国内の個人開発者ところにょり氏は8月7日、『renal summer』の配信を開始した。対応プラットフォームはiOS/Androidで、価格は無料。ゲーム内で250円を支払うと、広告を消すことができる。
『renal summer』は、犬の腎臓となり、最期の時間を引き延ばすゲームである。本作の舞台は、一匹の犬とおじいさんが静かに暮らす夏の世界。一匹と一人は、一見穏やかな日常を過ごしているように見えるが、犬は腎臓病を患っており、 腎不全によって死が間近に迫っていた。プレイヤーは、そんな犬の腎臓。腎機能の低下により余命わずかとなった犬に、少しでも長くおじいさんとの時間を過ごさせるため、腎臓として犬の体を支えることになる。夏の終わりを、引き延ばそう。
腎臓としての役割は、血液をろ過して毒素を排出すること。腎臓は血液をブロックとして認識しているので、タップによって血液ブロックを破壊すると、腎臓を血液が通過して犬の余命が延びる。また、血液ブロックには4色あり、同じ色の隣り合ったブロックはまとめて破壊可能。腎臓経験値が貯まると血圧をあげ、ブロックが破壊しやすくなるほか、みどり色のブロックを壊すと、広告と共に血圧が一時的に大幅に上昇する。
犬とおじいさんは、朝5時に起き夜22時に眠る健康的な生活を、現実と同じ時間で過ごしている。腎臓が血液をろ過している間も、そうでない間も、関係なく彼らの時間は流れ、穏やかな日常が過ぎ去っていく。犬とおじいさんが家の中で一緒に過ごす様子や、おじいさんが投げたものを犬が拾いに行くシーンなど、時折流れてくる静かなBGMと共にピクセルアートで表現された最後の夏を、好きな時間に見守れるわけだ。また画面を横にすると、一時的に腎臓としての職務から解放され、じっくり彼らの様子を見ていられる。
しかし、彼らが仲睦まじく過ごす間にも、死は刻一刻と迫っている。現実の時間が進むにつれて、血液に含まれる毒素やブロックの破壊しづらさが増加。腎臓が機能を果たせなくなった時には、終わりが訪れるのだろう。一匹と一人の日常を見守りながら、最期の夏を引き延ばそうと奮闘する、ちょっと特殊でエモーショナルなひと夏を体験できることが、本作の魅力と言えそうだ。
本作を開発したところにょり氏は、滅亡後の世界に取り残された機械の子供が、動かなくなった機械を弔うADV『おわかれのほし』や『ひとりぼっち惑星』などを開発してきた日本国内の個人開発者。本作でも、死や滅びがテーマとして扱われており、同氏らしい体験が描かれていることだろう。なお、本作では犬が辛い目にあっているが、同氏は犬が好きな人へ向けたメッセージとして、どうしてもやってほしいとは言えないが、腎臓になってあげたいぐらい犬が好きだとツイートしている。同氏の犬が好きな気持も、本作には込められているのかもしれない。
本作のリリースを記念して、前作『おわかれのほし』の50%セールが1週間実施されており、250円程度で購入可能。サウンドトラックも、50%オフの1000円で購入できる。また、本作のサウンドは、前作のサウンドを担当したsoejima takuma氏、 Koji itoyama氏、Satomimagae氏の3名が担当している。
『renal summer』は、iOS/Android向けに無料配信中だ。