『ドラゴンクエスト3』ファミコン版なんでもありRTAが加熱。『ファイナルファンタジー』『ドクターマリオ』『星のカービィ 夢の泉の物語』を使った新チャート

ファミコン版『ドラゴンクエスト3(以下、DQ3)』のなんでもありRTAが、一部で加熱しているようだ。2020年末のRTAイベント「RTA in Japan」では、ホットプレートを使ってファミコン本体を温める異様な光景が注目を集めたが、現在主流となっているのは複数のカセットを差し替えるチャート。

ファミコン版『ドラゴンクエスト3(以下、DQ3)』のなんでもありRTAが、一部で加熱しているようだ。2020年末のRTAイベント「RTA in Japan」では、ホットプレートを使ってファミコン本体を温める異様な光景が注目を集めたが、現在主流となっているのは複数のカセットを差し替えるチャート。同チャートにて、4月4日にばくぜろ氏が7分10秒を達成すると、4月6日にはひっしー氏が6分3秒を記録。任意コード実行によるファミコン版『DQ3』のスピードラン記録が次々に打ち立てられている。
 

 
現在採用されているチャートは、ピロ彦氏の考案した「DQ3FCカセット差し替え・電源ON/OFF・任意コード実行なんでもありRTAチャート」と呼ばれるものだ。事前に用意したセーブデータの利用などを除いて、バグや任意コードの実行、互換機の使用などに制限はなく、とにかく大魔王を倒したと表示されるまでを競うRTAである。同チャートの序盤は、ファミコン本体と『DQ3』のカセット、複数のファミコンカセットが卓上に置かれているだけであり、まずは通常のゲームプレイが展開されていく。ゲーム開始時から、いきなりホットプレートの上にファミコン本体が鎮座していたホットプレートチャートと比べると、画面がおとなしい。
 

 
目に見えておかしなことが行われるのは、2分が経過したあたりからだ。セーブ直後の「りせっとをおさずにでんげんをきるとぼうけんのしょがきえてしまうばあいがあります!!」と表示されている画面で、リセットボタンを押さずに電源を切り、すかさずカセットを『DQ3』から『ドクターマリオ』へ差し替え。『ドクターマリオ』を一瞬起動した後、今度は『星のカービィ 夢の泉の物語』をセットし、セーブ選択画面が表示されたところで抜き、もう一度『ドクターマリオ』のカセットを差すと、今度は2人用モードの設定を変更してリセット。そのまま1人用モードをレベル20で開始した直後に『ドクターマリオ』を引き抜き、『DQ3』をセットすると、タイトル画面をスキップして王様の前にいる状態が映し出された。パーティーメンバーの名前が画像に化けており、次のレベルに必要な経験値が膨大な数値になっている。

さらにその状態でセーブを行い、今度は『ファイナルファンタジー』をプレイ。数歩歩いた後に強引にカセットを引き抜き、再び『DQ3』をセットすると、少々崩れた状態で画面が表示されており、そのままアイテムの整理やセーブデータの複製を行うことで、冒険再開時に王様から大魔王を倒していた事実が明かされ、唐突にエンディングを迎えた。『ドクターマリオ』『星のカービィ 夢の泉の物語』『ファイナルファンタジー』のカセットを矢継ぎ早に抜き差ししていただけで、『DQ3』の魔王とは会ってもいないが、何が起こっていたのだろう。
 

 
本RTAチャートは、電源ON/OFFバグを使用した、任意コード実行によりゲームクリアを目指すものである。ピロ彦氏の解説記事によると、電源ON/OFFバグとは「りせっとをおさずにでんげんをきるとぼうけんのしょがきえてしまうばあいがあります!!」の画面で電源を切り、入れ直すとメモリがぐちゃぐちゃになるバグだという。初期版『DQ3』では、正しい手順で電源を切らないことで、バッテリーバックアップ上のとあるフラグへの書き込みが失敗し、本来タイトル画面へ偏移するはずのところで全滅時の復帰処理が行われる。ファミコン版『DQ3』では、冒険の書選択時にメモリの初期化が行われており、タイトル画面がスキップされることで、揮発した本体メモリのまま冒険が再開し、バグが発生するわけだ。また、ファミコン版『DQ3』にはいくつかのバージョンが存在するが、バージョンによってセーブに使われるバッテリーバックアップの構成が異なっており、電源ON/OFFバグはこの構成の違いにより後期版以外で発生するそうだ。

「DQ3FCカセット差し替え・電源ON/OFF・任意コード実行なんでもありRTAチャート」では、まず『DQ3』側でタイトル画面へ偏移しないように準備。ほかのタイトルを起動し、メモリが揮発しないよう電源を一瞬だけ切ることで、最終的に任意コードの実行が行われている。具体的には、『星のカービィ 夢の泉の物語』のメモリ値を『ドクターマリオ』へ持っていき、『DQ3』側で調整。こうすることで、まずはバグアイテム「4レーヘ」使用時に実行されるセーブデータ上のアドレス$6167に、コントローラーの入力が反映される6C 14 00を書き込んでおく。続いて、「4レーヘ」を取得するべく『ファイナルファンタジー』を使用。『DQ3』でアドレス$0781に、アイテム欄の並びにより冒険の書のラスボス撃破フラグが立つコードを書き込んでおき、「4レーヘ」を捨てた際にコントローラーで$0781を実行するコマンドを入力しつつリセットすることで、大魔王が倒されたことになっている。なお、詳細はピロ彦氏によるチャート内に記載されている。
 

 
3月27日から行われたRTAイベント「TAS好きの人たちがRTAでわいわいする3」内で、ピロ彦氏が新しいチャートを披露。次々にカセットを差し替えてエンディングを呼び出す衝撃的な映像がきっかけとなり、なんでもありRTAの更新ラッシュが行われたようだ。なお、ばくぜろ氏により一発成功の記録が打ち立てられたことで、ピロ彦氏はさらなる新ルートを示唆している。今度は、殻割りした『DQ3』と、ドライバーを使用した奇想天外なRTAが行われるようだ。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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