『スーパーマリオ64』には、ルイージが“部分的に”存在したとの報道。とんでも理論とされていた「L is real 2401」支持派が脚光浴びる


『スーパーマリオ64』にて、ルイージが“部分的に”存在していたとして、界隈が色めきたっている。NINTENDO64向けに発売された『スーパーマリオ64』で、プレイヤーが使用できるのはマリオのみ。しかし一方で、同作においては「ルイージ」の存在を示唆する要素が存在しており、発売後には「特定の条件を満たせば、ルイージが使える」との噂話も出回ったほど。だが時が経ち研究が進み、ルイージがゲーム内に登場するというのは与太話かと思われていた。そんな中、『スーパーマリオ64』には部分的にルイージが存在していたという説を立証する有力資料が出てきたのだ。

今月7月25日、海外掲示板4chanで「任天堂の過去作のデータ」と思われる資料が大量に投稿された(VGC)。その中には『スーパーマリオ64』のプロトタイプ版のソースコードも含まれていた。そして、そこに「ルイージ」が部分的に存在していたようだ。具体的には、モデルやテクスチャ、そしてボイスが断片的に存在していたとのこと。完全な形ではなく、バラバラの状態。しかしながら、Lマークのテクスチャなど、ルイージの存在を思わせるデータが大量に残されていた。ルイージの名前がついたフォルダも存在していたという。これらのデータを継ぎ合わせてルイージを作り出すユーザーも出てきており、今ルイージフィーバーが生まれつつある。

とはいえ、『スーパーマリオ64』のリメイク作とも言える『スーパーマリオ64DS』にはルイージが使用可能キャラとして登場する。もっといえば、宮本茂氏は数々の媒体にて、『スーパーマリオ64』にてルイージを実装する予定があったことを告白済み。たとえば「任天堂公式ガイドブック スーパーマリオ64(小学館)」のインタビューで、宮本茂氏は同作の開発を振り返りつつ「マリオとルイージが3Dスティックで動き回って、ボタンを押すとカメラモードが切り替わる。基本(のコンセプト)はそういうものです」「ふたりでマリオとルイージを動かし合うものにできたら、よかったんですけどね」と語っている。ルイージは2人プレイ用のキャラとして実装される予定で、最終的にそれが叶わぬものとなってしまった。そうした開発過程は、熱心なファンの間では知られていることだろう。ルイージが存在していたことそのものは大きなサプライズではないのだ。ではなぜここまで注目されているのか。それは「星の石像」をめぐる議論を再加熱させているからだ。


『スーパーマリオ64』の地下の中庭には、メッセージが彫られた星の石像が存在する。「テレサのホラーハウス」に行くときに通るテレサたちが集う広場の石像。この石像には、うっすらとしたメッセージが記されている。これこそが、ルイージの存在を示唆する要素だったのだ。このうっすらと見えるメッセージをどう読み取るかについては、さまざまな説が存在している。

ひとつめは「Eternal Star(エターナルスター)」説。一番左の文字を「E」であると考え、それに続く文字とつなげて形容詞「Eternal」であるとし、右半分の文字を「Star」と解釈する考えだ。もうひとつは「L is real 2401(ルイージは存在する2401)説。左側の大文字らしきアルファベットを「L」と解釈し、その右にある文字を「is」と考え、続く文字を「real 2401」とするアイデア。さらには、数字に注目した「L is real in Paper M(ペーパーマリオでルイージは存在する)説なるものも存在する。


しかしこのテキストについては、1998年に米任天堂が「L is real 2401」説を否定し、プログラマーがジョークで入れたものであると説明する手紙が発見されていた(関連記事)。また昨年には、解釈ではなくテクスチャからメッセージを分析するアプローチにより、第四の説が浮上。それが「A Secret star lie here ~」説である。「隠された星がここにあるよ~」。つまり、ルイージではなく、隠しスターがあることを示唆していたというわけだ。『スーパーマリオ64』には、この石像に関連したスターは存在しない。


一方で、『スーパーマリオ オデッセイ』には『スーパーマリオ64』をオマージュするエリアが存在しており、そこには星の石像もある。そしてこの石像には、スターが隠されているのだ。つまり、「A Secret star lie here ~」説が正しく、『スーパーマリオ オデッセイ』にてこの伏線が回収された。解釈と現象、ともに整合性のあるこの分析が最有力の結論とされ、この星の石像に関する議論に終止符が打たれたかと思われた(関連記事)。


しかし、今回ルイージの存在が報道されたことにより、星の石像のメッセージ解釈においてもっとも“とんでも理論”とされていた「L is real 2401」が一躍脚光を浴びている。というのも、今回の発見は不思議と「L is real 2401」に関連する要素が多いのだ。まず「L is real(ルイージは存在する)」という文言が、今回の発見にてより説得力を持つようになった。またTwitterユーザーRhea氏はルイージの存在が確認されたのが、24年と1か月後(『スーパーマリオ64』の発売日は1996年6月)であると指摘。さらに2と4と1を足すと7(7月)になることや、24と1を足すと25日になると報告(流出騒動により、ルイージのデータが報告されたのは7月25日)。今回の発見には「L is real 2401」が深く関わっており、とんでもないことだと驚きを示している。

つまり、ルイージの存在が確認され、発見日時に「2401」が関わる要素があったことで、こじつけとされていた「L is real 2401」の解釈に、不思議な説得力が授けられているのである。日時の関連についてはこじつけじみた要素があることに変わりない。しかしながら、偶然としてはかなり興味深い現象であることも確かだろう。長い間論拠の不足によって劣勢を強いられていた「L is real 2401」説支持者たちは、思いがけない追い風を得たことにより、今喜びに湧いているのだ。

ただし、ルイージが部分的に存在していたとされるデータは、4chanユーザーが投稿した怪しげなプロトタイプ版のデータ。製品版に「ルイージが存在した」ことが確認されたわけでもない、公式に発表されたわけでもないことを留意すべきだろう。一方で、星の石像のメッセージをめぐる議論は、「L is real 2401」説の再加熱により、再び盛り上がりを見せている。公式が「いたずらで入れたメッセージ」とコメントし、ゲーム内にルイージが存在していたことが濃厚になりながらも、まだなお続く星の石像をめぐる議論。彼らのメッセージをめぐる議論は、正しさを問うものではなく、自分たちの意地をかけた戦いであるのかもしれない。