ゲーム開発者たちが、“こっそり仕込んだイースターエッグ”を自分で明かしまくる。『Cuphead』の月野うさぎから『サイバーパンク2077』の内輪ネタまで


ゲームなどにおいては、制作者が作品にこっそり仕込んでいた要素のことを「イースターエッグ」と呼ぶことがある。キリスト教の復活祭(イースター)にておこなわれる、彩色した卵を隠し子供が探す遊びに由来するそうだ。

『Disc Room』や『Minit』などを手がけたインディー開発者Jan Willem Nijman氏は今年の復活祭にあたる4月4日、「自らのゲームに仕込んだ最高のイースターエッグ」を開発者仲間に募集。多数の返信が寄せられているため、その中からいくつかピックアップして見ていきたい。


Avalanche Studios GroupのシニアナラティブデザイナーAcke Hallgren氏は、かつてUbisoft傘下のMassive Entertainmentに勤めていた際のエピソードを披露。『ディビジョン』のマップ内に、「Teenage Mutant Ninja Turtles」のタートルズたちの武器を配置したそうだ。同氏はレベルデザイナーだったが、それらの武器を自らモデリングすることで、こっそり仕込むことに成功したとのこと。

これに対してNijman氏は、かつて手がけたローグライク要素が人気を呼んだアクション『Nuclear Throne』のイースターエッグについて返信している。同作にはPizza Sewersと呼ばれる隠しエリアが存在し、ここでは4人組の亀のキャラクターが登場。上記のものと同じく「Teenage Mutant Ninja Turtles」へのオマージュとなっている。


Respawn EntertainmentのワールドアーティストDerek Bentley氏は、EAに所属していた際に携わった『Plants vs. Zombies Garden Warfare』シリーズには、多数のイースターエッグが存在するとコメント。そのひとつとして、マップ内に「HAM SHOT FURST」と描き込んだとしている。これは、映画「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」にて、ハン・ソロが賞金稼ぎのグリードを撃ったシーンが何度か修正されたことで論争になっている、「Han shot first(ハンが先に撃った)」にちなんだ言葉だ。

また、同僚のアーティストGavin Yastremski氏は『ゼルダの伝説』関連のネタを仕込むことが好きだったそうで、『Plants vs. Zombies Garden Warfare』には、『ゼルダの伝説 風のタクト』のプロロ島風のシルエットを背景に仕込んだそうだ。


SIEのサウンドデザイナーAlex Previty氏は、Insomniac Games時代に手がけた『Marvel’s Spider-Man』のイースターエッグを披露。同作の舞台であるマンハッタンには複数のピザ屋が存在するが、その中のいくつかに立ち寄ると楽曲「フニクリ・フニクラ」が流れるのだという。これは2004年発売の『スパイダーマン2』に収録されていた、ピザ配達ミッション時のBGMへのオマージュだ。

インディー開発者のDavid Wehle氏は、2018年にリリースしたキツネが主人公のアドベンチャーゲーム『The First Tree』には、まさにイースターエッグそのものが登場すると紹介している。同作の最初のステージには複数のウサギがおり、これにすべて触れると巨大なウサギが出現。その足元に虹色に輝く卵があるのだ。さらに、その卵に触れると開発用のテストステージに転送されるという。ちにみにこのイースターエッグは、同作の実績/トロフィーの解除条件にもなっている。


『Cuphead』の背景を担当したイラストレーターのCaitlin Russell氏は、ボスのひとりチップス・ベティガンのステージの背景に、「セーラームーン」の主人公・月野うさぎと、恋人の地場衛を仕込んでいたことを明かした。もっとも、カジノをテーマにしたこのボスステージの背景に描かれている人物は皆ガイコツ姿であり、「セーラームーン」のキャラクターだと気づくのは難易度が高そうだ。よく見ると、女性のドレスのデザインが似ている。

『HOMEFRONT the Revolution』では、ゲーム内のアーケード筐体にて『TimeSplitters 2』をプレイできることが知られているが、これはリードプログラマーMatt Phillips氏が、ネイティブ4K対応で移植して仕込んだものだという。同氏は、『HOMEFRONT the Revolution』の協力プレイモード上で動作するよう移植したと説明。そして、もし誰かが同モードのとあるマップのアーケード筐体を複数ハックできたなら、マルチプレイメニューが起動するだろうとしている。ただ、専用サーバーが存在しないため、実際にプレイできるかどうかは分からないとのこと。

Naughty Dogにて『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』や『アンチャーテッド 古代神の秘宝』にアニメーターとして携わったJonathan Cooper氏は、かつてUbisoftにて手がけた『アサシン クリード』シリーズに関するイースターエッグを両作に仕込んだという。特定の高台に登ると、ビュー・ポイントでシンクロした際のように、音楽と共にカメラが周囲を見渡すように動くそうだ。特に『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』では、数秒間一切操作しない必要があるため、このイースターエッグを見つけた人は少なかったとのこと。

*『ジャストコーズ4』に仕込まれた、『Getting Over It with Bennett Foddy』との公式コラボイースターエッグも以前話題となった。


343 IndustriesのマルチプレイデザイナーPatrick Wren氏は、『Halo 5: Guardians』のミッションEvacuationに、“Haloカートレーシング”を仕込んだが、まだ誰も発見していないと明かしている。詳細は不明だが、4人協力プレイが発動の必須条件となっており、レースに勝利したプレイヤーには強力な武器が与えられるという。

未発見のイースターエッグとしては、The Game BakersのクリエイティブディレクターEmeric Thoa氏も投稿。昨年12月に配信した『Haven』には、ゲーム画面をワイヤーフレームのみにしてプレイできるモードが隠されているそうだ。同氏は、そのアンロック条件はまだ誰も発見していないようだと述べている。


イースターエッグに多いパターンのひとつというと、開発者の身内ネタだろうか。Bethesda Game StudiosのシニアUIプログラマーRicardo Gonzalez氏は、『Fallout 76』のターミナルに表示されるリストに自身のイニシャルを仕込んでいる。ゲームセンターのゲームのスコアアタックにて1位になれた試しがなかったため、代わりに同作のターミナルの1番目に自身を表示させたそうだ。

そのほか、『Mortal Kombat 11』に登場するターミネーターの勝利シーンでは、NetherRealm Studiosにて『Mortal Kombat 11』に携わったBrian Keschinger氏の姪の名前が、ターミネーターのスキャン画面に表示。また、CD PROJEKT REDのシニアレベルデザイナーMax Pears氏は、『サイバーパンク2077』に登場するアダルトショップの店名に自身の名前を入れたとのこと。理由は不明。

*『サイバーパンク2077』というと、CD PROJEKT REDのエンバイロメント・シティ・コーディネーター榊原寛氏がこっそり出演。


Jan Willem Nijman氏の呼びかけに対して集まったイースターエッグは、誰もが知るAAAタイトルから、個人開発のインディーゲームのものまで多岐にわたる。そして、そうしてネタを仕込むことを皆楽しんでいることが印象的だ。本稿に取り上げたもの以外にも、多数のイースターエッグが投稿されているため、興味のある方はTwitterの該当スレッドをチェックしてみてはいかがだろうか。