ハードコアACT『Disc Room』は激ムズだけど「やさしい」。幅広いアクセシビリティと難易度の調節により、誰にでも平等に死を
高難度アクション『Disc Room』のアクセシビリティにまつわる話題が公開され、注目を集めている。先日Devolver DigitalよりNintendo Switch/PC向けに配信が開始した同作(関連記事)。見下ろし型の視点で展開し、無数の丸ノコが飛び交う謎の施設でひたすら生存を目指す2Dアクションゲームだ。
丸ノコにはさまざまな習性の種類が存在する。不規則な動きをするもの・小さなディスクを大量に撒き散らすものなど、それぞれの特性を把握することが重要だ。そのためには何度も斬殺されながら身体に叩き込んでいく必要があり、いわゆる死に覚えゲーとして歯応えある難易度設定となっている。
そんなハードな『Disc Room』だが、背後にはユーザーに配慮した細やかな「優しさ」が隠されているようだ。制作者のひとり、『Minit』『Nuclear Throne』開発などで知られるJan Willem Nijman氏がTwitterを通じて『Disc Room』のデザインを解説。本作におけるアクセシビリティについて説明した。
ゲームのアクセシビリティにまつわる議論については、大きく分けてふたつの方向性がある。ひとつは身体的なハンディキャップや、プレイの習熟度だけでは埋められないハードルを緩和するというもの。もうひとつは、ゲームの難易度自体をチューニングしてあらゆるレベルのプレイヤーにとって遊べるようにするというものだ。『Disc Room』については、それら両面において配慮がなされている。
まずはビジュアルや操作性について。本作ではカメラの動きや暗い部屋の色調など、視覚・色覚にハンデを抱える人に向けてすべてカスタマイズ可能となっている。ストーリーとして挿入される漫画も文章を排したつくりとなっており、右から左/左から右のいずれの方向からでも読むことが可能だ。
またスプラッタ表現が強烈な本作だが、そうしたゴア描写が苦手な人のための調節も完備。血の色を青色や透明に変えられるほか、攻撃が当たった瞬間血しぶきではなく「紙吹雪」が飛び散る仕様にすることもできる。その場合、漫画やテキストにおける描写も書き換わるという徹底ぶりだ。
そして難易度設定については、「完全にプレイヤーに委ねている」という。ゲームのスピードは20〜200%の間で調節でき、ディスクの速度などもカスタマイズ可能。こうした機能は、四肢麻痺・大脳性麻痺を患っているという、インディーゲームとアクセシビリティに携わるユーザーDjf氏の提案で実装されたそうだ。丸ノコが出現する方向をあらかじめ表示するインジケーターなども設定でき、ゲームの難易度をさまざまな手段で段階的に調節することが可能。さらに究極的には、指定したエリアの扉や漫画をアンロックすることさえできる。どうしても先に進めないプレイヤーでもゲームを進行することができるのだ。
複数のアプローチにより、可能な限り多くの人が楽しめるように設計された『Disc Room』。ただしNijman氏は、あくまで本作が「ゲーム史に残る」難易度であることも強調している。遊びやすさだけでなく、「死亡回数30回以内でクリア」「アビリティをひとつしか解禁しない」などの縛り要素が用意されていることも提示し、上から下まであらゆる習熟度のプレイヤーに向けたゲームになっていることを示した。上級者でも即時アンロック機能を使い、スピードランの練習などに活用することなども勧められている。
「難易度をプレイヤーレベルに合わせてチューニング可能」という観点では、数々の高難度ゲームが辿ってきた議論を踏まえた調整ともいえそうだ。『Cuphead』や『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』といったハードコアで知られる作品についても、イージーモードの必要性是非などが繰り返し問われてきた経緯がある(関連記事)。こういった歴史を踏まえると、『Disc Room』のアプローチはMatt Makes Gamesの『Celeste』がとった手法に近いといえるだろう。
同作のクリエイターMatt Thorson氏は、高難度であることが『Celeste』の根幹を占めるとしつつも、アクションゲームが苦手なプレイヤーも作品を体験できることを重視。単純な「イージーモード」を導入するのではなく、無限スタミナや無敵オプションのオン/オフを自由に切り替えられるといった柔軟なカスタマイズを用意した。難易度のグラデーションにより可能な限り広いユーザーにアプローチしようとする姿勢は、『Disc Room』と共通するものがあるといえるだろう。なおThorson氏の考え方については、かつてNijman氏とユニットを組んでいたIsmail氏も好意的な姿勢を示していた。
『Disc Room』はPC/Mac(Steam)およびNintendo Switch向けに、1520円(税込)にて配信中。架け橋ゲームズのサポートにより日本語にも対応している。