「State of Play」でお披露目されたゲーム『Aeon Must Die!』、すでに開発スタッフが全員辞めていた。「虐待と盗難によるトレイラー」との告発


多数の新作ゲーム情報が発表された、SIEによる公式放送「State of Play」。その中でトレイラーが流された作品のひとつ『Aeon Must Die!』が、前代未聞の事態に陥っているようだ。というのも、新作発表としてトレイラーが流れた今朝の時点で、開発スタッフが全員スタジオを辞職しているのだという。一体何が起こったのか。スタッフらが告発した内容について詳しく見てみよう。

*「State of Play」で公開されたトレイラー

『Aeon Must Die!』はデベロッパーのLimestone Gamesが開発を手がけ、パブリッシャーFocus Home Interactiveから発売予定の2Dアクションだ。ダークでグラフィカルなビジュアルが特徴で、対応プラットフォームはSteamおよびPlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switch。2021年の発売が予定されており、日本語字幕とインターフェースにも対応することが伝えられている。「State of Play」でもスタイリッシュなアクションを展開するトレイラーが放送された。
【UPDATE 2020/08/07 14:20】 発売時期の記載を更新

ところが同時に、内部スタッフのひとりと見られる人物がYouTubeに同様のトレイラーをアップしている。動画の概要欄には次のような記載がある。「このトレーラーは、虐待、操作、盗難で作成されました。このゲームの開発に関する真実をここで見つけてください(URLが記載)。この動画の全ショットに取り組んできた人々は、もはや知的財産権の所有元である企業に属していません。 一部は彼らの仕事のために支払われさえしませんでした。この予告編には、保留中のIPがあります。ゲームの本当のIPは、悪質な工作によって作成者から盗まれました。この情報に対するパブリッシャーの最終的な反応はまだ見られていません」。

*告発側のトレイラー。概要欄に弾劾の内容が記載されている

つまりスタッフがいうことには、『Aeon Must Die!』の制作にあたっては労働上の争議があり、その知的財産権を巡ってのトラブルが解決しないまま今朝のトレイラー公開に至ってしまったという。概要欄に貼られたURLからはDropboxにジャンプすることができ、そこで争議の詳細が書かれた書類と資料を閲覧することができる。

『Aeon Must Die!』の開発環境は過酷な状態にあり、給与未払い、不当解雇、ハラスメントがまかり通っていたという。開発ソフトウェアが違法なものだったために制作がストップする事態もあったそうだ。共同設立者で元CCOでもあるAleksei Nehoroshkin氏は問題の解決に取り組んでおり、ジェネラルディレクター・テクニカルディレクター・筆頭株主などと協議を進めていた。この間、Nehoroshkin氏は交渉のバックアップとして弁護士を雇用する。

弁護士による法的な書類や調査の結果、チームに法的義務はなかったにもかかわらず、CEOによって不当に罰金や責任を課されていたことが判明した。そして何より、『Aeon Must Die!』にまつわるすべての権利が、数年にもわたってCEOただひとりに帰属していたとのこと。これはCCOを含むすべてのスタッフが信じていた公式の話とは完全に矛盾する事実だったようだ。


結果的に6月22日、Nehoroshkin氏を含む8名のスタッフがLimestoneを退職するはこびとなる。同日、スタッフらはパブリッシャーのFocus Home Interactiveに書状を送付した。その内容はスタジオ内の現状を説明し、調査を依頼するものだった。またチームはパブリッシャーと協力し、プロジェクトを完遂したい旨も伝えていた。そこにはスタッフら12名の署名も記載されていたという。

ところがその後、Focus Home InteractiveがLimestone Gamesと内通しており、Nehoroshkin氏らが送った手紙についてもすべて通知されていたことが判明する。スタッフらの退職に向けた動きやパブリッシャーに直訴していたことに対してLimestone側は圧力を強め、CEOから従業員に対して訴訟をほのめかす脅迫の手紙が届くようになった。

Focus Home Interactiveとチームの交渉は続き、弁護士を通じて数々の書類が送付された。また「State of Play」にて公開される予定のトレイラーは不当解雇や給与未払いを受けた制作陣の権利を侵害している旨を伝えていたという。そして8月5日、ようやく開発チームとFocus Home Interactiveによる直接の話し合いがとり行われた。パブリッシャー側の代表は、チームから送付された書類に目を通す時間がなかったと弁明。同時にトレイラー公開はプロジェクトにとって重要なイベントであり、延期する予定はない旨を伝えた。


これらの経緯をもって、チームはついに以上の内部情報を公にする決断に踏み切ったそうだ。チームによれば、現在Limestone Gamesには『Aeon Must Die!』開発を続けるためのスタッフが在籍していないという。またCEOが以前解雇したスタッフをふたたび雇用しようとする動きも出てきているそうだ。

お披露目とともに泥沼の内部事情まで白日の元に晒された『Aeon Must Die!』。良くも悪くも注目を集めた本作の開発が今後どうなるか、先行きはいまだ不透明だ。