに、小柄も削除されている。こうした点が、ワットソンをレイスやライフライン同様に強力なレジェンドに押しあげているとKlein氏は語る。 

また、たとえスロー効果が削除されていたとしても、戦術フェンスは目に見えない力を発揮する。敵チームがフェンスを見かけたためにその場所を避けることがあれば、たとえ実際にフェンスに触ってはいないとしても、ワットソンのアビリティが効果を発揮したことになる。ただし、これはワットソンが能力を発揮した状況であるにもかかわらず、プレイヤーの体験としては記憶に残りにくい。実際にはワットソンが高い勝率を誇っているにもかかわらず、たとえば「レヴナントとオクタンに襲われて死んだ」という体験の方が記憶に残りやすいために、ワットソンの強力さについては見過ごされがちだという。データやプレイヤーの体験など、バランス調整において考慮すべき点は多岐に渡る。よって、「ゲームデザインなんて無理だよ」とKlein氏は冗談めかして締めくくっている。 
 

 
ワットソンが高い勝率を誇るにもかかわらず強化を望む声が根強いのは、Klein氏が語るとおり、その強力さを実感しにくいという原因が大きいかもしれない。なおフェンスのスロー効果修正については、現地時間で5月24日になるとLarson氏は予告している。はたして真の力を取り戻したワットソンがどこまで上り詰めるのか、注視しておきたいところだ。