『サイバーパンク2077』開発元が、「長時間労働をスタッフに強要しない宣言」を撤回し批判浴びる。ゲーム開発の難しさ
今年最大の期待作のひとつである『サイバーパンク2077』について、開発元CD PROJEKT REDが、週6日の勤務を義務付ける通知をスタッフに対して出しているという。海外メディアBloombergが、匿名の同社スタッフから寄せられた情報として報じている。
同誌によると、CD PROJEKT REDスタジオヘッドのAdam Badowski氏は今週月曜日、全開発スタッフに対して、その日から通常業務に加えて、週末のうち1日も働くよう求めるメールを送付したとのこと。地元ポーランドの労働法に基づき、週末出勤分の賃金は支払われる。そのメールの中で同氏は、この決定に対する批判は甘んじて受けるとも述べたという。
ゲーム開発において、マスターアップ直前は繁忙期になりやすい。ゲームを完成させるため、あるいは完成度を1ミリでも向上させるために、最後の最後まで時間と体力が削られる。そうした傾向は、商業規模の大きいビッグタイトルでは顕著だ。ある種通例ともなってきている。
なぜCD PROJEKT REDが批判されるのか。この“批判”に繋がるものの背景にあるのは、Badowski氏の過去の発言だろう。CD PROJEKT REDでは、『ウィッチャー』シリーズの開発において強制的な長時間労働、いわゆる“クランチ”が横行していたとして批判の対象となっていた。そうしたこともあり『サイバーパンク2077』の開発では、多忙期におけるクランチは依然不可欠としながらも、スタッフに強制しないことを徹底する方針を表明。Badowski氏も、「今日は残業できない」と上司に伝えても問題ないことをスタッフに理解してもらいたいとしていた(関連記事)。
しかし今回明らかになった情報では、週末の労働をスタッフに求めており、Badowski氏としては約束を破った形となってしまった。同氏はスタッフへのメールにて、上述したスタジオの方針に反していること、またクランチは答えであるべきではないという自身の信条にも反していることは理解しているとコメント。ただ、可能な限りあらゆる措置をすでに講じており、現在の状況を乗り越えるためには、ほかに方法はない旨を語っている。
マスターアップ前のクランチ文化は業界としてある種の常識となっているが、開発者の労働環境を守る運動が活発化。業界全体の透明化がはかられてきていることにより、クランチが批判される傾向になってきている。CD PROJEKT REDもまたそうした時代の流れに呼応したものの、ゲーム開発はとんでもなく困難なもの。『サイバーパンク2077』はこれまでに2度の延期を経験していることもあり、このホリデーシーズンに何としてでも間に合わせるためには、クランチを避けられなかったのかもしれない。
ただ、今回の一件を報じたJason Schreier氏は、クランチはプレッシャーや文化、同調圧力などさまざまな形で人に襲いかかる複雑なものであるとし、これを従業員に強制する判断について疑問を投げかけている。また、すでに数か月間はクランチ状態にあるとか、何年ものあいだ断続的にクランチを経験しているというCD PROJEKT REDスタッフの証言についても紹介しており、先述した同スタジオの方針が徹底されていたのかについても疑問符がついているようだ。
今回の報道後、Adam Badowski氏は自身のTwitterアカウントを通じてコメントを発表している。同氏は、この6週間は本作の開発におけるラストスパートであると表現。すでに本作を(各プラットフォームの)認証プロセスへと提出し、リリースが近づいていることを日々実感していることから、チームの大部分はこの追加労働については理解しているとのこと。ただ、深い配慮もおこなっているとし、追加分の賃金の支払い以外に、スタジオの収益の10%をスタッフに直接還元する取り組みについて紹介している。とはいえ(スタッフにクランチを求めることは)、同氏としてはこれまででもっとも厳しい決断のひとつだったとのことだ。
『サイバーパンク2077』は、PC/PS4/Xbox One向けに11月19日発売予定。将来的にはPS5/Xbox Series X|S版も発売される。