クリップ? マガジン?『Apex Legends』開発者が海外掲示板で回答。新シーズン武器「ボセックボウ」開発裏話も

 

弾薬「クリップ」か、「マガジン」か。『Apex Legends』英語コミュニティで、武器の弾倉に関するパッチノートの記述がにわかに話題になった。ゲームデザイナーDavid Bocek氏(以下、Bocek氏)が、開発現場での出来事なども交えつつ、ユーザーからの指摘に回答している。 

話題となったのは、『Apex Legends』に登場する武器であるトリプルテイクに関する記述。トリプルテイクは新シーズン「英雄の軌跡」においてケアパッケージ武器(通称、赤武器)になると予告されている。変更に関する予告パッチノートの中でトリプルテイクの初期弾薬についての記述があり、そこでの表現が一部ユーザーにとっては引っかかるものだったようだ。 

 

クリップではなくマガジン 

 
海外掲示板Reddit上で、あるユーザーがパッチノートの表現に関して指摘するスレッドを立てた。内容としては、パッチノートでは“Ammo clip(弾薬クリップ)”と書かれているが、これは間違いで”Magazine(マガジン)“が正しいとするものだ。「クリップは一般人が髪を留めるやつだ」という冗談とともに、軽い調子で指摘するものだった。 

なお、マガジンは銃の「弾倉」、クリップは「挿弾子」を意味する単語だ。おおまかな特徴としては、マガジンは弾薬が箱で覆われており、クリップは弾薬が露出している。しかしながら、マガジンと呼ぶべきものでも、慣例的にクリップと呼ばれる場合がある。『Apex Legends』に登場する銃器は、主に箱型のマガジンを使っており、ゲーム中でもマガジンと表記されている。 

同スレッドに寄せられるコメントも「まったく一般人は」といった、冗談めかしたものが中心だったが、開発者が登場し雰囲気が一変する。RedditユーザーAmusedApricotこと、『Apex Legends』ゲームデザイナーのBocek氏が“クリップ問題”についての見解を投稿したのだ。 
 

開発者による回答と分析 

Comment
byu/jrrswimmer from discussion
inapexlegends

 
Bocek氏は「修正しようとしてもすり抜けちゃうんだよね。実のところ……ゲームのコードやスクリプトではクリップと記述されてるんだ」として、マガジンが正しい表記ではあるものの、開発上はクリップという表記を使っていることを明かした。 

投稿を受けて驚いたスレッド設立者は「なんてこった、これまでずっと騙されていたなんて。本当にマガジンじゃなくてクリップなんですね。それにしても、まさか開発者の目に入るとは」と返信し、それを受けてBocek氏は「マガジンが正しいよ!」と断言。クリップはあくまでも開発陣が内部的に使っている表記なのだ。 

Bocek氏による投稿の中では「なぜ表記の間違いが起こるのか」という具体的な話も飛び出した。同氏によれば、パッチノートというのは実際にプログラムに行われた変更をまとめた文章を、わかりやすく翻訳したものだそうだ。マガジンサイズについては内部的に“ammo_clip_size(弾薬クリップサイズ)”という名前になっているため、時たま内部名がそのままパッチノートに反映されてしまうとのこと。 
 

 
また、プログラム内部の名称を変える提案について、Bocek氏は賛意を示しつつも、「内部名称を全部修正することにはとんでもない労力がかかり、大きなリスクもあるんだ」として、小さく思える変更にも高いハードルがあることを示唆した。 

またBocek氏は、表記と内部名が食い違っている例として、スピットファイアの内部名“mp_weapon_lmg”、フラットラインの内部名“mp_weapon_vinson”などを挙げた。開発初期の仮名称が変更されず、現在のプログラム内部にも残り続けているそうだ。 
 

“ボセックボウ”誕生秘話 

 
『Apex Legends』新シーズン「英雄の軌跡」にはBosek(ボセック)氏の名前を冠した「ボセックボウ」の登場が予定されている。スレッドでは同武器について、「名称が後から変更できないから、新武器に自分の名前をつけたのでは」とのユーザーからの意見も出た。それを受けてBosek氏は、実際に名付けがどうおこなわれたのかを語っている。 

Bosek氏は実際に、プロトタイプ開発の現場に関わっていたとのこと。開発チームは、再収録や追加が難しいキャラクターボイス収録にあたって、新武器の名前を急いで決定しなければならなかったそうだ。同氏はライターに協力を仰ぎ、“SEK-197”で「ボウ(弓)とSEK=ボウセック」といったダジャレのような案や、“Hornet(ホーネット)”といったシンプルな名称などを考えていたらしい。 

しかしながら、当時のリードライターがBosek氏の名前をそのまま使うと決断。Bosek氏は「気に入らなかった時のために“Hornet”でも録音しておいた方がいいのでは」と提案したものの、最終的にはボセックボウとして世に出ることになったそうだ。同氏は自分の名前が使われることについて、本当に誇りに思うとの気持ちを綴っている。 
 

 
加えてBosek氏は、ボセックボウについて「沢山の開発者の素晴らしい仕事によって作られた」として、自分の名前だけが目立ってしまうことには不公平さを感じてしまうと述べている。弓という新しいメカニズムの武器は、制作に多大な労力がかかったそうだ。また同氏は、同じく「クレーバー50」として武器に名前を冠されている開発者のErik Kraber氏から「武器名として自分の名前を聞くのはいつまで経っても慣れないよ」との言葉をもらったそうだ。 

ユーザーの些細な投稿が反応を呼び、開発者の裏話まで飛び出した今回の出来事。思わぬところで興味深い話が聞けることとなり、ファンにとっては嬉しい一幕だったのではないか。ボセック氏の名前を冠したボセックボウも登場する『Apex Legends』新シーズン「英雄の軌跡」は、現地時間で5月4日から開幕予定だ。