『あつまれ どうぶつの森』最新アプデで不正ユーザー御用達“星の木”が完全に刈り取られる。SNSには改造者たちの阿鼻叫喚の声響く
任天堂は8月6日、『あつまれ どうぶつの森』更新データVer.1.4.1を配信開始した。3点の不具合を修正する同アップデートは、小さいながらも確かな改造対策となっており、本作を改造して遊んでいた不正ユーザーから数多くの悲鳴があがっている。
ほしのかけらと星の木
『あつまれ どうぶつの森』には、他の作品と同様にゲームを改造するプレイヤーが存在する。改造のジャンルはさまざまであるが、横行しているもののひとつに「星の木」があげられる。本作には、ほしのかけらなるアイテムが存在する。星が流れる夜、カメラを空に向けてAボタンを押してお祈り。星が光ると翌日に、島の特定の場所にほしのかけらが落ちている。
ほしのかけらは、素敵に着替えができる各種ステッキや宇宙系家具など、一風変わった素敵な家具のクラフトに使用可能。祈った分だけほしのかけらは落ちるようで、星が数多く流れる流星群の日には、たくさんのほしのかけらが入手できる。ほしのかけらの中にはレアなかけらや期間限定のかけらがあり、この要素だけでもかなり奥深い。ほしのかけらは、あくまでDIYの素材。しかしどういうわけか、このほしのかけらを宿した「星の木」が散見されるとの報告が相次いでいた。
埋めても木を生やさないほしのかけらが、木々として生い茂っている。どことなく幻想的な星の木は、島デザイナーの間で話題を呼んでいた。しかし実際のところ、その正体は改造によるアイテムであった。本作では、時折地面が光っていることがあり、それを掘り起こすことでベルを入手できる。そして掘り起こした穴にベルを埋めることで、「ベルの苗」が生まれるのだ。すくすく育った苗はやがて実を宿し、ベルの木になるわけだ。揺することで、これらのベルを入手可能。改造でこの木をほかのオブジェクトに置き換えるのが主な手法であると、改造系YouTuberのAbdallahSmash026氏は解説している。
この改造をすることで、ベルにかわって金鉱石やさかなのエサ、あきビンなど、多岐にわたるアイテムを木につけることが可能で、木の芽や苗を宿す木さえも生まれる。改造によって木に宿すベルから他のアイテムに変え、そのアイテムをほしのかけらにしたというのが、星の木の正体。そもそもバグですらない。見た目こそ麗しいが、ベルの木のメカニクスを不正に歪ませることで生まれた、改造の産物なのである。
始まった「星の木」取り締まり
今回の改造は、今年5月頃より横行していたという。ゲームを改造することにより星の木を島に飾るユーザーが増加。もちろんゲームの改造はNintendo Switchの利用規約に違反している。任天堂はすぐには対応をとっておらず、星の木を展示するユーザーは密やかに増殖していた。
しかし先月大型アップデート1.4.0が実施されたことを皮切りに、改造への取り締まりが本格化したことが報告されている。理由としては、ゆめみ要素の実装があげられるだろう。ゆめみは、他ユーザーに自分の島をシェアしたり、またシェアされた島へと訪れることができたりする追加コンテンツ。お互いにオンラインである必要もなく、夢番地さえ知っていれば島訪問でき、島の地形を変えることもできないので公開される側も安心。マルチプレイ以上にカジュアルな島訪問コンテンツに仕上げられている。
星の木ユーザーが本格的に取り締まられ始めたのは、ゆめみによりシェア機能が強化されたからであろう。ゆめみにはランダム訪問機能はなく、自らコードを入力しなければ島には行けない。しかしながら、訪れた先に謎めいた星の木が飾られていれば、ユーザーに混乱を招きかねない。そもそも改造された島が公に共有されていること自体が許されざることである。島を公開される前に、改造や他ユーザーを不快にするようなコンテンツを共有するなと、ゲーム内で厳重に注意されるのだ。そうした忠告を無視し、なにげなしに星の木を飾った島をゆめみにて共有した不正ユーザーたちは、島の取り下げ処分を受けたと報告。任天堂から規約違反の通知を受けたとし、悔しがるユーザーがSNSに続出していた。
厳しく取り締まられたのは、任天堂の監視の目が光ったからというだけではないようだ。実はゆめみには通報機能が存在している。この通報機能が有効活用され、任天堂の取り締まりが厳しくなっているようだ。登録者45万人を超える人気YouTuberのVigisil氏は、ゆめみの改造島を通報しまくる生放送をYouTubeにて実施。同氏はSNSなどで公開されている改造島へ突撃、その目で改造を確認し任天堂へと報告をし続けた。同氏とファンたちが大量の星の木島を2時間以上にわたり通報活動をしたことにより、大規模な取り締まりが発生したと考えられているようだ。
悲しみ怒る改造者たち
この活動を見た改造者たちはたちまち激怒。思想を押し付ける独裁者のようであるとVigisil氏を猛烈に批判。星の木という“無害な改造”を楽しむ自分たちの体験を妨害するなと怒っている。Vigisil氏がしずえのセクシャルな二次創作アートを島に飾っていることをあげて彼の性指向を批判し、差別者であるとも展開していた。さらにほかのユーザーは、自分たちは星の木をとても楽しんでいるとコメント。星の木の映った写真を添えながら、24時間以内にこのツイートをRTした人々に星の木を配る(ただし通報するな)という、かなり歪な呼びかけもおこなわれていた。英語版『どうぶつの森』アカウントのゆめみ実装の告知ツイートに、「通報機能を削除しろ」とやたらとリプライしていたのは、彼らだったわけだ。
※ 海外コミュニティ全体がこうしたムードであるわけではなく、しっかりと不正を批判し改造をやめるように呼びかけるツイートやリプライも確認できる。不正者には届いていないだろうが。
そして消滅
そして今回のアップデートにより、星の木自体が削除されることとなった。更新データページの「本来発生するフルーツなど以外のアイテムのなった木を、発生させることができる問題を修正しました」との記述は、まさに星の木を修正したことを報告する一文である。取り締まりだけでなく、星の木自体が削除されたわけだ。彼らの星の木はあっという間に、単なるベルという“元の姿”へと戻ることとなった。
もちろん、通報機能削除を求めていた改造者たちは、このアップデートに納得するはずもない。星の木を写した島と、泣くエモーションを添えて“感情的に”任天堂に訴えかけている。挙句の果てには星の木削除撤回を求める署名活動まで始められている。『あつまれ どうぶつの森』のコミュニティは巨大で、さまざまな抗議がおこなわれてきたが、星の木をめぐる呼びかけは、もっともいびつな抗議活動のひとつとなりつつある。
星の木そのものは確かにムーディーなインテリアであるが、本質的には改造の産物以外の何者でもない。“存在すべきでないもの”であるし、彼らは無害を訴えているが、それは彼らにとって無害であるというだけ。ゲーム内にあるはずのないコンテンツを見れば、ユーザーにとって有害となりえる。それ以前に、不正行為を正当化すること自体言語道断だろう。星の木改造者たちは、抗議の声を強めているが、彼らの意見は任天堂に届くことはない。SNSでは“不正ユーザーの詭弁じみた抗議の声”が、虚しく響き渡っている。