『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』の経済は巨大だ。ソフトの販売本数が全世界で1300万本突破、という話はいったん置いておこう。カブやたぬきちの話というわけでもなく、ここでの本題は『あつ森』の周辺に構築されたユーザー間トレード市場の話である。本作ではドードーエアラインの登場により、島コードを介して離れたプレイヤーとの交流がこれまで以上にしやすくなった。それはすなわち知らないプレイヤーと出会い、アイテムのやりとりをすることも可能にしている。インターネット上ではこの機能を使い、自分が欲しい/いらないアイテムを提示して売買する取引が頻繁に行われている。
そして海外では「Nookazon」や「Nook.Market」といったウェブサイトが立ち上がり、売りたいプレイヤーと買いたいプレイヤー同士のマッチングをし行っている。どうしても手に入れたいアイテムがあるなら、こうした仕組みを使って獲得するのもひとつの選択肢ではあるだろう。しかしトレードそのものに関心のないプレイヤーにとってもこれらのサイトは興味深いデータとなるかもしれない。取引の人気ランキングを辿ることで、世界中のユーザー間における人気アイテムがわかるからだ。海外メディアのPolygonなどが伝えている。
まずは業界最大手、Nookazonを覗いてみよう。ランキング最上位に君臨するのは不動の1位「マイルりょこうけん」……だが、これはおおむねノーカンと考えてもいいだろう。旅行券は『あつ森』トレード界隈においてはもはや貨幣と同等の位置を占めている。たとえばあるところで2万ベルにて売りに出されているアイテムが、別のユーザーからはマイルりょこうけん3枚と交換されていることも多い。
もはや通貨レベルまで取引が浸透しているチケットに次いで人気が高いのはキッチン小物の一種「カッティングボード」だ。こちらはナチュラル感ある佇まいがそれだけでも可愛らしい一品だが、需要の理由はそれだけではない。ファン界隈で人気を高めている「アイアンウッドキッチン」のDIYに必要となる材料でもあるのだ。置くだけでぐっと部屋の生活感を高めつつ、モダンな印象も与えてくれるアイアンウッドシリーズは根強い支持を誇る。合わせてハッピーホームアカデミーのシリーズ家具ボーナスを狙ってか、「アイアンウッドチェスト」も3位にランクイン。また可愛らしい見た目だけでなくレシピ・素材とも入手難度の高い「みかづきチェア」が顔を並べているのもうなずける。
ここまで2〜4位は手堅い人気のオシャレ家具が並んだのが、5位に滑りこんだのは意外な刺客。「サカナのまきエサ」である。3月のイトウ(出ない)地獄で味わった諸氏もいようが、釣りをやり込むためには欠かせないアイテムだ。しかしその生産過程はなかなかの苦行。浜辺でランダムに出現するアサリ1匹を材料に、クラフトできるまきエサはたったの1つ。数時間かけて100匹のアサリを確保しても、その後さらにDIYを100回行わなくてはならないという拷問が待っている。それだけ膨大な労力を費やすのなら、時間をベルで買った方がよい。まきエサ100個が200万ベルで販売されている背景には、そうした釣り人たちの憔悴ぶりが透けて見えるようだ。
ここまで業界最大手のトレードサイトを覗いてきたが、所が変われば様子もずいぶん異なってくる。ここ数か月で急速にシェアを伸ばしているプラットフォームNook.Marketのランキングも見てみよう。トップ3を追っただけでも「キュートなベッド」「ソフトクリームランプ」「ピンボールだい」と、まったく異なる顔ぶれが並んでいる。また先述したハッピーホームアカデミー効果か、シリーズもの家具はセットで上位にランクインすることが多いようだ。人気インテリアのひとつ「キュートシリーズ」は、過去作にも見られた「ラブリーシリーズ」の女児感と「ロイヤルシリーズ」の気品を兼ね備えたプリンセスのようなラインナップだ。天蓋付きの寝台やハート型クッションを添えたソファなど可愛らしくもリアルさのあるバランスが、トレードのユーザーである高い年齢層にも受けているのだろう。
憧れのインテリアから入手困難なアイテムまでベル(または旅行券)さえあれば手に入れられるトレードサイト。オンライン通信が普及した今、こうした手段に頼りつつ自分のペースで遊ぶのもひとつのプレイスタイルだろう。ただし注意すべきなのは、任天堂の規約では明確にリアルマネートレードが禁じられているという点だ(J-CAST ニュース)。実際の通貨を使ってアイテムを売買することは違反となるため決してしないこと。また相手の素性のわからない状態で取引する際は、くれぐれも慎重で配慮のあるやりとりを心がけよう。