再開発中の『Anthem』が目指すルートシステムの改善案が公開。ゲーム体験向上のため、戦利品まわりにメスを入れていく
BioWareは7月31日、『Anthem』の公式ブログを更新。現在再開発中の『Anthem』について、開発陣が目標としているルートシステムと装備品の仕様改善内容を紹介した。いずれも検討段階の情報であり確定事項ではないものの、新生『Anthem』を作り上げるにあたり、BioWareが何を目指しているのか、目安にはなるだろう。
まずは満足感のある戦利品収集体験を実現するための変更点から。こうしたルートシューター作品にとっては、拡張性があり、かつ健全なルートシステムを設けることが重要。新しい戦利品を拾うことに喜びを感じられないような仕様では、優れたプレイ体験を構築できない。しかしながら、この分野において『Anthem』は多くの過ちを犯してしまったと、BioWare Austinのスタジオ・ディレクターChristian Dailey氏は反省。十分な水準に達していないため、一から作り直す必要があると悟ったという。
作り直すにあたって、まずは他のゲームがどうやっているのか、じっくりと研究するところからスタート。そこで学んだことや、プレイヤーからの感想とフィードバックにもとづき、目標を設定したとのことだ。ルートシステムに関しては、『ディアブロ』『ボーダーランズ』『ディビジョン』『Destiny』など参考にできる作品がたくさんある。ただ『Anthem』のルートシステムやハクスラ要素は洗練されておらず、かつて『ディアブロIII』のシニア・ゲームデザイナーとして活躍したTravis Day氏が、長文に渡り『Anthem』改善案を提示したほど(関連記事)。初歩的な部分で苦しんでいると、長らく指摘されてきた。
BioWareがかざす第一の目標は、プレイヤーの時間を尊重すること。戦利品のドロップ頻度を上げ、使い道のある戦利品を増やす。またどんなレアリティの戦利品であっても、キャラクターを成長させる上で何かしらの価値を見いだせるようにする。ルートシューターとしては初歩的な話であるが、『Anthem』はこの時点でつまずいていた。
続いて、プレイヤーに選択の余地を与えることが目標として示された。ほしい戦利品を手に入れるにあたって、ランダム性だけを頼りにするのではなく、特定のクエスト、ベンダー、ユニークなルートテーブルのあるコンテンツなどを、集中して遊ぶ行為を報いること。またボーナス効果(刻印)の振り直しや、装備品のレベル上げといった、装備品をチューニングする機能を設けることが、具体例として挙げられている。こちらも『Destiny 2』や『ディビジョン2』といった現代のルートシューターはすでに取り入れているもの。同じ土俵で戦う上では、それらの作品が示した業界スタンダードに追いつくことが求められるだろう。
3つ目は、プレイヤーの労力を報いるような報酬の出し方。システムというよりは演出面の話である。戦利品がドロップしたことがもっと明確にわかるようにし、プレイヤーがより興奮するような、そして回収した際に喜ぶような見せ方が目指される。レアな敵(Dailey氏は「歩く宝箱」と表現)を倒した際に戦利品の雨が降るといった、エキサイティングな瞬間を作りたいという。
視覚情報としての見せ方に関わる部分では、どんな戦利品を拾ったのかすぐにわかるようにし、かつすぐに装備できるよう変更することが挙げられている。『Anthem』では、回収した戦利品の中身はすぐにはわからず、またミッション終了後にならないと装備できない。この仕様を変えるのだろう。また本作は、装備品の詳細な性能を把握しづらいという問題も抱えている。こちらについても、装備品の性能説明を詳細化することで解決を目指している。
また『Anthem』では、レアな装備品を手に入れても、付随するボーナス効果(刻印)が、その武器にとってまったく役に立たない場合があった。氷属性のスキルに「物理ダメージ +200%」のボーナス効果が与えられるといったケースだ。こうした使えない装備品が生まれないよう、各武器にとって必要な刻印を付与する仕様を目指すという。
刻印のボーナス効果には、装備品のパワーやレアリティに応じて合計値の上限を定めるとのこと。その場合、すべての刻印が最大値の装備品がドロップしなくなると思われるため、好みが分かれる部分ではあるだろう。「優れたアイテムとは、すべてのボーナス効果が最大値のアイテムではなく、ほしいボーナス効果が揃っているアイテムを指す」とDailey氏は説明している。同じルートシューターの『ディビジョン2』では以前、ひとつの装備品に付く補正効果(特性)の合計値に上限があった。「神ロール」の装備品がドロップし得ない仕様であることから、プレイヤーの不満につながり、最終的に合計値上限が取り払われたという経緯がある。合計値上限の設定が、必ずしもプレイヤーに受け入れられるわけではない。
まだ新生『Anthem』の再開発は初期段階。仕様の検証や社内プレイテストを繰り返すフェーズである。そのため、最終的にどのような形でゲームに実装されるのかは決まっていない。『Anthem』を抜本的に見直す改修作業は、爽快な空中アクションといった本作ならではの楽しさを残しつつ、ゲームデザインの基本部分を中心に、十分な水準に満たなかった箇所を作り直すための再開発。以前よりDailey氏は、開発に時間がかかると念を押していることから、日の目を見るのはかなり先となるだろう。
なおBioWareは7月、海賊テーマの新勢力「Pirates of Blood Wind」や、彼らの拠点のコンセプトアートを公開している。今後もジャベリンの成長システムやエンドゲームコンテンツといったトピックについて、公式ブログにて紹介していくとのことだ。