レースゲーム老舗会社Codemastersの買収交渉に、EAも参戦するとの報道。Take-Twoとの買収合意発表後の新展開

 

今年11月、パブリッシャーのTake-Two Interactive Softwareが、イギリスに拠点を置くデベロッパーCodemastersを買収する方向で合意したことが両社から発表された。ただ、ここにきてパブリッシャーのElectronic Artsも、Codemastersの買収に興味を示しているという。英メディアSky Newsが報じている。

Codemastersは、『F1』『DIRT』シリーズなどのレースゲームで知られるデベロッパーだ。傘下には『Project CARS』シリーズの開発元Slightly Mad Studiosも存在する。かつては多様なゲームジャンルを手がけ、『Operation Flashpoint』や『Overlord』のような作品もリリースされたが、近年はもっとも得意とするレースゲーム開発に特化する方針をとっている。

Take-Twoは、『GTA』シリーズのRockstar Gamesや、アクションゲームからスポーツゲームまで幅広く手がける2Kなどを傘下に持つ大手パブリッシャーではあるが、現在は純粋なレースゲームは意外に少ない。同社CEOのStrauss Zelnick氏は、Codemastersを傘下に収めることで、同社のスポーツゲームラインナップを補完できるだろうと語っていた(関連記事)。

Take-TwoによるCodemastersの買収手続きは、2021年第1四半期内にも完了する見込みであると発表されている。ただ、Sky Newsがゲーム業界関係者から得たという情報によると、ここにEAが割って入ってくる可能性があるという。EAはCodemastersを買収するため、スイスの銀行大手UBSの協力を仰いでいるとのこと。

EAのレースゲームというと、『Need for Speed』シリーズが代表的なものとして挙げられ、同じくレースゲームである『Burnout』シリーズの開発元Criterion Gamesが、今後の作品を手がける予定(関連記事)。『Need for Speed』シリーズは、これまで幅広いレースカテゴリを許容してきたが、EAはこのジャンルのポートフォリオをさらに充実させたい狙いがあるのかもしれない。また、EAは2000年代初期にF1の公式ゲームをリリースしていたこともあり、2025年シーズンまでのゲーム化権を保有するCodemastersを買収すれば、ふたたびその分野での存在感を示すことができるようになる。


Codemastersに対し、EAがどのような金額を提示するのかは不明だが、Take-Twoよりも有利な条件を用意すると考えるのが自然だろう。Take-Twoは、Codemastersの時価総額を超える7億2600万英ポンド(約1010億円)での買収を持ちかけ経営陣間で合意。Codemastersの株主に対しては、現金とTake-Twoの普通株式の組み合わせでの株式買い取りを提案している。仮にEAがCodemasters買収に乗り出すとなると、Take-Twoも対抗策を打ち出すことになるかもしれない。Sky Newsによると、今週の金融市場の取引開始に合わせて、EAによる買収提案内容が明らかになる可能性があるとのことで、両社の動向に注目が集まる。

【UPDATE 2020/12/14 19:15】
Electronic Artsは12月14日、Codemastersの買収に向けた提案内容について、Codemastersの経営陣と合意に達したと発表した。EAは1株あたり604ペンス(約840円)という、Take-Twoが提示した485ペンス(約674円)を上回る買収条件をCodemastersの株主に対して提示。また、Take-Twoは現金とTake-Two株を組み合わせた提案をおこなっていたが、EAは現金のみで支払うという。買収手続きの完了は、2021年第1四半期内を見込んでいる。

EAからの買収提案に対しCodemastersのGerhard Florin会長は、EAとはレースゲームカテゴリをリードしたいという目標を共有しており、買収によってEAの知見やリソース、世界中への展開力を享受できるだろうとコメント。またEAのCEO Andrew Wilson氏は、Codemastersの優秀なスタッフや作品に対しては長年賞賛を送り続けてきたとし、両社が組むことで既存フランチャイズを成長させると共に、さらなるレース体験をファンに届けることができると述べている。

現時点では、CodemastersはEAからの買収提案を受けて、経営陣レベルで合意した段階であり、これはTake-Twoからの提案についても同様だった。今後Codemasters経営陣は、スタジオの価値をより高く評価したEAからの提案に応じるよう、自らの株主に対して推奨することになるものとみられる。