戦時下生活サバイバル『This War of Mine』がポーランド教育省の学生向け推薦図書リスト入り。国家レベルでゲームを教育システムに組み込む世界初の試み
ポーランドのデベロッパー11 bit studiosは6月18日、同スタジオより2014年にリリースされた『This War of Mine』が、ポーランドの国民教育省による学生向けの推薦図書リストに加わることを発表した。同作は、次年度(2020年9月〜2021年6月)の推薦図書リストに加わり、ポーランドのすべての高校にて無料で利用可能となる。ただし、ゲームのレーティングが18歳以上であることから、対象は18歳以上の学生となるようだ。
『This War of Mine』は、1990年代のサラエヴォ包囲をテーマとしたサバイバルシミュレーション。Independent Games FestivalやSXSW Festivalなどで数々のアワードで賞を獲得しており、高評価を得ている作品だ。このゲームでは、訓練を経た兵士ではなく、一般の市民として戦時下を生き抜くことが目的となる。
生き抜くためには食料や安全な場所の確保が必要となるが、物資は限られている。そのため、時には盗みを働いたり、善良な市民と争いに発展することもある。しかし、罪悪感を感じる行為を続ければ、操作キャラクターの精神状態が悪くなり、かえって死へ近づいてしまう。主人公たちの体調や精神状態が悪くなりすぎないようバランスを取りながら、シビアな取捨選択をしていかなければならないのだ。
過酷な状況の中、生存のために常に選択を迫られる『This War of Mine』は、人文科学、社会学、倫理、哲学、歴史といった分野を学ぶ学生向けとして、2020年9月開始の年度のポーランドの国民教育省の公式推薦図書リストに加わる。このゲームをプレイすることが前述の分野を学ぶ上で有益であるとして、国家レベルで推奨されるということだ。
ゲームが学生向けの推薦図書として一国の教育システムに組み込まれるのは世界初の試みだという。ポーランドのMateusz Morawiecki首相は、「若者たちは特定の状況を想像するためにゲームを使っていて、それは読書体験と比べて遜色がありません」と述べ、「ゲームを教育システムに組み込むことによって、想像力をより豊かにし、文化に新しい何かをもたらすことでしょう」と付け加えた。
11 bit studiosのCEO Grzegorz Miechowski氏は、ゲームと読書の違う点としてゲームがインタラクティブであること挙げ、若い世代を惹きつける直感的な体験が含まれると語った。続けて、「もちろん、ゲームはすでに教育の現場で使われており、数学、化学、認知能力の発展などの分野で役立っています。しかし、読み物として国の教育システムに組み込まれるということは聞いたことがありません。これは、世界中のゲームクリエイターにとって飛躍的進歩の瞬間となるかもしれません」と述べている。
『This War of Mine』は日本語に対応しており、Steam/Epic Gamesストア/iOS/Androidで配信中だ。