『スーパーマリオ64』内に存在した隠しメッセージ「ルイージは存在する」の謎が、20年越しに解明される


ゲームが発売され今年で20周年となる『スーパーマリオ64』。先日には新たに取得できないコインが発見されるなど、本作はいまだに解き明かされていない謎であふれている。そういった謎のひとつに、「隠しメッセージ」が存在していた。

この隠しメッセージとは、星の像の土台に彫られているメッセージだ。この像は『スーパーマリオ64』の冒険の舞台となる「ピーチ城」の地下の広場に存在している。本作をプレイしたユーザーならば、「テレサのホラーハウス」に行くときに通る「テレサたちが集う広場」と表現すればピンとくるかもしれない。この星の像は水に囲まれており、プレイヤーであるマリオをしつこく背後からつけ狙うテレサが多数うろついているので、つい足早に過ぎ去ってしまいがちだ。しかし、実はこの星の像の土台にはうっすらとメッセージが書き記されている。このメッセージが長年海外の『スーパーマリオ64』の解明できない謎として扱われていた。

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こちらがそのメッセージ文である。テクスチャの解像度の関係でかなり読みづらいのがわかるだろう。ちなみに確認してみたところ、このテクスチャは北米版と日本版で同じテクスチャになっており、さらにはオリジナル作品であるNINTENDO 64版とニンテンドーDSでリリースされた『スーパーマリオ64DS』でも同じものが確認できた。今回の焦点は、ここには書かれている内容だ。この問題についてはふたつの説が有力となっていた。

 

「Eternal Star」説と「L is real 2401」説

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この問題が議論され始めた当初は「Eternal Star」説が有力であったという。一番左の文字を「E」であると考え、それに続く文字とつなげて形容詞「Eternal」であるとし、右半分の文字を「Star」と解釈する説。『スーパーマリオ64』においてスターはゲームを進める上で非常に重要なアイテムであり、そうしたスターを奉り“それっぽい名前”としてEternal Starと名前を付けたという推論だ。端的に言えばこの星の像とメッセージは単なるデコレーションであり、何の意味もないというのがこの説の趣旨となる。

一方で、根強く支持されているのが「L is real 2401」説。左側の大文字らしきアルファベットを「L」と解釈し、その右にある文字を「is」と考え、続く文字を「real 2401」とする説だ。「Eternal Star」に比べると一見意味がわかりづらいが、このLはLuigiのLと考えれば合点がいくだろう。「L is real」、つまり日本語に訳せば「ルイージは存在する」になるというわけだ。2401は『スーパーマリオ64』の各ステージに存在するコインの総数とされている(実際に2401枚であるかは不明)。つまり、ステージ内のすべてのコインを集めきればルイージがプレイ可能になるという開発者からのメッセージであるというのがこちらの説の趣旨だ。『スーパーマリオ64』の開発初期にはゲーム内にルイージが搭載される予定だったという噂もこの説を後押ししているのだろう。

この星像の土台に存在するテクスチャが、単なるグラフィックの構築上たまたま生まれたものではないかとする説もあるが、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』内に存在するダンジョン「ドドンゴの洞窟」の石碑にも似たテクスチャが存在しており、偶然とは考えにくい。

 

第3の説「L is real in Paper M」

さらに事態を複雑にしているのは、ふたつめの説から派生した第3の説が存在していることだ。この説はL(uigi)is realという考え方はそのままに、これまでのふたつの説では絡んでこなかった2行目の文を「in Paper M」と解釈する。Paper MとはPaper Mario(日本名:マリオストーリー)の略称であり、つまりは「ルイージはペーパーマリオに登場する」というメッセージであるという説だ。「2401」の数字を並び替えると「01/2/4」、マリオストーリーは北米では2001年の2月5日に発売されており、発売日を示唆していたという見方もできる。ただ1996年に発売された『スーパーマリオ64』に、5年後のゲームの発売日を記載しているというのは正直かなり無茶苦茶な解釈であることは否めない。しかし、この第3の説は、すべての疑問に対して回答できているという点で有力とされてきた。

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ほかにも『マリオストーリー』と同じく2001年に発売された、ルイージが初の主役をつとめる『ルイージマンション』についての記述ではないかという声もあるが、この説を支える根拠はまだ発見されていない。また、のちに開発中止になったと噂されているNINTENDO 64周辺機器64DD向け『スーパーマリオ64 2』にルイージが登場することを示唆しているという説もあるが、こちらも有力な根拠が見つかっていない。

この議論の結論が出ないまま時間は過ぎ去っていった。そして時代が進み、『スーパーマリオ64』のROM解析が始まると、ゲーム内にルイージのデータが存在していないことが判明。またニンテンドーDSで発売された実質的なリメイク版である『スーパーマリオ64DS』にはルイージが操作キャラクターとして追加され、『スーパーマリオ64』と「ルイージ」にまつわる物語は答えが出たようにも見えた。しかしながら、結局のところこの星の像にはどのようなメッセージが書かれているかは解明されていない。『スーパーマリオ64』を愛するユーザー達は依然としてこのテクスチャが「Eternal Star」なのか「L is real」なのかという激論が続けてられていた。

 

答えは一通の手紙から

しかし意外な形でこの物語は結末を迎える。今年の12月4日にredditユーザー「b0nd18t」氏がある手紙の画像をアップロードした。その手紙とは、ニンテンドー・オブ・アメリカから届けられたものだった。

あなたの手紙には『スーパーマリオ64』にある「L is real」についての質問がありました。たくさんの人々がルイージの登場のヒントだと思っているようですが、実際はプログラマーたちのジョークです。彼らは、わざとユーザーに意味を解読させようとして入れたのです。なんの意味もありません。

Image Credit: reddit
Image Credit: reddit

ニンテンドー・オブ・アメリカのゲームプレイカウンセラーははっきりと「L is real」=『スーパーマリオ64』におけるルイージ登場説を否定し、プログラマーがジョークで入れたものであると述べている。この手紙は1998年に書かれたもので、b0nd18t氏の妻がたまたま見つけたのだという。星の像の謎は「プログラマーのジョークであり、『スーパーマリオ64』内のルイージ登場のヒントではなく、何か意味がある文ではない」という結論が答えで、すべての説は否定されたことなる。こうして議論は収束するかに見えた。

しかし黙っていないのが「L is real in Paper M」説の支持者だ。ニンテンドー・オブ・アメリカの回答が1998年であることを考えると、2001年発売の『マリオストーリー』について黙秘せざるをえないというのが彼らの主張だ。加えて、そもそもニンテンドー・オブ・アメリカが真実を回答したか疑わしいという意見が飛びかうなど現在もreddit内では激しい議論が繰り広げられている。

ニンテンドー・オブ・アメリカからのオフィシャルな回答が見つかったにもかかわらず、最終的には平行線へと戻ってしまった「L is real」問題。議論の堂々巡りを解決すべくb0nd18t氏は画像をアップロードしたにもかかわらず、また最終的に堂々巡りに戻ってしまった。もはや何を追い求めて話し合っているのかすらわからなくなりつつある「L is real」論争。ファンの『スーパーマリオ64』への情熱が冷めるまで、この出口なき議論は続けられるだろう。