Webブラウザ「Opera」で知られるソフトウェア会社Operaは1月20日、ゲームエンジン「GameMaker Studio 2」を手がけるYoYo Gamesを買収したと発表した。買収金額は約1000万ドル(約10億3800万円)。また、YoYo Games側も今回の買収について報告している。
YoYo Gamesは、2Dゲームに特化したゲームエンジン「GameMaker Studio 2」などで知られるソフトウェアメーカーだ。PCからコンソール、モバイルまでサポートし、インディー開発者に幅広く利用されている。採用タイトルは、『UNDERTALE』や『Risk of Rain』『Downwell』『Katana ZERO』『Spelunky』『VA-11 Hall-A』『ホットライン マイアミ』など数え切れない。同社は、これまでオンラインギャンブルゲームメーカーPlaytechの傘下にあったが、先日より売却が報じられており、今回Operaによる買収が正式発表された。
OperaというとWebブラウザ「Opera」で有名であるが、近年はゲーム分野にも進出。2019年にはゲーマー向けをうたうWebブラウザ「Opera GX」をリリースしている。ゲームプレイや実況配信などをおこないながら利用することを想定し、ブラウザのCPU利用率やメモリ使用量などのリソース管理、Twitchの統合、Discordのネイティブサポートなど、独自の機能を多数持つWebブラウザだ(関連記事)。2020年12月時点で月間アクティブユーザーは700万人を突破し、前年比350%増の成長を記録しているという。
今回の発表にてOperaは、人々はゲームをプレイするだけでなく、自ら開発しリリースするような時代になってきたとし、GameMaker Studio 2は誰でもゲーム制作を始められる、クラス最高の開発環境であると評価。そうした裾野の拡大は同製品が持つビジョンでもあり、同じ分野で成長を見ている両社が組むことによって、そのビジョンの実現を加速させることができるとしている。Operaは、ゲーミングは成長分野であると位置づけ、Opera GXを含む新部門であるOpera Gamingを設立。その収益化の拡大を目指す上で、YoYo Gamesの買収は同部門の基盤になるとのことだ。
Operaのブラウザ担当EVPのKrystian Kolondra氏は、ゲームとWebブラウザはハードウェアと帯域幅のリソースを食い合う関係にあったが、Opera GXによって、その競合に対処してユーザー体験を向上させることは可能であると証明できたと述べる。そして、YoYo Gamesが持つ開発の知見やゲームスタジオとの繋がりがOpera GXの新たな基礎を築くことになるとし、Opera Gamingの収益面だけでなく、ゲームとブラウジングを統合するユーザー体験の向上にも寄与するだろうとした。
またKolondra氏は、両社の相乗効果によってOpera GXをさらに成長させると共に、GameMakerの成長も促進させ、初心者がより手に取りやすい環境を作っていくともコメント。また、YoYo GamesのゼネラルマネジャーStuart Poole氏は、GameMakerを改善するための大きなプランを常に持っており、Operaの傘下に入ることによって、その実現が早まることに期待する旨を述べている。
なお、YoYo Gamesは買収後も引き続きスコットランド・ダンディーを拠点にし、ゼネラルマネジャーのStuart Poole氏やテクニカルリードのRussell Kay氏はその職にとどまるとのこと。同社の体制は買収後も大きな変化はないようで、この点に安堵するユーザーが見られる。また同社は、GameMakerをOpera GX向けに特化させるようなことはしない旨のコメントもしている。
ただ、新たな親会社となるOperaは、現在中国の奇虎360などの企業グループの傘下にあり、昨年にはアフリカなどで短期ローン事業を展開。それが不正な高金利でおこなわれていたのではないかと2020年に指摘されていたこともあり、今回の買収報道にはGameMakerユーザーから不安視する意見もあった(Reddit)。OperaおよびYoYo Gamesは、そうしたユーザーとも向き合いながら、今後どのように展開していくのか示していくことになりそうだ。