Steamにて「アダルト(成人指定)」タグの実装が実験中。フィルタリングと門戸開放の均衡を探る
Valveは12月10日、Steamの実験的機能を試すSteamラボにて新たな検索機能を追加した。ゲームを分類する「タグ」機能に、ある要素がこっそり付け加えられたようだ。
新たなブラウザでは、ゲームに付与されるタグが進化。より柔軟で細かな分類が可能となった。たとえばジャンルでいえば、従来同じ「RPG」として分類されていたものは「アクションRPG」と「ダンジョンクロウラー」に分けられる。また「ストラテジーRPG」としてカテゴライズされた作品は「ストラテジー」「RPG」両方のセクションで表示されるなど、柔軟な対応が可能となった。このほかにも、「SF」「ファンタジー」といった作品テーマ、シングルプレイヤーやCo-opなどのプレイヤーモードといったカテゴリでさまざまなタグ付けが可能に。ユーザーがより自身の好みに合ったゲームを見つけやすくする狙いがあると、デベロッパーブログで語られている。
一方、公式にはアナウンスされていないものの、密かにSteamラボにて加わったタグがある。カテゴリテーブルのスペシャルセクションに含まれた、「アダルト(成人指定)」タグだ。その名の通り、乳頭の露出や性行為の描写を“メインコンテンツ”に据える作品が並べられている。このタグは個人設定で、「成人指定(アダルトオンリー)の性的なコンテンツ 」の表示を許可している場合のみ表示可能となる。なお個人設定では、「成人指定(アダルトオンリー)の性的なコンテンツ 」とは別に「ヌードまたは性的なコンテンツ 」のみ容認する、といった細かな指定が可能。この場合、ポルノ目的のゲームは非表示となる一方で、『サイバーパンク2077』『デス・ストランディング』など単にヌード要素を含むゲームは閲覧することができる。
Steamではかつて、成人向け描写を“メインコンテンツ”に据える作品は、配信が禁止されていた。一応、規制された配信作品をダウンロードしたのち、外部パッチを入れることで成人向け表現を解禁することは可能でもあった。ただしValveとしては「黙認」しているに過ぎないというグレーゾーン状態が続いていたのだ。その曖昧さのため、外部パッチを利用していたあるタイトルが表現内容の変更を迫られるなど、許容の基準が定まっていないことに対し議論が浮上(関連記事)。結果的に2018年、荒らしや違法行為を除くあらゆるコンテンツを原則的に容認する方針を打ち立てた。
ただし解禁されたといっても、成人向け表現を含む作品を閲覧するには(1)Steamにログイン(2)「個人設定」にて成人向けコンテンツを表示すると選択(3)警告ページを承認する、という3段階のプロセスが必要。デフォルトではストア検索からも除外されるようになっており、該当作品に行き当たるまではあえて複雑な手順を要するフィルタリングがかかっていた。また“解禁”後も、未成年者もしくは未成年者を彷彿とさせるキャラクターの恋愛や性的シーンが含まれているアダルトゲームはオミット。また性的描写抜きでもNGとなったケースもあり、相変わらず判断水準がシビアな割に明示されないことや、クリアするために何が必要かを伝えるコミュニケーションがないことが、開発者たちの批判を招いていた(関連記事)。
一方、2018年から2019年にかけて徐々にアダルトゲームはSteamでの存在感を増してもいる。2019年6月の月間トップリリースでは、カスタマイズした女の子のキャラクターと恋愛・アダルト行為できるシミュレーション『コイカツ!/ Koikatsu Party』がランクイン(関連記事)。その後もアダルト要素を含む作品がトップセールス入りするたびにValveが紹介するかたちとなり、徐々に門戸が開かれてきた感がある。
今回のタグ新設については、まず先述したとおり「物語の一要素として性表現を含む作品」と「性表現を主題においた作品」の棲み分けが目的として挙げられるだろう。一方、セクシャルなゲームを求めるユーザーとしては求める作品によりアクセスしやすくなったともいえる。フィルタリングの壁は依然として強固にしながらも、需要のある顧客にはリーチしやすい。開発者にとっても販売しやすい環境になったといえよう。まだSteamラボでの実験段階に過ぎず、今後「アダルト(成人指定)」タグが本当に実装されるかは不透明。Steamが成人向けコンテンツにどれだけ胸襟を開くのか、ユーザー・デベロッパー双方にとって行末が気になるところだ。