サービス縮小バトロワ『Darwin Project』開発元幹部へのハラスメント告発報道。美しい新作が発表されるもセクハラ・パワハラが横行と指摘
バトルロイヤルゲーム『Darwin Project』を手がけたScavengers Studioにおいて、共同設立者によるパワハラがあったとして告発がおこなわれている。海外メディアGamesIndustry.bizが1月26日、同スタジオに在籍中および退職済みの9名のスタッフの証言をもとに報じた。
Scavengers Studioは、カナダ・モントリオールに拠点を置く40人ほどの規模のインディースタジオだ。リアリティ番組形式のユニークなバトルロイヤルゲーム『Darwin Project』を手がけ、現在は自転車ロードトリップゲーム『Season』を開発中である。その同スタジオの共同設立者であり、クリエイティブ・ディレクターのSimon Darveau氏などに対してパワハラの告発があった。女性差別的なハラスメントも含まれていたとしている。
9人の証言者のほとんどは、Scavengers StudioにはSimon Darveau氏主導による男性優位な文化があったと証言。女性スタッフは、Darveau氏やほかの男性スタッフらから差別的な扱いやセクハラを受けていたという。たとえば、ミーティングやWeb上での打ち合わせの中で、自らの仕事について説明してもわざと理解を示さなかったり、外見や服装について不適切な発言をしたりなど。
また、開発中の新作『Season』の主人公アビーについて、ギターを弾けるようにしたらどうかと提案すると、「女性のアビーにはギターは複雑すぎるだろう。代わりにウクレレにすれば良い」と返されたそうだ。女性差別の対象がゲームキャラクターまでに及んでおり、問題の根深さが伺える。
スタジオ内での大きな出来事のひとつとして、2018年中旬にある女性スタッフが突然辞職したことが挙げられた。CEOのAmélie Lamarche氏は、そのスタッフが疑惑の人Darveau氏と関係を持ったと、ほかのスタッフに辞職の背景を説明したという。Darveau氏とLamarche氏は恋人関係にあるとされ、その女性スタッフは自らの意思で辞めたわけではなく、報復として辞めさせられたのではとの疑いが持たれている。
また、Darveau氏はスタジオのパーティーで酒が入ると、女性スタッフの身体に触れることがよくあったそうで、証言者のひとりは当時のDarveau氏は「完全に捕食者モードだった」と述べている。また、Darveau氏も自身を「発情した犬」であると表現し、自分ではコントロールできないと酒のせいにする発言していたという。そうしたセクハラを受けて、スタジオを去る女性スタッフもいたとのこと。
この件をきっかけに、スタジオの上層部が外部の人間による調査を実施。以降、同スタジオではイベントでのアルコールの提供を減らし、Darveau氏も仕事中には酒を飲まないよう態度を改めたそうだ。
Simon Darveau氏に対しては、パワハラの疑いも向けられている。証言によると、同氏はほかのスタッフの前で、あるスタッフについて「能力がない」「解雇する」などと述べることがあったという。スタッフを会議室に呼び、Lamarche氏と共に外に聞こえるくらい怒鳴り散らすことも複数回あり、直後に辞めたスタッフもいるそうだ。
また、昇進や昇給について明確な基準が示されず、さらに約束されていた報酬を要求しても、仕事ぶりが十分でなかったと拒否されたこともあったとしている。証言者の多くは、Darveau氏はスタッフを“使い捨て”のように見ていたと感じたとのこと。一方で、スタジオに長く在籍しているプログラマーらは、Darveau氏に重用されていたそうだ。もっとも、それを良いことに彼らは、QA(品質管理)スタッフやコミュニティマネジャーを見下すような言動がよくあったという。
*『Darwin Project』は、今年1月に一部を残してサーバーを停止。
Darveau氏について証言者からは、カリスマ性のあるエネルギッシュな人物であると評する意見も出ている。ただ、同時に独善的な面も強く、『Darwin Project』が最終的にサービスを大幅に縮小する結果となったのは、ひとのアドバイスを聞かない同氏の性格が原因だという指摘も。同氏は、新作『Season』の開発には携わる予定ではなかったが結果的に参加することとなったそうで、スタジオ内ではゲームの方向性がブレることにならないか懸念されてるようだ。
今回の告発を受けてScavengers Studioは声明を発表。今後はAmélie Lamarche氏の指揮のもと、ハラスメント防止のためのポリシーを制定し、スタッフ研修も実施。また、これまで適切に対処できていなかった人事業務には専門スタッフを雇い、職場環境を改善させる取り組みを開始したことを明らかにした。一方で、GamesIndustry.bizが報じた証言内容には誤りも含まれていると指摘。プライバシーの問題があるとして、具体的にどの部分を指しているのかは述べなかった。
ほかの業界と同じく、近年はゲーム業界でもハラスメント行為についての告発が相次いでおり、今回のScavengers Studioの一件もそのひとつに数えられる。カリスマ的クリエイターが暴走する例はこれまでにもあり、たとえば『スカルガールズ』の開発元Lab Zero Gamesの場合は、主要スタッフが辞職し当人が孤立する結果に(関連記事)。Scavengers Studioでは、組織として立て直す道を選択したようだ。
なお、同スタジオが手がける新作『Season』はPC/PS5向けに開発中。発売時期は未定である。