『ハースストーン』プレイヤーに突如として注目集まる。米連邦議会議事堂 侵入事件に思わぬ余波

 

歴史的大事件となった、米連邦議会議事堂への集団侵入。新年早々1月6日に発生したこの騒乱は、現地アメリカ・ワシントンを越え世界中の国々へ、民主主義の意義や社会階層の分断という概念のリアリティなどを今一度問いかけるインパクトをもたらした。この事件の中で死者が出てしまったこと。外には黒人差別の象徴たる絞首台が設立され、侵入者の中にはジム・クロウ法を想起する南軍旗を掲げている者もいたこと。クーデターまがいの運動がアメリカという国で発生したこと。さまざまな人間がさまざまな形で1月6日という日を捉え直すなか、この衝撃の余波を思わぬ形で受けた人物が1人。Trump氏である。ただし、ストリーマーの、Trump氏である。

Trump氏は、Twitchを主戦場としてゲームプレイのライブストリーミング活動を行っているストリーマーだ。中でもβテストの段階、黎明期より継続してプレイを行っている『ハースストーン』のゲームシーンにおいては、おそらく知らぬ者は居ないであろう知名度を誇る人物の1人である。現に2013年に開催された「最高のBlizzardコンテンツストリーマーに表彰と賞金を提供する」ためのイベント「Blizzard Stream Awards」では視聴者投票カテゴリのひとつ「Most Educational Stream」部門で1位を受賞。「Favorite Hearthstone Stream」部門では2位を受賞している。『ハースストーン』からDTCGの世界に足を踏み入れたプレイヤーの中には、彼が考案したプレイガイド「Hearthstone Trump Teachings」シリーズのお世話になった方もいるのではないだろうか。

そんなTrump氏を突如として襲ったのが、彼のTwitterアカウントに対するフォローの嵐。おそらく米連邦議会議事堂への侵入事件の折、民衆の扇動を行ったおそれがあるとして、第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ氏のTwitterアカウントが運営より一時運用停止処分を受けたことに由来していると思われる。大統領の支持者たちや賑やかしが、同じ名前をした彼のアカウントへ大挙して押しかけることとなった。

なおストリーマーである彼のTrumpというニックネームは「相手を負かして取って代わる」という意味のTrumpという動詞に由来する。当時不動産王の立場にいたドナルド・トランプ氏が司会として出演するリアリティ番組「アプレンティス」を視聴していたことの影響もあるとされている。なおトランプ氏の番組内における有名な決め台詞として「お前はクビだ! (You’re Fired! )」がある。

この事態を受けてTrump氏は「現在、私は多くのTwitterフォロワーを獲得しています。しかしあなたが探しているのは“元大統領”であって『ハースストーン』プレイヤーではないでしょう」とツイート。まだ任期が残るトランプ氏に対し元大統領と称しているところから、リプライでは「前のではなく、今のだよ!」と突っ込まれているが、現在の状況に対する皮肉という可能性もあるだろう。いずれにせよ、この『ハースストーン』ストリーマーは、奇妙な形で注目を集めることとなった。

ちなみに、Trump氏のストリームにおけるメインコンテンツのひとつとして、「新拡張の事前評価」というものがある。これは『ハースストーン』に限らずTCGというゲームカテゴリにおいて恒例行事と言っていい慣習であり、内容は至ってシンプル。発売前のカードを観て、強いか弱いか判断するというものだ。そしてTrump氏の予想は、大抵当たらないことに定評がある。直近では『ハースストーン』のシーンにおいて登場から現在まで猛威を振るい続けているデッキタイプ「進化シャーマン」を構成するパーツカード群に対し軒並み低評価を下していた。というよりシャーマンというヒーローが活躍出来ないと断じていた。

インフルエンサーとも言える影響力を持つTrump氏のコメントに対し「あー分かる」「そんなわけないだろ」と、彼らなりの評価軸を持って独自の見解を述べる視聴者たち。既にBlizzardからは本年度中に新規カードが追加されると発表済み。内容が明かされるころには、きっと今回の騒動は去っているはず。あちらこちらでプレイヤー達による事前評価が盛り上がることだろう。