Steamにて2018年11月にリリースされた『Among Us』の人気が爆発中だ。同時接続ユーザー数のピークは16万人にまで達し、9月8日11時時点のプレイヤー数は『Fall Guys: Ultimate Knockout』を上回り3位となっている。配信直後はまったく注目されず、プレイヤー数一桁という時期も長かった同作。ここにきて、2020年もっとも成功したゲームのひとつになりつつある。その裏には、やはり“実況映え”があったようだ。
『Among Us』は、PC(Steam)/iOS/Android向けに配信中のマルチプレイゲーム。ゲームジャンルはというと、ざっくりといえば人狼ゲームである。4人~10人までのマルチプレイタイトルとなっており、プレイヤーは船員(The Crew)と詐欺師(The Impostor)に分かれる。船員は船内脱出を目指し、詐欺師は船員を装いながら他の船員の殺害を進めていく。
船はそれなりに広く、キャラクターたちは自由行動可能。船内にはさまざまなミニゲームが存在しており、各船員が各ミニゲームをこなしていくことで、脱出ゲージが上昇。ゲージが最大まで溜まれば見事脱出になるわけだ。並行して詐欺師による狩りはおこなわれ、死体の発見報告があがれば議論スタート。チャットなどで相談しつつ、投票によって詐欺師を決め追放。最終的に船員の数が詐欺師の数まで減れば、詐欺師側の勝利となる。船員は単独行動を避けたり、管理者マップやカメラを見ながら他船員の行動を監視しつつミニゲームをこなす。詐欺師は無害な船員のフリをしながら、密室を作り出し殺戮を試みる。役割の人数やゲージの度合いも調整可能。シンプルながらも、奥深い駆け引きが繰り広げられるわけだ。
題材こそは興味深いものの、『Among Us』は配信から10か月間のプレイヤー数は1桁続き(SteamDB)。最低でも4人以上がいないとゲームが成立しないことを考えると、大失敗ともいえるゲームであった。風向きが少し変わったのは、2019年の7月から。ここで同時接続ユーザー数が3桁にのり、以後100~500人が遊ぶなど、少しずつ人気を獲得していった。このまま知る人ぞ知るタイトルになるかと思いきや、バイラル化はいきなり訪れる。2020年8月より同時接続ユーザー数が1万台に乗るようりになり、9月に入りその勢いは大爆発。9月に入ってからはたびたび同時接続ユーザー数が10万人を超え、9月7日には一時16万人のユーザーが遊ぶ、メガヒットタイトルとなったのだ。
爆発のきっかけとしては、やはりストリーマーの間でトレンドになったことがあげられる。『Among Us』の数字は、Twitchでの人気と比例している。“きっかけ”となった配信は不明であるが、Anita氏やxQcOW氏など数百万のフォロワーを抱える配信者が、実況していることはこうした人気に多く関連しているだろう。YouTubeでも100万回以上の再生数を誇る『Among Us』の動画が数多く確認できる。インフルエンサー同士がボイスチャットでゲームを遊ぶことで、さらなる相乗効果を生むなど、完全にトレンドとなっている。
人気の理由としては、人狼型のゲームであるがゆえに、わかりやすくドラマを生みやすい点。ルールもビジュアルもシンプルなので、何が起きているかわかりやすい点。Steam版の価格が500円で購入しやすい点。モバイル向けに配信されており、PC版とクロスプレイできるので、幅広く遊べる点などもあげられるだろう。とはいえ、今分析することは後付けにすぎないかもしれない。
開発者はこの状況を喜んでいるが、必ずしも嬉しい話だらけではないようだ。開発元 Innersloth共同設立者のForest Willard氏は、プレイヤーが多すぎるあまり、サーバーにトラブルを抱えていることを明かしている。インフラはかなりギリギリの状態のようだ。マッチ数が多すぎるゆえに、ルーム作成や参加にエラーが生じるようになっているという。すでに多くのサーバーを動かしているが、同作のマルチプレイはMatchmakersとCloud Managerが両輪のように動いている関係で、単純なサーバーの増加やMatchmakersの増加ではカバーできないのだという。
そうしたバックエンドに問題もあることから、インフラの再構築も含め続編である『Among Us 2』を作ろうとしているのだという。ひとまずルームコードを変更しMatchmakersとデータベースの負荷を下げるなど試みることを計画中。しかしそうすると、プログラマーがWillard氏のみであることから、サーバーメンテナンスが十分にできなくなってしまう。同氏はここ1週間、1日12時間以上働き詰めのようで、そろそろ休息が必要だとこぼす。今後さらに忙しくなりそうな状態であるのに、休まなければならないことは辛いと語りつつ、今週末に起こるであろうトラブルは来週末にどうにかすると締めた。
ゲームこそ安価であるが、『Among Us』には、7種類以上のコスメティックDLCが配信されている。本編のほかにも、「Mini Crewmate Bundle」はSteam全世界売り上げ上位にランクインするなど、しっかりとお金の方も入ってきているだろう。しかしサーバートラブルが頻発すると、“16万人”のプレイヤーが不満をため、Steamレビューもすぐに真っ赤に染まっていく。そうなると、失速は免れない。突然の成功は、開発者にプレッシャーを与えてもいる。
国内にも徐々に人気の兆しは生まれており、人気配信者ポッキー氏が生配信で『Among Us』を遊ぶなど、日本でも人気タイトルになるにはそう時間はかからないだろう。どん底のスタートから思いもよらぬ絶頂を迎えつつある『Among Us』。サーバーはうまく稼働し続け、ゲームはこの勢いを維持し続けられるのだろうか。