『サイバーパンク2077』開発者の「開発の難しさを語る様子がおかしい」と一部で話題に。しかし実際は普通
リリース後、波乱と議論を巻き起こした『サイバーパンク2077』。さまざまな意見を浴びた同作のリードクエストデザイナーPaweł Sasko氏(以下Sasko氏)が、同作をプレイしつつ開発当時を振り返るTwitchでの生配信で、開発側としての胸中を語った。映像が一部切り取られ同氏の様子がおかしいのではないかと一部で話題にもなっているが、実際のところはそうではない。プレイヤーからは見えづらい、ゲーム制作の裏側の努力を感じさせる内容となっている。
『サイバーパンク2077』はリリース当初、セールスとしては好調な滑り出しを見せる一方で、バグの多さやパフォーマンスの問題で批判を受けた。開発/販売元のCD PROJEKTは発売から間もなく返金対応に動き、PS4版のPSストアからの一時取り下げなどもおこなわれていた。
同スタジオは、アクションRPG『ウィッチャー3 ワイルドハント』などの開発で好評を博しており、後続の新規IPとなる一人称視点RPG『サイバーパンク2077』も、リリース前から大きな注目と期待を集めていた。同作は柔軟なキャラクタービルドや、インタラクティブな物語などを野心的に盛り込んだ大作になる、とリリース前から宣伝されていた。そういった宣伝による期待と実際の品質の差も、大きな批判を受けた理由のひとつだろう。
なお、アップデートによってバグやゲームバランスは継続的に改善されている。記事執筆現在のSteamユーザーレビューは77%の「ほぼ好評」となっている。とはいえ、レビュー内容には物語を重厚だと褒めるもの、街の作り込みが物足りないと批判するものなどがあり、いまだ賛否が分かれているのが現状だ。
そういった複雑な背景を持つ作品『サイバーパンク2077』にてリードクエストデザイナーを務めた人物Sasko氏が、Twitch配信で開発者としての胸中を語った。Sasko氏は『サイバーパンク2077』を、コメンタリーを交えつつプレイするという配信を行っており、放送終了前に視聴者との質疑応答の時間を設けていた。
質疑応答の中でSasko氏は、『サイバーパンク2077』の問題について「何があった?」と疑問を投げかける人々に対する自身の見解をのべた。「何があったかというと、僕たちは新規IPに挑戦したんだ。とても野心的な目標を目指していたし、僕たちは可能な限り実現に努めた」と説明するSasko氏。
同氏は続けて「僕はプレイヤーやジャーナリストたちが、このゲームを作るのが実際どれだけ大変だったか、わかっていない気がするんだ」と、開発の苦労が伝わらない歯がゆさを言葉にする。一方で「だからといって、もっと評価してほしいというわけではないんだ。プレイヤーがきちんと動くちゃんとしたゲームを求めるのは正しいことだから」とのべ、プレイヤーを批判する意図がないことを示した。
開発者は、ゲームの完成度についてユーザーから責任を問われることも多い立場だ。しかし開発計画やリリース時期の決定には経営判断が入ってくることもあり、開発チームのコントロールが及ばない部分もあるだろう。『サイバーパンク2077』についてはCD PROJEKT設立者のひとり、Marcin Iwiński氏 がコンソール版の品質に関する謝罪とともに、開発チームに責任はないとする声明を出している(関連記事)。
また、Sasko氏としては、開発チームの努力、そして『サイバーパンク2077』開発のハードルがとても高かったということを、視聴者にただ知っておいてほしかったと語っている。また、同氏は『サイバーパンク2077』にはまだ沢山の改善すべき点があると言及。アップデート配信で改善に取り組んでおり、今後も取り組み続けるだろうとしている。
Sasko氏の語りを受けて海外掲示板Redditの『サイバーパンク2077』コミュニティ、/r/cyberpunkgameにスレッドが立てられた。「(Sasko氏が)ほとんど泣きそうになっている」「彼の心の中で何かが壊れた」と題しており、先述したSasko氏の回答箇所が動画として引用されている。
たしかにやや声がうわずったような語り口に聞こえる。しかし、筆者が確認したところ、同氏は配信を通して、引用部分とあまり変わらない調子だと見受けられた。引用された部分の前後でも、視聴者に対しにこやかに語りかけている。引用部分においてヒートアップしているのは確かだが、泣いて訴えているというほどではなさそうだ。
同スレッドに対するコメントでも、題名は誇張しすぎだとしてSasko氏に対して擁護的な意見が目立つ。たしかに、BGMを含めてRedditスレッドが同氏を“ドラマ”に引き込みたい意図があることは否めない。実際にTwitch配信されていた際に寄せられたコメントもファンからの温かい言葉が中心で、『サイバーパンク2077』が堅実にファンベースを固めていることがうかがえる。
Sasko氏が伝えたとおり、ユーザーが製品に最低限の品質を求めることは当たり前の権利だ。『サイバーパンク2077』はリリース直後、その品質に届いていなかったことで批判を浴びた。Sasko氏の言説は、そういった批判の裏側でゲーム作りに情熱を注いでいる人物の、貴重な生の声ではないだろうか。
開発者の意見としては、CD PROJEKT REDに所属する榊原寛氏も、Twitter上でゲーム開発特有の難しさについて言及していた。一連のツイートで同氏は、ハードの性能を活かし、少しでもゲームの品質を向上させるための涙ぐましい努力について伝えている。
CD PROJEKTの発表したロードマップによれば『サイバーパンク2077』は今後も定期的なアップデートを行う予定とのこと(関連記事)。今後同作がさらに磨き上げられていくことに期待したい。