Electronic Artsは8月14日、総合格闘技UFCの公式ゲーム『UFC 4』をPlayStation 4/Xbox One向けに発売した。本作は、レビュー集積サイトMetacriticにてそれぞれ79/83と好スコアを獲得するなど高い評価を得ていたが、最近になってプレイヤーからの批判に晒されることとなったようだ。
『UFC 4』の発売からおよそ2週間が経った9月4日、Redditに1本の動画が投稿された。内容としては、ラウンド間のインターバルから次ラウンドが開始してしばらく経つまでの、約30秒ほどのゲームプレイとなっている。注目すべきは、この間には広告が挿入されていることだ。ラウンド間に流された、強烈なカウンターが決まった際のリプレイの直前や、次ラウンドの試合中の時間表示の上にも同じ広告が挿入されていることが分かる。
広告の内容は、Amazonプライム・ビデオにて放送されているオリジナルドラマシリーズ「ザ・ボーイズ(The Boys)」を宣伝するもの。リプレイ映像に移行する際の演出に使うなど、実際のテレビ中継を見ているような雰囲気を感じさせる。しかし、『UFC 4』のプレイヤーはこれを快く思わなかった。広告を表示するということは、これによってEAがスポンサーから利益を得ることを意味する。本作はフルプライスタイトル(59.99ドル/約8700円)であるにも関わらず、広告表示を設けるのかと反感を買ったのだ。
オクタゴンと呼ばれるリングにも、同ドラマのものを含め多数のスポンサーのロゴが貼られており、本作において広告の存在自体は特別なものではない。ただ、リング上の広告は実際のUFCでも同様であり、試合環境の一部と捉えることができる。一方で今回指摘された広告は、プレイヤーに積極的に見せるよう演出されており、広告の存在をより強く意識させる。広告の内容によっては、プレイヤーのゲーム体験を損なう可能性もあるだろう。Redditでは目障りだというコメントが見られ、また「EAはそこまでしてお金がほしいのか」といった批判へと繋がっていった。
また、この広告は本作の発売後に追加されたそうで、メディアなどのレビューの評価には反映されていない。この点から、EAは意図的に実装タイミングをずらしたのではとの憶測を生むことにもなった。今回投稿されたRedditの映像には、本稿執筆時点で9万件以上もの支持が集まっている。
こうした激しい批判の声を受け、EAは『UFC 4』から問題の広告表示を削除し、9月6日に海外メディアEurogamerにコメントを寄せた。EAは、『UFC』シリーズにおいてはこれまでにも広告の表示をおこなってきたとしたうえで、今回のようにオーバーレイ表示させる形は歓迎されていないことは、プレイヤーからのフィードバックにより明らかだと述べる。そして、これによってゲーム体験を阻害してしまったなら申し訳ないと謝罪した。今後、この種の広告を再実装することはないとのこと。
また、こうした要素については、あらかじめプレイヤーとコミュニケーションを取ってから実装すべきものだったともコメント。そして、本作にて最高のゲーム体験を届けられるよう努めていくとし、フィードバックに感謝する言葉を述べている。
ゲーム内広告としての同様の事例としては、過去に『ストリートファイターV アーケードエディション』にもあった。キャラクターのコスチュームに、スポンサーのロゴを貼り付け、ロード画面にて宣伝をおこなうというもので、こちらもファンから反発を受けた(関連記事)。ゲーム内の広告表示は今や珍しいものではなく、また利益を追求する上で必要となっている面もあるのだろう。ただ、特にフルプライスタイトルにおいては、どのような形でプレイヤーに見せるかという点は依然として難しい問題のようだ。