『レッド・デッド・リデンプション』シリーズが大学の教材に。メキシコ革命やピンカートン探偵社など、ギャングに学ぶアメリカ黎明史


レッド・デッド・リデンプション』(以下、RDR)シリーズがユニークな場面で用いられているようだ。アメリカの歴史学者Tore Olsson氏は、テネシー大学で教鞭をとる人物。同氏が来期に開講する講義のタイトルは「HIUS 383: Red Dead America(レッド・デッド・アメリカ)」。その名のとおり、『RDR』および『RDR2』を題材にアメリカ史を辿るクラスになるという。『RDR』シリーズは、20世紀初頭のアメリカを描いた作品群。初代『RDR』は1910年以降、『RDR2』は1899年を舞台とする。いずれも開拓時代の末期に該当し、法執行官が無法者を一掃し始めたギャング斜陽の日々が描かれている。 
 

 
Olsson氏は同シリーズについて「しばしば歴史的に不正確」としつつも、作品を通じて1899〜1911年における諸問題に触れることができるとしている。たとえば「フロンティア神話とその長い予後」というテーマは、『RDR』シリーズの根幹に触れる主題といえるだろう。また「メキシコ革命とその国境を越えた影響」については初代『RDR』のメキシコ編で垣間見ることができるし、「ピンカートン探偵社による法執行機関の民営化」は『RDR2』の宿敵と深い関わりをもつ議題だ。このほか経済・政治など多岐にわたるテーマで授業が展開されることが明かされている。 

教育現場でゲームが用いられることは、今や珍しいことではない。たとえば『マインクラフト』では学校での利用を前提に設計された『Minecraft:Education Edition』が存在。またハイエンド系ゲームでは『Half-Life: Alyx』にて、作中で拾えるマーカーで板書をしながらリモート授業をおこなった教師が話題となった(関連記事)。ただしこれらの例は、ゲームのインタラクティブ性を教育目的に転用したもの。一方『RDR』の活用は、ゲーム内で描かれる社会描写に着目したという点で珍しいケースといえる。モダンなゲームの作り込みや歴史考証が学術的な目的に値するレベルまで到達した証左ともいえるかもしれない。同様の例としては、『アサシン クリード』シリーズが古代エジプトやギリシャについて考証した資産を活用した「ディスカバリーツアー」も似た方向性を示しているといえる。 
 

『アサシン クリード オリジンズ』ディスカバリーツアー

 
PC版『RDR2』は今年頭、Steamアワード2020にて「ゲームオブザイヤー」および「優れた物語ゲーム」部門を受賞(関連記事)。Steamでの2020年総収益年間トップ100にてプラチナ入り(1位〜12位)を果たすなど、オリジナル版から数年来のタイトルながら根強い存在感を示し続けている。Olsson氏のクラスの定員は35名だが、希望者多数の場合は拡大の可能性もあるという。開講は8月とのことで、何らかのかたちで授業内容が学外のゲームファンにも公開される可能性に期待しておきたいところだ。