Steamにて、姑息な販促をおこなう業者がいた。ゲーム説明文に2000以上のタイトルを列挙し自社ゲームを発見させる狙い

Steamにて、姑息な検索対策を試みる業者がいるようだ。2100以上の人気タイトルを、Steamストアページに列挙している。

Steamにて、姑息な検索対策を試みる業者がいるようだ。Twitterユーザーアルカリ氏の指摘などにより明らかになっている。対象となっているのは『Heroes of Fantasia』なるSteamタイトル。ストアページに、大量のタイトルを列挙することで、自社ソフトを遊ばせようとしている。


『Heroes of Fantasia』は、今年5月に配信開始されたRPG。ローグライク要素を取り入れたダンジョンRPGとなっているようだ。アリーナなるマップや、スカイクラウドなる場所、ワールドボスバトルなどで、戦いが繰り広げられるという。プレイヤーに驚きをもたらすアドベンチャーシステムや、スキルによって力を得るキャラクターシステムが存在するようだ。筆者の環境では、起動してもオープニング画面からゲームを進めることができなかったが、ようするにダンジョン探索型のローグライクゲームになっているようだ。

ストアページでは、基本的なゲームシステムが記述されているのだが、その下には何やら長いリストが存在する。「Friendship recommendation」なる記述が存在し、見たことがあるようなゲームタイトルが大量に並んでいる。友情的推奨リストとでも言うべきだろうか、販売元が勝手にオススメしているゲームが連ねられている。一見意図が不明なリストだが、これは実は検索対策になっているのだ。


上から見ていくと、『War Thunder』『Planet Zoo』『Tower of time』『Monster Train』といったタイトルがあがっており、いずれも人気のPCゲームである。仕組みとしては、Steamの検索窓にてこれらのタイトルで検索した際に、まったく関係のない『Heroes of Fantasia』のストアページが引っかかる仕組み。アルカリ氏も『Assassin’s Creed Valhalla』で検索した結果、このタイトルを見つけたとしている。並べられている作品はざっと数えただけで2100本以上。なんとも力技だ。数多くの人気作の名前をストアページに列挙することで、検索による流入を試みているわけだ。

では、その検索対策はうまくいっているかというと、そうは見えない。Steamの検索機能は「適合性」の並び替えがデフォルトになっており、適合性のメカニズムはそれなりに賢い。ざっくりと仕組みを見たところ、まず検索をかけたワードに対しタイトルの近さから優先的に順位が上がっていき、その後説明文やジャンルにて検索ワードと類似性があるものが拾われていく。ストアページの優先度は低めなのだ。いずれのタイトルを検索してみても、『Heroes of Fantasia』が引っかかるのは確かだが、かなり下部の方。『Manifold Garden』のようなニッチタイトルならば、本物の下に表示されるものの、ここから大きな流入が発生しているとは思えない。

そもそも検索対策のリストについても、かなり適当。どこかのリストをコピペしたような内容となっており、たとえばストアページ内で『Red Dead Redemption 2』だけでも8回出てくる。同ワードにて「適合性」検索をしても、『Heroes of Fantasia』はかなり下の方に存在しており、まず検索に引っかかることはない。何度も出したところで適合性は上がっておらず、意味のない同タイトルの繰り返しがおこなわれているわけだ。そもそも先述した『Assassin’s Creed Valhalla』はリスト内には存在しておらず、『Assassin’s Creed』と『Jotun: Valhalla Edition』のあわせ技で引っかかったことが濃厚だ。


Steamで目立つために、手段を問わないパブリッシャーは一部存在し、たとえば「人気の近日登場」を用いた不正なども過去には発生していた(関連記事)。今回の検索対策もそうした“Steamハック”かと思われるが、あまり効果は見られていないようなのが実情。Steamコミュニティでは7月末時点でストアページ内のゲームタイトル記述を指摘する声があり、SteamDBを見る限りでは、こうした手口はリリース当初から使われていた模様。しかしレビュー評価は悪く、レビュー数も27件程度に留まっている。単なる“検索の邪魔”以上の効果はもたらしていない印象だ。しいて言えば、名前が似たPSPゲーム『ヒーローズファンタジア』がやや気の毒である。

『Heroes of Fantasia』のパブリッシャーを務めるのは、Xi’an Xiexing information Technology。開発元はyingying yuanと記されており、販売・開発ともに中国系だろう。公式サイトもないので問い合わせ先などはなく、苦情などを届けるのは困難。ただし、姑息な検索対策をしてもあまり効果がないという良い例にはなっている。別の事例として、『Cyberpunk 2077』からの流入を狙いつつ、レビュー数は41と少ないながらも好評を博している『Cyber-doge 2077』 なるタイトルも存在する。小手先ではなく、ゲーム内容を煮詰めることこそがヒットの近道になるだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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