『Fate/EXTRA Record』の内容が紹介された「Fate/EXTRAシリーズ10周年記念生特番」まとめ。 主人公はボイスを採用し、バトルシステムはカード風


TYPE-MOON studio BBは7月22日20時、「Fate/EXTRAシリーズ10周年記念生特番」をライブ配信した。放送では、動く遠坂凛の2Dアバターを借りた植田佳奈さんがMCを担当し、『Fate/EXTRA Record』で企画・監督を務める新納一哉氏が同作の解説を行った。本稿ではその内容をかいつまんでお届けしよう。

『Fate/EXTRA Record』は、2010年7月22日にPSP向けとしてリリースされた『Fate/EXTRA』の現行機向けリメイクである。オリジナルの『Fate/EXTRA』は、「Fate」シリーズのサーヴァントや聖杯といった要素を継承しつつ、マナが枯渇した世界で描かれる対戦型ダンジョンRPG。月に存在するスーパーコンピューターにして聖杯「ムーンセル・オートマトン」内の仮想空間SE.RA.PHを舞台に、ウィザードたちによる聖杯戦争が繰り広げられる。本日公開された『Fate/EXTRA Record』のファストトレイラーでは、女主人公やかっこよくなった間桐シンジ、遠坂凛、赤セイバー、固有結界の詠唱を行うアーチャーなどが登場。リメイク版『Fate/EXTRA Record』で描かれる、綺麗な3Dグラフィックでの月の聖杯戦争が確認できた。

本日の放送では、バトルシステムが明らかになった。本作の戦闘は、オリジナルの『Fate/EXTRA』とは異なる、デッキの中からコマンドが流れてきて、その中からどれで戦うのか選んで戦うシステム。コマンドには、攻撃や防御、コストの概念があり、いかに敵からのダメージを抑えつつ、敵にダメージを与えていくか考えながら戦う。

また戦闘終了後には新しいコマンドや、マスター用のコマンドキャストが入手できる。敵の行動もアイコンで表示されており、オリジナルの『Fate/EXTRA』も敵の行動を見ながら戦うゲームだったので、そことマッチしていることも採用の理由と語られた。「最近インディーで多いデッキ系のバトルシステム」であるともいい、明言こそされなかったが『Slay the Spire』ライクなデッキ構築型カードRPGに近いシステムなのだろう。アクションゲームにするプランもあったそうだが、脳内でプレイしたときに、自分でサーヴァントを動かしてしまうとマスターではなくなってしまうことや、コマンドバトルなら誰でも遊べるという点で、コマンドバトルになったという。

また、ダンジョン探索中には、アーチャーがマスターを守るように立ち回るなど、サーヴァントがマスターよりも先行してくれるようにこだわっているほか、遠距離から宝箱を開けられるといったハッカーらしい行動も取れるようになるそうだ。対応プラットフォームは明らかにならなかったものの、Steam版へ話が及ぶと「幅広いお客さんに向けて遊んでもらおうと思っているので、その辺でご理解いただけると嬉しいです」と語られた。

主人公のボイスについても言及された。放送内で、新納一哉氏は「奈須さんからもしゃべらせようぜと言われている」といい、男女両方のボイスを収録するとコメント。言葉遣いなどは変えないようにし、音声無し派へ向けて音声オフモードも予定されているそうだ。モブマスターたちも、フルボイスにしようと思ってはいるという。

ゴーグルをつけた遠坂凛や、任務や役割に近づけたデザインへ変更されたユリウスを含め、一部キャラクターデザインも公開。メインキャラクターのデザインはかえていないそうだが、アニメ調にワダアルコ氏がデザインを組み直しており、変わっているキャラクターもいるという。モンスターは、『Fate/EXTRA』に出てきたモンスターをモチーフとした新しいデザインのものと、新規のモンスターが登場するそうだ。

グラフィック関連では、月の聖杯戦争の舞台である学校についても語られている。原作でも、冬木市にある穂群原学園をフィーチャーした学校が舞台となっていたが、本作ではより遠景なども穂群原学園を再現しており、「この学校を使って『Fate/stay night』が作りたい」という話が出るぐらいのものを目指し、原作の趣のあるようなシーンを再現しているそうだ。夕日を背に永久に走り高跳びをしている生徒がいる学校とは違うものの、何かが起こりそうな夕方の学校や、雰囲気のある夜の学校も映されていた。

また、学園内にいる生徒とは、全員キャラクターにできるかどうかはわからないものの、大体話せるようになる予定だという。システム関連では、ノベルパートももちろんあるようで、「奈須さん地の文がほんといいんでね、地の文は大事にしたいと思っています」というコメントも交えつつ、地の文のノベルパートも公開されている。

現在の開発状況は、マップの移動やキャラクターとの会話いったゲームとしての一通りのシステムが組み込める状態で、予選と1回戦がだいたい入り終わった頃。TYPE-MOON studio BBが設立されたのは2019年8月だが、それからオフィスなどを借りて、本格開発が始まったのは今年の始まりからであり、半年で1回戦が作れる状況になったそうだ。

開発にまつわる事項としては、本作の3+1のコンセプトも公開された。本作のコンセプトは、”『Fate/EXTRA』をもう一度”、”上質な仕上げ”、”はじめましてFate、はじめましてEXTRAの方にも”、”TYPE-MOON studioBBを知ってもらう”の4点。上質な仕上げは、ちゃんと作りますという意味が込められている。新納一哉氏は、リメイクの話が始まった際に奈須きのこ氏と話し、「ライトに多くの人に届けるスマホのバージョンと、据え置きのコンシューマーでじっくり作るもののどちらがよいですか」と訪ねたところ、「じっくり作ろうや」という話をされたことで心を決め、今回は本当にクオリティを重視した、良い仕上げのエクストラを作ろうと思っているそうだ。

同氏は、オリジナルの『Fate/EXTRA』を振り返り、予算と期間が限られており、当時のスタッフはすごく頑張ってくれたが、それでも足りない部分があったため、その思いを受け継いでちゃんとしたゲームに仕上げたいとも語った。また、同氏の壮大な目標も明らかになった。新納一哉氏がスクウェア・エニックスを辞めたのは『Fate/EXTRA』のリメイクと、もう一つの新作が目的。新作を作るためにはTYPE-MOON studioBBがちゃんと作品を作れることを、『Fate/EXTRA record』を通じて本家TYPE-MOONやプレイヤーにも知ってもらい、同スタジオの作品を楽しみにしてもらう必要がある。そうでなければ同氏にとって、7年後の新作へステップアップできないとも語られた。4つ目のコンセプトには、そうした7年後へ向けた決意表明が含まれているという。

そのほか番組内では、TYPE-MOONの奈須きのこ氏と武内崇によるメッセージや、複数のアーチャーや蒔寺楓が登場するころぶタイガ~授業開始と画面上部に表示された一幕も公開された。番組終盤には、スマホ版『Fate/EXTELLA』『Fate/EXTELLA LINL』の配信、公式たまごっち「えくすてらっち」を含めた「Fate/EXTELLA Celebration BOX」、ブラウザゲーム『DIGDUG BB』の公開、ワダアルコ氏による画集も発表。最後には、全く違ったテイストのBGMを採用し、日本語の固有結界詠唱が収録されたアナザー版トレイラーが公開され、放送が終了した。『Fate/EXTRA Record』は、現行機向けに開発中だ。