新作レースゲーム開発者、自身のゲームにて“Nintendo SwitchのJoy-Con”を走らせる。皮肉たっぷりにドリフト決める


TwitterユーザーColonelSandwich氏が、とあるゲームプレイ映像を投稿し、SNSで話題を呼んでいる。懐かしのアーケード系レースゲームにて、“Joy-Con”がドリフトして道路を走っている。この映像には、風刺が込められているようだ。

話題を呼んでいる映像では、車ではなくNintendo SwitchのJoy-Conが道路を走っている。190キロ以上の速度を出しながら、軽やかに爆走を決めているのだ。ここで注目したいのは、Joy-Conがドリフトを決めている点。ドリフトといえばNintendo SwitchのJoy-Conにおいて多数報告されているJoy-Conドリフトがあげられる。ずばり、同問題を皮肉った映像なのだ。
【UPDATE 2020/10/7 15:30】
時速120キロの記載を、190キロへと修正

Joy-Conドリフトとは、プレイヤーがJoy-Conのアナログスティックに触れていないにもかかわらず、入力操作がおこなわれてしまう現象。コントローラーを触っていなくても、スティック入力がなされキャラが勝手に動いてしまうような挙動が発生する。Drift(漂流)しているとして、海外でJoy-Conドリフトと名付けられた。日常的な使用においての弊害だけでなく、繊細なスティック操作を求められる場面でも、ゲームプレイに支障をきたすことから、深刻な問題として捉えられている。

ColonelSandwich氏もまた、投稿した映像の中にそうしたフラストレーションを詰め込んだようで、「Joy-Conドリフトはばかげてるし、任天堂はマジで恥じたほうがいいよ」と批難の言葉を添えている。Joy-Conドリフトは、昨年から本格的に提起されている問題。任天堂代表取締役社⻑の古川俊太郎氏は今年6月の株主総会の場にて、「Joy-Conに関して、お客様にご迷惑をおかけしていることをお詫び申しあげます」とコメントしているものの、正式な対応表明はなし。Joy-Conドリフト被害報告は、今も跡を絶たない。

また最近では、米国にて昨年より提起されたJoy-Conドリフトをめぐる集団訴訟において、任天堂側が「実際の問題ではない、あるいは誰にも不都合をもたらしていない(this isn’t a real problem or hasn’t caused anyone any inconvenience)」と主張したと、原告側の弁護を担当する弁護士事務所CSK&Dが伝えており、任天堂はJoy-Conドリフトを問題視していないのではないかという旨の報道が出ている(関連記事)。フランスでは、Joy-Conの計画的陳腐化(買い替えを促すため故意に品質を操作すること)をおこなっているなどとして消費者団体から提訴されており、Joy-Conドリフトおよび任天堂のとる対応について、批判が強まりつつある。こうした皮肉めいた映像が作成された裏には、任天堂の対応への批判の高まりが関係しているだろう。

興味深いのは、ColonelSandwich氏が投稿した風刺映像のゲームが、同氏が自ら手がけている作品であること。同氏は、『Victory Heat Rally』なる作品をチームと共に手がけており、プログラマーを担当。単なるはめ込み映像ではなく、自分の作品にJoy-Conを登場させ、ドリフトさせた映像だというわけだ。

『Victory Heat Rally』は、『パワードリフト』や『アウトラン』などを彷彿とさせるレースゲームで、古き善きアーケードスタイルのゲームジャンルを、ポップなビジュアルでアレンジ。ハイスピードでかわいらしいレースゲームとして開発されている。主に3人のスタッフでゲームづくりは進められており、プログラムはColonelSandwich氏がひとりで手がけている。なお、実際に『Victory Heat Rally』にJoy-Conが登場するかは不明。ColonelSandwich氏は、「なぜ(走っているのが)右側の青Joy-Conなんですか」と問われ、適当にGoogle画像検索から引っ張ってきたと回答している。回答の温度感的に、単なるジョークであることが濃厚だ。
【UPDATE 2020/10/6 13:35】
モチーフゲームとして、『パワードリフト』への言及を追記

著作権的な観点から見てもあまりお行儀のいいムービーではないが、こうしたジョーク映像がSNSでバズるほど、Joy-Conドリフトに関する懸念が高まっているとも言える。コンセプトやデザインなど多岐にわたる点でNintendo Switchは世界的に愛されるハードになっただけに、惜しさを感じさせるJoy-Conのアナログスティックの仕様。任天堂がJoy-Conの改善および問題対応を表明し、ドリフトに苦しめられるユーザーと向き合う日はくるのだろうか。