Behaviour Interactiveは1月22日、『Dead by Daylight』にて色覚ハンデを負った人に向けたモードを実装すると発表した。開発者のツイートにて明かされている。その背景には、長らく機能を求めて戦ってきたコミュニティの声があった。
いうまでもなく、『Dead by Daylight』において視覚情報は不可欠だ。たとえば殺人鬼としてプレイする際、相手を追跡するのにもっとも効果的なのが地面に残った血のような「傷跡」を辿ることだ。生存者が通った跡は8秒間、赤い傷となって表示されるため、後を追いかけていけば生存者を発見することができる。また逆の立場でも、瀕死状態の生存者や生存者が吊られているフックは赤色に見えるなど、色によってオブジェクトを識別することは不可欠といえる。
ところがこれらの視覚情報は、コミュニティの一部から批判を受けていた。特定の色を認識できない、色覚ハンデをもった人たちにとって一連の要素は非常に見づらいのだ。そうしたプレイヤーにとって『Dead by Daylight』をプレイすることは不利な状況となる。さらに1月13日に発表されたパッチノートがさらなる議論を招いた。新たに実装されるHUDが、特定の色覚をもたない人には非常に見づらいことが判明したのだ。かねてからの要望が聞き入れられないばかりか、悪化させるかのような対応が反発を招いた。コミュニティにはゲームプレイのボイコットを呼びかける者もいれば、色覚オプションの実装を要求して「毎週クソコラを投稿する」ユーザーも存在。今週で70週目であった。
さらに批判を加熱させたのが、開発者のひとりが個人での配信中に失言したひとことだ。ゲームデザイナーのAlmoことEthan Larson氏は自身のTwitchストリームにて、「色覚調整について毎回ごちゃごちゃ言ってくる人たち」について言及。「本当に面白くない」「何百万回と聞いているし、我々にせがみ続けても何も変わらない」「実行する時間があるとき、または実行する必要があると誰かが判断した場合にやる」などと発言し、色覚にハンデがある人を軽んじた言葉だとして大きな反発を招いた。
状況が動いたのは日本時間で1月21日深夜のこと。ビデオゲームのアクセシビリティ向上を目指す非営利団体The AbleGamers CharityのCOO、Steven Spohn氏のもとにユーザーからリプライが送られた。『Dead by Daylight』コミュニティにおけるLarson氏の一件についてコメントを求められると、Spohn氏は引用リツイートにて「悲しいことです」とコメント。「ユーザーからの声に疲れているなら、(開発者は)ゲームができないために疲れているユーザーのことを考えてみてください」と遺憾の意を表し、事態をゲーム業界全体に議論を知らしめることになった。
すると、Spohn氏のツイートに対し『Dead by Daylight』の公式アカウントが反応。まずは一連の騒動により不快感を抱いたユーザーへ謝罪し、 Larson氏の発言がチーム全体の意思ではない旨を強調した。同時に「こうしたかたちでの発表は望んでいませんでしたが、今が適切な時期だと思います」として、現在ゲーム内にて色覚オプションの実装に向け準備が進んでいることを発表。同機能はここ数か月で開発されてきたもので、次のメジャーリリースに取り入れたいとしつつ、具体的な実装の日程についてはいまだ明言できないとしている。続くツイートでは、当初懸念されていた新装HUDでの色覚問題についても対応することも発表した。ほか、以前より指摘されていた「傷跡」表示の改善案を、決定版ではないとしながらも公開。「赤色/青色/緑色が認識できない人」それぞれに向けて、カスタマイズ可能な表示の仕方を提示している。
近年、大作ビデオゲームにおけるアクセシビリティ配慮はスタンダードとなりつつある。とりわけ、ゲームというメディアが視覚に依存した娯楽である以上、色覚にハンデを負う人に向けた設計は不可欠だ。『Dead by Daylight』はユーザーベースの大きい作品であるだけに、コミュニティの声を受けて改善が約束されたのは大きな一歩といえるだろう。まだ正式なリリース日は不明ながら、より多くのプレイヤーがフェアに本作を楽しめる日を期待したい。
*「クソコラ」投稿も最終回を迎え、晴れてドワイトを追いかけている。