Steam Game Festivalの「体験版配信」は宣伝効果てきめんだった。わずか1週間でウィッシュリストが35~50%増加

900本以上のタイトルが楽しめるちょっとしたお祭りとなっていたSteam Game Festival。一方で、体験版の出展にどれほど効果があるのか気になる方もいるのではないだろうか。その数字をざっくりと報告したい。

Valveは6月16日から22日にかけて、「Steam Game Festival, Summer Edition」を開催した。Steam内に特設ページが用意され、900以上のゲームの体験版がプレイできるイベントであった。そのほか、開発者のライブストリーミングによる解説や交流などが楽しめる。ユーザーから見れば、900本以上のタイトルが楽しめるちょっとしたお祭りとなっていたSteam Game Festival。一方で、900本もタイトルがあると、すべて遊びきるのは困難。プレイしてもらえるのか、訴求効果があるのか、気になっていた開発者も多いのではないだろうか。結論から言えば、この試みは少なくとも一部開発者にとって宣伝効果てきめんだったようだ。

弊社アクティブゲーミングメディアは、メディア事業であるAUTOMATONのほかにも、パブリッシング事業としてPLAYISMを展開している。PLAYISMもまた「Steam Game Festival」に参加しており、『OUTRIDER MAKO ~露払いマコの見習帖~』および『カニノケンカ -Fight Crab-』の体験版をリリースしていた(現在は配布終了)。この2作品のウィッシュリストは1週間ほどで大きく伸びている。PLAYISMと各開発者から了承を得たので、Valveに怒られないように具体的な数字を出すのは避けつつ、ざっくりその効果を報告したい。


ウィッシュリストとは、配信開始時やセール時に通知を受け取ることができる機能。いわゆる「ほしいものリスト」とも言いかえられるだろう。体験版展開において、ユーザーの反響を数字化して確認できる要素のひとつである。今回はこれをベースに、販促効果について報告する。それでは実際のところ、ウィッシュリストはイベント前後でどれほど伸びたのだろうか。『OUTRIDER MAKO ~露払いマコの見習帖~』では、2019年6月から1年以上かけて積み上げてきた1万以上のウィッシュリスト数が、6月16日のイベント期間に入ってから35%ほど増加している。『カニノケンカ -Fight Crab-』についても、3月にSteamストアページが公開されてから1万以上ウィッシュリスト登録されてきたが、今回のイベントで50%ほど増加している。

ウィッシュリストは必ずしも購入につながるわけではなく、ウィッシュリスト登録数の10%~20%程度の購入を見込んでいたが、実際の購入数は1%ほどだったという事例も存在する(関連記事)。ウィッシュリストが売上とどこまで結びつくかは不透明であるが、ひとまず今回のイベントがウィッシュリスト増加に貢献したことは間違いなさそうだ。面白いのは、両作ともに体験版のDL数とイベント期間中のウィッシュリスト登録数がほぼ同じであったこと。『カニノケンカ -Fight Crab-』こそ体験版DL数がやや上回ったが、『OUTRIDER MAKO ~露払いマコの見習帖~』は、ほぼ同じ。

https://twitter.com/asamado_tw/status/1275283674594856962

ウィッシュリストサンプルがふたつのみなので、ゲーム自体の品質やテーマ性によって数字が変わる可能性も否めない。『OUTRIDER MAKO ~露払いマコの見習帖~』と『カニノケンカ -Fight Crab-』はイベントページのウィッシュリスト上位リストにも入っていたことから、体験版が配信された900タイトルの中でも成功した部類の作品と思われる。しかしながら、2作品の体験版DL数とウィッシュリスト数が同程度であったというデータは、Steam市場を分析する上で興味深い資料になりそうだ。

ちなみに『OUTRIDER MAKO ~露払いマコの見習帖~』『カニノケンカ -Fight Crab-』は両作ともに、比較的露出の多いインディーゲームである。『カニノケンカ -Fight Crab-』はIGN Expoにて大々的に取り上げられているし、SNSでも見かけることが多い作品。また『OUTRIDER MAKO ~露払いマコの見習帖~』『カニノケンカ -Fight Crab-』ともに弊誌AUTOMATONでも取り上げている。もともと露出ある作品なので、Steam Game Festivalにて他の個人開発者タイトルよりも注目されやすかったとも解釈できる。同じような効果が出るとは限らないので、そうした点は留意してほしい。

とはいえ、開発者としてデモ版を作る手間が惜しくなければ、次回のSteam Game Festivalに参加してみることに一定の価値はあるだろう。対象作品が900以上であったとしても、ユーザーに見つけてもらい、実際に手にとってもらいやすくなる貴重な機会であるのは確かなのだから。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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