Steamの「ウィッシュリスト効果」を期待していたゲーム開発者、発売3日の売上が357本で落ち込む

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Steamにおける任意のタイトルについて、その配信開始時やセール時に通知を受け取ることができるウィッシュリスト機能。ウィッシュリスト登録は、ユーザーの立場からするとゲームの動向を追いやすく、開発者の立場から見ると、ユーザーに自らのタイトルを直接宣伝できる重要な機能である。一部の開発者の間では、ウィッシュリスト登録者数からおおよその売上本数を事前に推計できるという見方もあり、ウィッシュリストと売上には多かれ少なかれ関連性が存在するようだ。ただ、そうした“方程式”には悪い意味で当てはまらないケースも存在し、当の開発者が困惑の声を上げている。

アクションゲーム『WarriOrb』をリリースしたばかりのEl4th氏は5月1日、ウィッシュリスト登録を多数集め、Steamにて「人気の近日中リリース」にも掲載されたにも関わらず、売上が振るわないとRedditの開発者コミュニティに投稿した。配信開始時点での同作のウィッシュリスト登録者数は1万6000以上あったそうだ。

El4th氏は、ベテランインディー開発者のJake Birkett氏が2018年に公表したデータをもとに、ウィッシュリスト登録者全体のうち、控えめに見て20%の3200人、最低でも10%の1600人が初週に本作を購入すると想定していたという。またBirkett氏は、ウィッシュリスト登録者からの売上は全体の約20%というデータも示しており、『WarriOrb』の初週売上は8000〜1万6000本程度が期待されていた。

しかし、同作の発売から3日間の売上はわずか357本で、そのうちウィッシュリスト登録者の購入は178本だったという。El4th氏は、ウィッシュリスト登録者の少なくとも10%は購入すると見込んでいたが、それすら大きく下回る1.1%という結果だった。このままの売れ行きが続いたとすると、1週間が経った時点ではさらに下回る0.05%になる計算とのこと。Birkett氏は、複数の開発者から売上データの提供を受けて平均値を割り出しており、もとよりケースによって数値に幅はあるとしていた。ただ『WarriOrb』の売上は、そこで「そうそう見ることはない」と言及された最低値をも下回る結果となってしまった。

こうした厳しい結果を受けて、El4th氏は原因を考察している。まず挙げたのは、『WarriOrb』の価格だ。同作は1899円であり、現在はローンチ割引にて1576円で販売中。El4th氏自身は、同作のボリュームなどから妥当な値付けであると考えているそうだが、同作をウィッシュリストに登録した人たちのほとんどは、もっと低い価格で販売されると考えていたのかもしれないと述べる。セール待ちのためにウィッシュリスト登録した人ばかりだった可能性もあるとも。

ふたつ目は、ウィッシュリスト登録者の多くは有料のゲームには興味がなかったのかもしれないという点。同作に関連しては『WarriOrb: Prologue』というプロローグ版が無料配信されており、ウィッシュリスト登録者の33%はそのプレイヤーだったという。ウィッシュリスト登録を促す流れとしては効果的だったように見えるが、Steamの無料プレイゲームページのトップに掲載されていたことから、登録者の多くが本編も無料ゲームとして配信されるものと期待していたのかもしれない、という考えだ。

El4th氏はさらに、『WarriOrb』のゲームプレイメカニクスが一見して理解しにくい点を気にしていたそうで、ウィッシュリスト登録者の多くが購入をためらう結果になったのではとも推測。また、多くのインディーゲームが木曜か金曜にリリースされていることから、競争の少ない火曜日にローンチしたが、それが何らかの理由で裏目に出たのだろうかと困惑交じりに述べている。

El4th氏のRedditへの投稿には、数多くのコメントが寄せられている。『WarriOrb』はあまり魅力的には見えず価格が高いという率直な意見もあれば、みんなセールを待っているのだろうというコメントも。無料配信したプロローグ版で十分楽しめるため、本編の購入にまで至らなかったのではという意見もある。アクションゲームはただでさえ競争が激しく、さらに同作のように2.5Dグラフィックを採用すると、求められるビジュアルクオリティが跳ね上がると指摘する声もあった。

前出のJake Birkett氏も反応し、ウィッシュリストの“質(quality)”がひとつの理由かもしれないと指摘する。分かりやすい例で言うと、そのスタジオのファンによる登録と、たまたま見かけ何となく登録されたものでは、購入に結びつく確率が違うということ。ウィッシュリスト登録を呼びかけるメーカーは多いが、結果厚意によって登録されるケースも多いそうで、そうしたウィッシュリスト登録は質が高いとは言えないとのこと。また、ウィッシュリスト登録者数と売上の関係性について、同氏の作品では依然としてセオリーに近い結果を得ているものの、Steamを取り巻く環境の変化などによって、想定どおりの結果を得ることは難しくなっているようだとも述べている。

ウィッシュリスト登録をより多く集めれば、より多くのユーザーにリーチできることは間違いない。その重要性は、パブリッシャーのNo More Robotsの代表Mike Rose氏も以前述べていた(関連記事)。ただ、同氏は作品の魅力を伝えたことで多くの登録を得たとしており、またマーケティングなどにも労力を費やした上で成功を得ている。Birkett氏が言う、質の高いウィッシュリスト登録を獲得できたということなのだろう。ちなみに、ここで提示された作品『Yes, Your Grace』の予想売上は、Birkett氏が提唱したセオリーにほぼ当てはまっていた。

Birkett氏も、正しいと考える行動を重ねた上で想定どおりの結果を収めることができたとしており、単純にウィッシュリスト登録を集めれば期待する売上に届くというわけではないようだ。先述したように、同氏が提唱した理論はもともと結果に幅があるものではあったが、『WarriOrb』の一件からは、Steamで成功を収めることの難しさと共に、ウィッシュリスト登録者数は絶対的な指標にはなり得ないということが浮き彫りとなった。

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