米国にて2019年7月に提起された、Nintendo Switchのいわゆる“Joy-Conドリフト”を巡る集団訴訟。今年3月に裁判所から和解勧告がおこなわれ、米国任天堂と原告は和解に向けた交渉を進めているものと思われるが、最近になって原告側弁護士が集団訴訟の構成員に連絡を取っているようだ。任天堂が、Joy-Conドリフトの問題を否定する立場を示しているためだという。
Joy-Conドリフトとは、Joy-Conのアナログスティックに触れていないのに、勝手にスティック操作がおこなわれる、以下の映像のような現象のこと。Nintendo Switch Liteのアナログスティックでも発生が確認されており、内部パーツの何らかの不具合が原因だと考えられている。原告は、これは製品としての欠陥にあたるとして、Joy-Conのリコールや無料交換プログラムの実施、損害賠償の支払いなどを求めていた(関連記事)。
Redditユーザーmittenscone氏は10月1日、原告側の弁護を担当する弁護士事務所CSK&Dから受け取ったという、集団訴訟に加わった構成員宛のメールを投稿した。内容はというと、Joy-Conドリフトが発生するとどのような問題があるのか、任天堂による修理を受けてもなおドリフトが再発生したか、またNintendo Switchを購入した理由や、この問題によって任天堂ブランドに対する信頼にどのような影響を与えたのかを、90秒以内の動画にて説明して送ってほしいとしている。
なぜそのような動画が必要かというと、任天堂はJoy-Conドリフトについて「実際の問題ではない、あるいは誰にも不都合をもたらしていない(this isn’t a real problem or hasn’t caused anyone any inconvenience)」と主張しているため、任天堂側の代表者や弁護士に、消費者の声を共有するためとのこと。
任天堂がJoy-Conドリフトは問題ではないと主張したという。この点については海外ゲーマーの間で大きな注目を集めているようだ。海外の多くのメディアが取り上げているほか、Redditに投稿された同トピックには1万件以上のUpvote、1300件を越すコメントが寄せられている。また「Joy-Conドリフトが、実際に不都合をもたらす問題となった人はRT」とした以下のツイートには、本稿執筆時点で2万件を超えるリツイートがおこなわれている状況だ。
任天堂代表取締役社⻑の古川俊太郎氏は今年6月の株主総会の場にて、「Joy-Conに関して、お客様にご迷惑をおかけしていることをお詫び申しあげます」と、先の主張とは相反するようなコメントをし謝罪(関連記事)。また、今回の集団訴訟が提起された直後には、米国ではJoy-Conの保証の有無にかかわらず無償修理するよう方針転換している。米国任天堂は、こうした古川氏の謝罪や無償修理対応はさておいて、和解交渉に臨んでいることがうかがえる。
なお、このたびRedditに投稿されたメールの真偽についてははっきりしないが、動画の送り先に指定されたメールアドレスは担当の弁護士事務所CSK&Dのドメインとなっている。また、このメールが集団訴訟の構成員に送付されていたとしても、任天堂側が実際に先述したような言葉でJoy-Conドリフトの問題性を否定する主張を展開したのかどうかは断定できない。あくまで、CSK&D側の受け止めとして表に出たかたちである。
*任天堂はフランスでは、Joy-Conの計画的陳腐化(買い替えを促すため故意に品質を操作すること)をおこなっているなどとして消費者団体から提訴されている。
今回の集団訴訟における和解交渉は、遅くとも2020年末には何らかの結論が出される予定。問題のメールからは、それに向けた両者の駆け引きがおこなわれていることがうかがえる。仮に交渉が不調に終われば、裁判へと進むこととなるだろう。任天堂は本件以外にもJoy-Conドリフトに関する訴訟を抱えており、それぞれの動向が注目される。