非対称マルチホラー『Last Year』開発元、資金難により同作の旧バージョンを有料販売。アップデートされる前のゲームを再体験


インディーゲームスタジオElastic Gamesは10月27日、非対称マルチプレイホラーゲーム『Last Year: The Nightmare』のSteam配信を開始した。通常価格は3090円で、11月3日までのプロモーション期間中は20%オフの2472円で購入できる。日本語には非対応。

同作は、Steamで2019年12月に配信が開始された『Last Year』の旧バージョン。2018年12月にDiscordでの先行配信を開始したころのビルドに、いくつかの変更を加えたものだ。各種アップデートが適用される前の、ローンチ当初の同作がどのようなものだったのか再体験できる。別売りにつき、『Last Year』購入者が旧バージョンを遊びたい場合は、別途購入する必要あり。なお『Last Year』は2050円。旧バージョンである『Last Year: The Nightmare』の方が高い。

*2018年8月に公開されたDiscord版『Last Year: The Nightmare』のトレイラー

*2019年12月に公開された『Last Year』のトレイラー

なぜ、ゲームの旧バージョンを有料販売し始めたのか。開発元のElastic Gamesは『Last Year: The Nightmare』の配信開始報告にて、資金難のため『Last Year』のコンテンツ開発を中断せざるを得なくなったと伝えている。売り上げが芳しくなく、開発を継続するための資金が不足しているという。実際、本作は当初チャプター形式で新規コンテンツが配信される予定であったが、2019年12月に始まったチャプター1「Afterdark」から抜け出せていない。公式サイトもアクセスできない状態。プレイヤー人口という意味でも、平均同時接続プレイヤー数1〜2桁という状況が長らく続いており、5対1のマルチプレイゲームである点を踏まえると、手に取りづらい作品であることは否めなかった(SteamDB)。

『Last Year』に新たなマップやキラーを追加するためには、開発費を捻出する必要がある。そこで、開発資金を確保するための新たな希望として配信されたのが、『Last Year: The Nightmare』である。かつて存在したDiscordのPCゲームストアでしか手に入らなかった、当時のゲームプレイを再体験。ビジュアルやマップ、マッチメイクの仕様はそのままに、いくつかの調整やSteam実績対応などの変更を加えている。なおSteam実績のひとつは「CoViD-96」。同実績を解除済みのプレイヤーに倒された際に解除される仕組み。どんどん感染を広めていくというわけだ。

もしもこの旧バージョンが十分な売り上げを出せれば、『Last Year』のコンテンツ開発を再開できるとのこと。うまくいけば、PlayStationやXboxプラットフォーム向けにもリリースしたいとも。開発陣にはやる気があり、クールな新規コンテンツを作る準備も出来ている。足りないのは資金だけだと。『Last Year』の開発資金を集めることが目的であり、ゲームの旧ビルド販売を使った資金調達だと捉え得るだろう。


『Last Year: The Nightmare』は5人の高校生と1体のキラーに分かれて戦う、一人称視点の非対称マルチプレイホラーゲーム。キラーのいる学校に取り残された高校生たちは、力を合わせ、脱出口を開けるために必要なアイテムを集め、エリアからの逃亡を試みる。一方のキラー側は罠を仕掛けたり特殊能力を発動したりすることで、高校生たちを追い詰めていく。

ただ高校生たちも無力というわけではなく、野球バットやショットガンといった武器をクラフトしてキラーに対抗できる。仮にキラーが倒された場合、異なる種類のキラーとして復活するため、同じマッチ中であっても臨機応変に戦術を変えていかないといけない。また本作では、ホラー映画において、登場人物がどこに逃げようと、どこからともなく殺人鬼が現れては追い詰めていく様子を再現する「Predator Mode」なる機能を搭載。キラーはいつでも姿を消して、別の場所にスポーンし直すことができる。現行の『Last Year』と旧バージョンの『Last Year: The Nightmare』はビジュアルスタイルやマップデザインに違いがあり、それらの点で好みが分かれ得る。


ゲームの仕様を発売当初のものに戻して再起を図ったゲーム事例としては、『H1Z1』や『The Culling』が挙げられる。PC版『H1Z1』は2019年3月、『Z1 Battle Royale』に改名すると同時に、ビジュアルやゲームプレイを2016年後期〜2017年早期の、いわゆる黄金時代に戻す大型アップデートを配信(関連記事)。一時的なカンフル剤にはなるも、現在は勢い控えめとなっている。『The Culling』は2018年9月、基本プレイ無料化とあわせて、同作の仕様をリリース初期に近い状態に戻す「Origins」アップデートを配信(関連記事)。再出発を図ったが、半年後の2019年3月にはサービス終了を発表している。

このようにゲームの仕様を戻すことで再起を図る前例はある。だが、それがゲームの復活につながるとは限らない。また先述したタイトルが基本プレイ無料であったのに対し、『Last Year: The Nightmare』は有料。ゲームの最新版である『Last Year』よりも値段が高いという違いがある。はたして、開発資金の確保という開発元の願いは叶うのか。『Last Year: The Nightmare』はSteamにて販売中。最新バージョンである『Last Year』も引き続き販売されている。